H3ロケットの打ち上げ成功と今後の展望
H3ロケット4号機の打ち上げ成功
2024年11月4日午後3時48分、鹿児島県の種子島宇宙センターからH3ロケット4号機が打ち上げられ、予定の軌道に防衛通信衛星「きらめき3号」を投入することに成功しました。これは、2023年3月の1号機打ち上げ失敗後、2号機、3号機に続く3機連続の成功となります。 H3ロケットは、2段式の使い捨て液体燃料ロケットで、50号機で引退するH2Aロケットの後継機として、JAXAと三菱重工業が共同開発しました。今回、静止トランスファー軌道(GTO)への衛星投入に初めて成功し、静止軌道上を周回し、地上同一地点の観測を可能とする衛星を打ち上げる能力を実証しました。搭載された「きらめき3号」は、気象の影響を受けにくいXバンドという周波数帯を利用し、自衛隊の部隊間における横断的な通信を可能にする防衛通信衛星です。既に運用中の1号機、2号機と合わせて3機体制が構築され、2024年度内の運用開始が見込まれています。JAXAと三菱重工業は、今回の連続成功をH3ロケットの安定した運用段階への到達と評価しており、今後の更なる成功を目指して開発を継続していくとしています。打ち上げは当初10月20日を予定していましたが、天候などの影響で延期が繰り返され、11月4日に実施されました。
H3ロケット3号機の打ち上げ成功と「だいち4号」
2024年7月1日午後0時6分すぎ、鹿児島県の種子島宇宙センターからH3ロケット3号機が打ち上げられました。 約17分後には、地球観測衛星「だいち4号」を予定の軌道に投入し、打ち上げは成功しました。「だいち4号」は、JAXAと三菱電機が開発した地球観測衛星で、夜間や悪天候でも高解像度の観測が可能です。災害時の被害状況把握や火山活動の監視などに役立つと期待されています。「だいち4号」の観測幅は、従来の「だいち2号」と比較して最大4倍の200キロに拡大され、観測頻度も5倍に向上しています。これは、H3ロケットにとって、大型衛星の軌道投入に初めて成功したことを意味し、今後の安定した運用に向けて重要な一歩となりました。JAXAの山川宏理事長は、今回の成功を日本の宇宙開発利用の自律性維持、国際競争力確保に向けた大きなステップと評価しています。
H3ロケットの開発経緯と今後の計画
H3ロケットは、H2Aロケットの後継機として、コスト削減と性能向上を両立させることを目指して開発されました。2014年から開発が開始され、2023年3月には1号機の打ち上げに失敗しましたが、原因究明と対策を実施した結果、2号機以降は成功を収めています。H3ロケットは、年間6機の打ち上げを目標としており、政府の宇宙基本計画では、2032年度までに少なくとも22回の打ち上げが計画されています。 さらに、H3ロケットは、メインエンジンのみを用いた打ち上げも可能な設計となっており、コスト削減に貢献する要素となっています。将来的には、打ち上げ業務をJAXAから三菱重工業に移管し、市場への参入も目指しています。月や火星の探査計画にも活用される予定で、国際的な宇宙探査プロジェクト「アルテミス計画」への日本の参加において重要な役割を果たすと期待されています。
H3ロケットと関連企業の取り組み
GSユアサテクノロジーは、H3ロケット3号機および「だいち4号」にリチウムイオン電池と熱電池を供給しました。同社は1970年代から宇宙用電池の開発・供給を行っており、日本の宇宙開発に長年貢献しています。三菱重工業は、H3ロケットの開発・製造の中核を担っており、ユーテルサット社とは2027年以降、H3ロケットを用いた複数の衛星打ち上げに関して合意しています。これは、H3ロケットの国際的な利用拡大にも繋がる重要な合意です。
H3ロケット5号機の打ち上げ
2025年2月2日、H3ロケット5号機が打ち上げられ、準天頂衛星「みちびき6号」の軌道投入に成功しました。これは、H3ロケットの4機連続打ち上げ成功となり、信頼性向上に大きく貢献しました。「みちびき6号」は、日本のGPS衛星システムを構成する衛星の一つであり、高精度な測位サービスを提供します。