ヤマト運輸と日本郵便の協業における対立とネコポス再開
ネコポスの再開と日本郵便の反発
ヤマト運輸は2025年1月21日、東京以外の地域で終了していた小型薄型荷物配達サービス「ネコポス」を2月1日に再開すると発表しました。これは、ヤマト運輸と日本郵便が協業している「クロネコゆうパケット」への移行計画とは矛盾するものです。ヤマト運輸は、クロネコゆうパケットの取扱数量が多いフリマアプリ向けや東京エリアでの開始遅延を理由に、ネコポスの継続・再開を決定しました。ネコポスはクロネコゆうパケットよりも配達日数が短く、顧客ニーズに応えるためとしています。しかし、日本郵便は、この決定について「事前の相談や調整はなく、両者間の合意に明確に違反する」と批判し、ネコポスの再開撤回を求めています。両社の対立は、さらに深まることが予想されます。ネコポスとクロネコゆうパケットは競合するサービスと見なされており、ヤマト運輸の決定は、日本郵便の配送網への依存度を下げ、自社サービスの優位性を維持しようとする戦略である可能性も示唆しています。
日本郵便による損害賠償請求訴訟
日本郵便は2024年12月23日、ヤマト運輸に対し、120億円の損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所に提起しました。これは、2023年6月に締結された両社の協業に関する基本合意に基づく薄型荷物の配達委託について、ヤマト運輸が一方的に見直しを要求したことに対するものです。日本郵便は、ヤマト運輸から2024年11月に2025年1月~2026年3月の薄型荷物の委託数を「ゼロにしたい」という要望を受け、法的義務と賠償責任を負わないと主張されたとしています。損害賠償請求額120億円の内訳は、協業準備に支出した費用50億円と、委託で得られるはずだった逸失利益の一部として70億円です。日本郵便は、ヤマト運輸が合意内容に法的義務があると確認を求め、協業の行方は一段と不透明になっています。
両社の協業の経緯と現状
ヤマト運輸と日本郵便は、物流のひっ迫への対応として、2023年6月に薄型荷物などの配達業務をヤマト運輸から日本郵便に順次委託する協業を発表しました。ヤマト運輸のメール便と薄型荷物の「ネコポス」を日本郵便のサービスに切り替える計画でした。メール便は2024年2月に移行が完了しましたが、薄型荷物は2025年2月に「クロネコゆうパケット」への完全移行を予定していました。しかし、ヤマト運輸は協業の見直しを求め、日本郵便は2024年12月に損害賠償を求める訴訟を起こすなど、両社の対立が続いています。ヤマト運輸は、協業によって荷物の配達に遅れが出ていることを理由に、薄型荷物の配達を自社でも続ける方針を発表しており、日本郵便への委託も続けるとしています。 この協業は、物流2024年問題や環境問題への対応という社会的な大義を背景に合意に至ったものでしたが、その後の両社の対応は、当初の協調姿勢とは大きく異なるものとなっています。
協業見直しに関する両社の主張の相違
日本郵便は、ヤマト運輸による協業見直しの申し入れを「一方的」と主張しています。一方、ヤマト運輸側は、2024年10月に計画の見直しを申し入れ、翌11月に収益確保などを理由に2025年1月からの委託停止を提案したと主張しています。さらに、日本郵便が損害の補填を求めている点についても、2023年に締結した基本合意は暫定的なものであったとして、履行義務や賠償責任を否定しています。両社の主張には大きな食い違いがあり、今後の裁判で争点となることが予想されます。この食い違いは、基本合意の内容や解釈、そしてそれぞれの企業の経営状況といった複数の要因が複雑に絡み合っていることを示唆しています。 今後の裁判の行方によって、両社の関係のみならず、日本の物流業界全体の構造にも大きな影響を与える可能性があります。