知らないと年間100万円損する!?公的統計の使い方【完全ガイド】厚労省・自治体データ活用のプロが教える7つのステップ
「データ活用」と聞いて、尻込みしていませんか?
「これからはデータに基づいた意思決定が重要だ!」 「DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しよう!」
ビジネスシーンで、こんな言葉を毎日のように耳にするけれど、「正直、何から手をつけていいか分からない…」と感じている方は多いのではないでしょうか?
- 「公的統計って言葉は聞くけど、なんだか難しそう…」
- 「厚労省や自治体のデータなんて、どこで見られるの?」
- 「データを見つけても、どうやって自分の仕事に活かせばいいの?」
- 「専門家じゃないと、どうせ使いこなせないんでしょ?」
もし、あなたが一つでも当てはまるなら、この記事はあなたのためのものです。実は、公的統計は、専門家でなくても、誰でも無料で使える「宝の山」。そして、その使い方を知っているか知らないかで、あなたのビジネスや企画の説得力、そして成果は天と地ほどの差がついてしまうのです。
この記事を読み終える頃には、あなたは「公的統計の使い方」をマスターし、厚労省や自治体のデータをまるで自分の武器のように使いこなせるようになっているはずです。これまで感覚や経験則に頼っていた部分に、「信頼度MAXのデータ」という強力な裏付けを加えることで、ライバルに差をつけ、周囲を「なるほど!」と唸らせる企画や提案ができるようになるでしょう。
結論:公的統計の活用は、3つのサイトと「目的意識」がすべて!
いきなり結論からお伝えします。一見、複雑で広大に見える公的統計の世界ですが、初心者がまず押さえるべきポイントは驚くほどシンプルです。
- 最強の入り口は3つだけ!:まずは政府統計の総合窓口「e-Stat」、次に生活に密着したデータが豊富な「厚生労働省の統計表データベース」、そして地域密着ビジネスに欠かせない「各自治体のオープンデータサイト」。この3つを使いこなせれば、必要なデータのほとんどは見つかります。
- 一番大切なのは「何を知りたいか」:「何か面白いデータないかな?」と宝探しを始める前に、「自社の新サービスのターゲット層は、どの地域に最も多く住んでいるのか?」といった具体的な「問い(目的)」を立てることが、データ活用の成否を分ける最大の鍵です。
この2つのポイントさえ押さえれば、あなたも今日から「データ活用人材」の仲間入りです。それでは、具体的なステップを一つひとつ見ていきましょう!
なぜ今、公的統計の使い方が「最強のスキル」なのか?知らないと損する3つの理由
「まあ、便利そうなのはわかったけど、そこまで言うほど重要なの?」と思うかもしれません。重要です。もしあなたが、これまで公的統計を一度も使ったことがないとしたら、それは「無料で使える最強の武器」を一度も使わずに戦場に出ているようなもの。ここでは、その3つの理由を、具体的なエピソードを交えて解説します。
理由1:無料で使える「信頼度MAX」のデータソースだから
公的統計とは、国の行政機関や地方公共団体などが作成する統計のことです。 これらは、統計法という法律に基づいて、正確性や信頼性が厳しく担保されています。
考えてみてください。もし、あなたが「日本の20代女性の平均貯蓄額」を知りたいと思ったとき、民間の調査会社に依頼したらいくらかかるでしょうか? 数十万、いや数百万円の費用がかかることも珍しくありません。しかし、公的統計を使えば、それらの多くが無料で手に入ります。
【よくある失敗談:情報に乗り遅れたマーケターAさんの悲劇】
> マーケティング担当のAさんは、新しい化粧品の開発にあたり、ターゲット層の消費動向を調査することになりました。焦っていたAさんは、上司に「早くデータが欲しい」と急かされ、民間の調査会社に50万円を支払ってレポートを購入。そのデータをもとに企画を進め、無事に商品は発売されました。 > しかし数ヶ月後、同僚が「Aさんの企画、総務省の家計調査のデータとほぼ同じ結論ですね。これ、e-Statで無料で見られますよ」と一言。Aさんは、無料で手に入る情報に50万円も支払ってしまったことに愕然としました。さらに、その家計調査には、レポートには載っていなかった「地域別の化粧品への支出額」という、より重要なデータまで含まれていたのです。「あの時、公的統計の使い方を知っていれば…」Aさんは、情報格差がビジネスの成果に直結することを痛感したのでした。
このように、公的統計はコストパフォーマンスが最強なだけでなく、その網羅性においても民間調査を上回ることが多々あります。
理由2:ビジネスの「隠れたチャンス」を発見できるから
あなたのビジネスの顧客は、日本という国、あるいは特定の地域で生活する人々です。彼らがどんな暮らしをして、何に悩み、何にお金を使っているのか。そのリアルな姿を浮き彫りにしてくれるのが、公的統計、特に厚労省や自治体のデータなのです。
例えば、厚生労働省が実施している「国民生活基礎調査」は、保健、医療、福祉、年金、所得など、国民生活のあらゆる側面を網羅した調査です。 この中には、私たちが普段の生活で感じる「悩みやストレスの状況」といった主観的なデータまで含まれています。
【プロならこうする:介護用品メーカーB社のサクセスストーリー】
> 介護用品を製造・販売するB社は、次なる出店エリアを探していました。多くの企業が単純な「高齢者人口」でエリアを選定する中、B社のマーケティングチームは一歩踏み込みました。 > > 1. 厚労省の「国民生活基礎調査」で、「同居している主な介護者と要介護者等の構成割合」を確認。 これにより、「老老介護」の割合が高い地域をリストアップ。 > 2. 次に、各自治体のオープンデータから「高齢者向け住宅・施設の分布」を地図上にプロット。 > > この2つのデータを掛け合わせることで、「老老介護の割合は高いのに、周辺に頼れる施設が少ない」という、まさにB社の商品が最も必要とされる「隠れたニーズが眠るエリア」を発見。そのエリアに集中的なプロモーションを行った結果、売上を前年比150%に伸ばすことに成功したのです。
SNS上でも、こんな声が見られます。
> 「うちの市、ここ5年で30代の人口が急増してるじゃん!自治体の統計データ見て初めて知った。これは子供向けサービスのビジネスチャンスありそうだな…!」
このように、公的統計の使い方は、競合が見過ごしている未開拓の市場を発見するための「羅針盤」になるのです。
理由3:説得力が「10倍」増す魔法のツールだから
ビジネスは、突き詰めれば「人を動かす」ことの連続です。上司を説得して企画の承認を得る、クライアントに提案して契約を勝ち取る、部下に指示してチームを動かす。そのすべての場面で、あなたの言葉の「説得力」が問われます。
「なんとなく、最近は健康志向の人が増えている気がします」 「データによると、20代の約6割が健康診断の有所見者であり、特に生活習慣病に関する悩みが増加傾向にあります」
どちらの言葉が、相手の心を動かすでしょうか?答えは明白ですよね。公的統計という客観的な事実(ファクト)は、あなたの主張に絶対的な信頼性と重みを与えてくれます。
【人間味あふれるエピソード:若手企画マンC君の大逆転劇】
> 入社3年目のC君は、社内コンペに新しい健康食品の企画を提出しました。しかし、役員たちの反応は芳しくありません。「本当にそんな商品が売れるのか?」「君の思い込みじゃないのか?」と、厳しい意見が飛び交います。 > 絶体絶命のピンチで、C君は一枚のスライドを見せました。それは、厚労省の「国民健康・栄養調査」のデータを元に作成した、年代別の食生活の課題を示したグラフでした。「役員の皆様がおっしゃる通り、これは私の思い込みかもしれません。しかし、このデータが示す国民の課題は、紛れもない事実です。この課題を解決するのが、今回の企画です」 > C君の力強い言葉と、誰もが認めざるを得ない公的データという「証拠」。その瞬間、会議室の空気が変わりました。結果、C君の企画は見事採用され、会社のヒット商品となったのです。
公的統計の使い方は、単なる情報収集スキルではありません。それは、あなたの主張を裏付け、人を動かすための「コミュニケーションスキル」でもあるのです。
【初心者向け】押さえるべきはコレだけ!公的統計の3大ポータルサイト徹底解説
「公的統計の重要性はわかった!でも、具体的にどこを見ればいいの?」という声が聞こえてきそうです。ご安心ください。まずは、これから紹介する3つのサイトをブックマークするところから始めましょう。この3つを使い分けるだけで、あなたは公的統計の世界を自由に冒険できるようになります。
政府統計の総合窓口「e-Stat」- すべてはここから始まる
e-Stat(イースタット)は、日本の政府統計をすべて集約したポータルサイトです。 財務省、厚労省、経済産業省など、各省庁が公表するほぼ全ての統計データがここに集まっています。 まさに、公的統計の「玄関口」であり、まず最初に訪れるべき場所です。
e-Statでできること
- キーワード検索:Googleのように、知りたい情報のキーワードで検索できます。
- 分野別検索:「人口・世帯」「労働・賃金」など17の分野から探せます。
- 組織別検索:「厚生労働省」「総務省」など、調査を実施している機関から探せます。
- データベース機能:ただデータを眺めるだけでなく、人口ピラミッドなどのグラフをサイト上で作成したり、地図上にデータを表示したりすることも可能です。
主要な統計調査の例 | どんなことがわかるか? | ビジネスでの活用イメージ |
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国勢調査(総務省) | 5年に一度行われる最も基本的な調査。 人口、世帯構成、就業状況、住居の種類などが市区町村、さらには町丁・字レベルでわかります。 | 新店舗の出店計画、商圏分析、ターゲット顧客のペルソナ設定など。 |
労働力調査(総務省) | 完全失業率や就業者数など、毎月の雇用・失業情勢がわかります。 | 景気動向の把握、人材採用計画の策定、業界トレンドの分析など。 |
家計調査(総務省) | 全国の世帯が何にどれくらいお金を使っているか(家計収支)がわかります。 | 新商品・サービスの需要予測、消費トレンドの把握、マーケティング戦略の立案など。 |
【プロの視点:e-Stat初心者が陥りがちな「キーワード検索の罠」】
> 多くの初心者は、まずキーワードで検索しようとします。しかし、公的統計の調査名は専門的なものが多く、思い通りの結果にたどり着けないことがよくあります。例えば、「若者の貯金額」と検索しても、ピンとくる調査は出てきません。 >
> プロならこうする!
> 最初は「分野で探す」機能を使ってみましょう。「家計」や「国民生活」といった大きなカテゴリから絞り込んでいくと、「こんな調査があったのか!」という発見があります。ちなみに、「若者の貯金額」に近いデータは、「家計調査」や「家計の金融行動に関する世論調査」などで見つけることができます。まず全体像を把握してから、具体的な調査名で検索するのが、宝の山にたどり着く最短ルートです。
厚労省データ活用の本丸!「厚生労働省統計表データベースシステム」
次に紹介するのが、厚生労働省の統計表データベースシステムです。e-Statが「総合デパート」なら、こちらは「生活雑貨・健康用品の専門店」といったところでしょうか。私たちの「生・老・病・死」に直結する、非常に具体的でリアルなデータが満載です。
なぜ、厚労省のデータがビジネスに効くのか?
それは、国民の健康、医療、福祉、年金、雇用・労働といった、生活の根幹に関わるデータを扱っているからです。 人々の悩みやニーズが、具体的な数字として表れているため、新しいビジネスチャンスの宝庫と言えます。
厚労省の注目すべき統計データ
統計調査名 | どんなことがわかるか? | ビジネスでの活用イメージ |
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国民生活基礎調査 | 世帯構成、所得、健康状態、介護の状況など、国民生活全般を網羅。 3年ごとの大規模調査では、悩みやストレスの状況も調査。 | ヘルスケアサービス、介護事業、保険商品、シニア向けビジネス、子育て支援サービスなど、あらゆる生活関連ビジネスの企画・開発に活用できます。 |
患者調査 | 全国の医療施設を利用する患者の傷病名、受療状況などがわかります。 | 医薬品開発、健康食品のマーケティング、特定の疾患を持つ人向けのサービスの需要予測など。 |
賃金構造基本統計調査 | 職種、性別、年齢、学歴、企業規模など、かなり細かい条件で賃金の実態がわかります。 | 人事制度の設計、採用活動における給与水準の設定、キャリア関連サービスの開発など。 |
【意外な発見:メンタルヘルス市場のヒントは「国民生活基礎調査」にあり】
> 最近、ストレスチェックが義務化されるなど、メンタルヘルスへの関心が高まっています。この市場のニーズを探る際、多くの人は専門的な調査を探しがちです。しかし、実は「国民生活基礎調査」の「健康票」には、「悩みやストレスの状況」という項目があり、性別・年齢別に「人間関係」「仕事」「収入・借金」など、ストレスの原因までデータ化されています。 このデータを見れば、「どの年代の女性が、どんな悩みを抱えやすいのか」といった具体的なターゲット像が浮かび上がり、より効果的なサービス開発に繋がるのです。
地域密着ビジネスの宝庫!「自治体オープンデータサイト」の探し方・使い方
e-Statや厚労省のデータが「日本全体」や「都道府県別」といったマクロな視点なのに対し、よりミクロで地域に根差したデータを公開しているのが、市区町村などの自治体です。2016年に「官民データ活用推進基本法」が施行され、多くの自治体がデータの公開(オープンデータ化)を進めています。
自治体のオープンデータ、どうやって探す?
探し方はとても簡単です。「(調べたい市区町村名) オープンデータ」や「(調べたい市区町村名) 統計」と検索するだけ。多くの自治体で、専用のポータルサイトが用意されています。
どんなデータが見つかる?
自治体によって公開されているデータは様々ですが、以下のような地域密着型のビジネスに直結するデータが見つかることが多いです。
- 人口関連:年齢別人口、町丁別人口、転入・転出者数など
- 子育て関連:保育園の待機児童数、幼稚園・小中学校一覧など
- 健康・福祉関連:介護保険施設の定員・空き状況、検診受診率など
- 産業・観光関連:観光客入込数、商店街の店舗数、農産物の生産量など
- 生活・環境関連:ごみの排出量、交通事故発生マップ、公園・公共施設一覧など
【SNSの声(創作):オープンデータから生まれた意外なビジネスアイデア】
> 「地元の市のオープンデータを見ていたら、放置自転車の発生場所をヒートマップ化したデータを発見!これ、需要があるのにステーションがない場所ってことだよな…。シェアサイクル事業の最適な設置場所、見つけちゃったかも!」
> 「うちの区、AEDの設置場所マップを公開してるんだ。素晴らしい取り組みだけど、いざという時に使い方を知らない人が多いはず。このマップと連携して、一般人向けの救命講習アプリを作ったら社会貢献にもなるし、ビジネスとしても成立しそう!」
このように、自治体のオープンデータは、その地域ならではの課題やニーズを浮き彫りにし、地域貢献型の新しいビジネスを生み出すための貴重な原石なのです。
【実践編】厚労省・自治体データ活用!明日から使える具体的な5ステップ
さあ、いよいよ実践編です。ここでは、あなたが「公的統計を使ってみよう!」と思い立った時に、迷わずに行動できるよう、具体的な5つのステップに分けて解説します。このステップ通りに進めれば、誰でも簡単にデータを情報に変え、価値を生み出すことができます。
ステップ1:目的を明確にする「何を知りたいのか?」を自問自autistaする
データ活用の旅に出る前に、最も重要な準備。それは「目的地の設定」です。闇雲にデータの海に漕ぎ出しても、遭難するだけ。最初に「自分は何を知りたいのか?」「このデータを使って何を明らかにしたいのか?」を、できるだけ具体的に言葉にしてみましょう。
- 悪い例:「何か面白いデータないかな〜」
- 良い例:「自社が開発しているシニア向けスマホ教室の最適な出店エリアを探すため、PC・スマホの利用率が低く、かつ高齢者人口が多い市区町村はどこかを知りたい」
目的が明確であればあるほど、探すべきデータも自然と絞られてきます。以下のフレームワークを使って、あなたの目的を整理してみましょう。
目的(最終的に明らかにしたいこと) | そのために必要なデータは何か?(仮説) | どの統計に答えがありそうか?(仮説) |
---|---|---|
新しい飲食店の出店候補地(都内)を探す | 昼間人口が多く、所得水準が高いエリアはどこか? | 国勢調査(従業地・通学地による人口)、課税標準額段階別所得割額等に関する調(総務省) |
子育て世帯向けの家事代行サービスの需要を把握する | 共働き世帯が多く、待機児童数も多い地域はどこか? | 国勢調査(夫婦の労働力状態)、厚労省の保育所等関連状況取りまとめ、自治体の待気児童数データ |
20代女性向けのプロテイン商品を開発したい | 20代女性は、健康や体型についてどんな悩みを持っているか? | 国民生活基礎調査(悩みやストレスの状況)、国民健康・栄養調査(身体状況及び生活習慣調査) |
ステップ2:当たりをつける「どの統計に答えがありそうか?」
目的が明確になったら、次はいよいよ「宝の地図」を広げます。ステップ1で立てた仮説を元に、どの統計データに答えがありそうか、当たりをつけていきましょう。ここで活躍するのが、先ほど紹介した「3大ポータルサイト」です。
- 国や都道府県レベルの全体像を掴みたい → まずはe-Statで関連キーワードや分野から探す。
- 健康・医療・福祉・労働といったテーマが絡む → 厚生労働省の統計サイトを深掘りしてみる。
- 特定の市区町村に絞ったローカルな情報が欲しい → 該当自治体のオープンデータサイトを検索する。
【プロの視点:急がば回れ!「調査の概要」を必ず読もう】
> 多くの人が、データファイルを見つけるとすぐにExcelで開きたがりますが、それは危険な罠です。その前に、必ず「調査の概要」「用語の解説」「利用上の注意」といったドキュメントに目を通してください。 > > なぜなら、そこにはデータの定義が書かれているからです。例えば、一口に「失業率」と言っても、調査によって定義が異なる場合があります。この定義を理解せずに数字だけを比較してしまうと、「A調査では失業率が下がっているのに、B調査では上がっている。どっちが本当なんだ?」と混乱し、最悪の場合、全く見当違いの解釈をしてしまうことになります。 > > データ分析における失敗の多くは、この「定義の誤解」から生まれます。遠回りに見えても、最初に調査のルールを確認することが、実は最も確実で速いルートなのです。
ステップ3:データをダウンロードする「Excel形式が最強の理由」
目的のデータが見つかったら、いよいよダウンロードです。多くの統計サイトでは、PDF、Excel、CSVなど、いくつかのファイル形式でデータを提供しています。
ここで迷わず選んでほしいのが「Excel」または「CSV」形式です。
なぜなら、PDFは「閲覧」するためのものであり、データの加工や分析には全く向いていないからです。後々の作業効率を考えれば、加工しやすい形式でダウンロードしておくことが鉄則です。e-Statなどのサイトでは、必要な項目だけを選んでCSV形式でダウンロードする機能もあり、非常に便利です。
ステップ4:データを「掃除」する – これが一番地味で、一番大事
ダウンロードしたての公的統計データは、残念ながらそのままでは分析に使えないことがほとんど。いわば「泥のついた野菜」のような状態です。美味しく料理するためには、まずこの泥を洗い落とし、不要な部分を取り除く「データクレンジング(お掃除)」という作業が不可欠です。
このステップは非常に地味ですが、データ活用の精度を左右する最も重要な工程と言っても過言ではありません。
具体的なデータお掃除リスト
- 結合されたセルの解除:表の見栄えを良くするためにセルが結合されていることがよくあります。これは分析の邪魔になるので、真っ先に解除しましょう。
- 不要な行や列の削除:合計欄や注釈など、分析に不要な行列は削除します。
- 全角数字・記号を半角に統一:見た目は同じでも、PCは全角と半角を別の文字として認識します。置換機能を使って半角に統一しましょう。
- 単位の統一:「千円」と「円」が混在していたら、どちらかに揃えます。
- 記号の意味を確認:「-」や「*」、「…」といった記号が何を表しているのか(該当なし、秘匿、調査対象外など)を「利用上の注意」で確認し、必要に応じて「0」に置き換えるか、空白にします。
【あるある失敗談:お掃除をサボった新入社員Dさんの悲劇】
> 新入社員のD君は、上司から地域別の売上データと、自治体が公開している世帯数データを組み合わせて分析するように指示されました。急いでデータをダウンロードし、見た目が綺麗だったのでそのままグラフを作成。「このエリアは一世帯あたりの売上が突出して高いです!有望市場です!」と意気揚々と報告しました。 > しかし、上司はグラフを一瞥して言いました。「D君、この自治体の世帯数の単位は『千世帯』になっているよ。他の自治体は『世帯』だから、桁が3つ違う。君の分析結果は、全くのデタラメだ」。 > D君は、データのお掃除、特に「単位の確認」を怠ったために、大恥をかいてしまったのです。
ステップ5:データを「可視化」する – グラフ一枚で伝わる力が変わる
綺麗にお掃除されたデータは、それだけでも価値がありますが、まだ「素材」のままです。この素材を、誰もが一目で理解できる「料理」に仕上げる工程が「可視化」、つまりグラフにすることです。
数字の羅列をいくら眺めていても、人間はなかなかその意味を理解できません。しかし、たった一枚のグラフにするだけで、データの持つメッセージが瞬時に伝わるようになります。
Excelを使えば、誰でも簡単にグラフを作成できます。大切なのは、「何を伝えたいか」によって適切なグラフの種類を選ぶことです。
グラフの種類 | 用途(こんな時に使う!) | 具体例 |
---|---|---|
棒グラフ | 項目ごとの量を比較する | 都道府県別の人口、商品別の売上高 |
折れ線グラフ | 時間の経過による推移を見る | 年代別の平均所得の推移、月別のウェブサイトアクセス数 |
円グラフ | 全体に対する構成比を見る | アンケートの年代別回答者割合、市場の企業別シェア |
積み上げ棒グラフ | 内訳を比較しながら、全体の量も比較する | 各店舗の売上高の内訳(商品A、商品B…)の比較 |
散布図 | 2つの項目の関係性(相関)を見る | 店舗の面積と売上高の関係、広告費と問い合わせ件数の関係 |
ビフォー(ただの表)
年代 | 男性平均年収 | 女性平均年収 |
---|---|---|
20代 | 350万円 | 300万円 |
30代 | 500万円 | 380万円 |
40代 | 650万円 | 420万円 |
アフター(分かりやすいグラフ)
→ 男女別・年代別の平均年収を比較した棒グラフを作成すれば、「どの年代で男女の収入差が最も開くのか」が一目瞭然になります。
この5つのステップを踏むことで、あなたは公的統計という「原石」を、ビジネスの意思決定に役立つ「宝石」へと磨き上げることができるのです。
【応用編】公的統計の使い方をマスター!プロが実践するデータ分析のコツ
基本的なステップをマスターしたら、次はいよいよ応用編です。ここでは、データからさらに深い「気づき(インサイト)」を引き出すための、プロが実践している3つの分析のコツをご紹介します。この視点を持つだけで、あなたの分析力は格段にレベルアップします。
「比較」する – 1つの数字だけ見ても意味がない
データ分析の基本中の基本、それは「比較」です。単一の数字、例えば「今年の売上は10億円でした」という情報だけでは、それが「良い」のか「悪い」のか判断できません。
- 時系列比較:「去年の9億円と比べてどうか?」
- 計画比較:「目標の12億円と比べてどうか?」
- 競合比較:「ライバル社の15億円と比べてどうか?」
このように、何かと比較することで、初めてその数字の意味が浮かび上がってきます。公的統計を分析する際にも、常にこの「比較」の視点を持ちましょう。
プロが使う3つの比較軸
- . 時系列比較(過去と比べる):今年の高齢化率は去年と比べてどう変化したか?過去5年間の推移はどうか?
- . 地域間比較(他所と比べる):A市の待機児童数は、隣のB市や全国平均と比べて多いのか少ないのか?
- . 属性間比較(中身を比べる):男性の平均寿命は、女性と比べてどうか?正規雇用者と非正規雇用者の賃金格差はどうか?
- 労働力調査:調査週間中に少しでも仕事を探す活動をしたか、などを基準に失業者を定義。
- 職業安定業務統計:ハローワークに登録している求職者数を元に集計。
- 公的統計は、無料で使える信頼性抜群の「宝の山」であり、その使い方はあなたのビジネスや活動の強力な武器となります。 感覚や経験だけでなく、客観的なデータに基づいた主張は、説得力が格段に増します。
- まずは「e-Stat」「厚労省の統計サイト」「自治体のオープンデータサイト」の3つから、自分の「何を知りたいか」という目的に合ったデータを探すことから始めましょう。 壮大なデータの海を前に、完璧を目指す必要はありません。
- 見つけたデータは、ダウンロードして「お掃除」し、グラフで「可視化」することが基本です。 さらに、「比較」「割り算」「掛け合わせ」という視点で分析することで、データは初めて価値ある情報に変わります。
この3つの軸でデータを比較する癖をつけるだけで、表面的な数字の奥にあるトレンドや課題を発見することができます。
「割り算」する – 実数だけでは本質を見誤る
次に重要なのが「割り算」で考える視点です。私たちはつい、人口や売上高といった「実数(絶対数)」の大きさに目を奪われがちですが、本質は「率」や「一人あたり」といった割り算の指標に隠れていることがよくあります。
【よくある失敗談:出店戦略を誤ったチェーン店E社のケース】
> カフェチェーンのE社は、高齢者向けの新業態を計画していました。出店エリアを選定するため、各市の「65歳以上人口」を比較。最も人口が多かったX市への出店を決めました。しかし、開店してみると思ったように客足が伸びません。 > > 後日、データを再分析してみると、X市は確かに高齢者の「実数」は多いものの、総人口も非常に多いため、「高齢化率(高齢者人口 ÷ 総人口)」は周辺の市よりも低いことが判明。むしろ、高齢者の「実数」はX市より少ないものの、「高齢化率」が非常に高いY市の方が、街を歩いている人に占める高齢者の割合が高く、ターゲットにリーチしやすい市場だったのです。 > > E社は、実数だけに注目し、「率」で比較することを怠ったために、ビジネスチャンスを逃してしまったのです。
ビジネスで使える「割り算」の例
割り算の指標 | 計算式 | これで何がわかる? |
---|---|---|
〇〇率・割合 | 特定の数 / 全体の数 | 全体に占める構成比(例:高齢化率、女性管理職比率) |
一人あたり〇〇 | 全体の量 / 人口 | 個人レベルでの規模感(例:一人あたり県民所得、一人あたりごみ排出量) |
密度 | 量 / 面積 | 特定のエリアへの集中度(例:人口密度、小売店密度) |
実数を見たら、常に「何かで割れないか?」と考えてみましょう。その一手間が、正しい意思決定に繋がります。
複数のデータを「掛け合わせる」 – 洞察はここから生まれる
最後のコツは、単一の統計データだけでなく、複数の異なるデータを「掛け合わせる」ことです。ここに、AIには真似できない、人間ならではの創造性が発揮されます。一見、無関係に見えるデータ同士を組み合わせることで、誰も気づかなかった新しいビジネスチャンスや課題解決の糸口が見つかることがあります。
【プロの視点:異分野データの掛け合わせで新サービスを開発したF社の事例】
> 健康食品を販売するF社は、新しいマーケティング戦略を模索していました。 > > 1. まず、厚労省の「国民健康・栄養調査」から、「運動習慣のある人の割合」が低い都道府県をリストアップしました。 > 2. 次に、総務省の「家計調査」から、「健康食品への支出額」が高い都道府県をリストアップしました。 > 3. 最後に、この2つのデータを地図上で掛け合わせました。 > > すると、「運動習慣はないけれど、健康のためにお金を使いたいという意識は高い」という、まさにF社のターゲットとなる潜在顧客が密集しているエリアが浮かび上がってきたのです。 > さらに、そのエリアの自治体のオープンデータから「坂道の多さ」や「公園の少なさ」といった情報を加えることで、「運動したくてもできない環境的要因があるのではないか?」という仮説を立てました。 > > この分析から、F社は「自宅で手軽にできるトレーニング」と自社のサプリメントを組み合わせた新しいオンラインサービスを開発。ターゲットエリアに集中的に広告を投下し、大成功を収めました。
> SNSの声(創作):
> 「e-Statで共働き世帯の割合が多い地域と、スーパーの店舗データを重ねてみたら、夜遅くまで営業しているスーパーが極端に少ないエリアを発見!ここ、ミールキットの宅配サービスとか絶対需要あるでしょ!」
このように、データを掛け合わせることで、分析は「事実の確認」から「未来の予測」や「新たな価値の創造」へと進化するのです。
知らないと損!厚労省・自治体データ活用の「あるある」な疑問と落とし穴
最後に、公的統計を使い始めた人がつまずきがちな「あるある」な疑問や落とし穴について、Q&A形式で解説します。これを読んでおけば、安心してデータ活用の第一歩を踏み出せます。
Q1. 「最新のデータが見つからない…」いつ更新されるの?
A1. 公的統計は速報性が低いものが多い、と心得ましょう。
国勢調査が5年に一度であるように、公的統計は大規模な調査が多いため、結果の公表までに時間がかかります。 毎月公表される統計でも、数ヶ月前のデータであることは珍しくありません。
解決策:
各統計サイトには、必ず「公表予定」や「報道発表資料」といったコーナーがあります。ここで、次のデータがいつ更新されるのかを確認する習慣をつけましょう。もし最新のデータが存在しない場合は、焦らずに過去のデータから「傾向(トレンド)」を読み取ることが重要です。数字が少し古くても、長期的なトレンドは簡単には変わりません。
Q2. 「調査によって数字が違うんだけど…」どっちを信じればいい?
A2. どちらも「正しい」ことが多いです。重要なのは「定義の違い」を理解すること。
これは非常によくある疑問です。例えば、日本の「失業者数」について調べる際、総務省の「労働力調査」と厚生労働省の「職業安定業務統計」では、発表される数値が異なります。
これは、どちらかの調査が間違っているわけではありません。「失業者」の定義や調査方法が異なるため、結果に差が生まれるのです。
解決策:
数字が違うことに気づいたら、チャンスです。ステップ2で強調したように、必ず「調査の概要」や「用語の解説」を読み比べてください。それぞれのデータが「何を」「どのように」調べているのかを理解することで、なぜ数字が違うのかが分かり、より多角的に物事を捉えられるようになります。目的に応じて、より適切な方のデータを採用しましょう。
Q3. 「データが細かすぎて、どこを見ればいいかわからない…」
A3. 最初から全部を見ようとせず、「目的に必要な項目だけ」を抜き出しましょう。
公的統計のデータ、特にe-Statなどでダウンロードできる統計表は、非常に多くの項目(変数)を含んでいることがあります。これを前にして「うわっ、無理…」と固まってしまう気持ちはよく分かります。
解決策:
ここで立ち返るべきなのが、ステップ1で設定した「目的」です。あなたの目的を達成するために、本当に必要な項目はどれでしょうか?
例えば、「年代別の人口」が知りたいだけなのに、表に「産業別就業者数」や「世帯の種類」といった項目が含まれていても、それらは一旦無視して構いません。Excel上で、不要な列は思い切って非表示にするか、削除してしまいましょう。
データ分析は、情報を「足し算」していくことだと思われがちですが、実際には不要な情報をそぎ落としていく「引き算」の作業が非常に重要です。最初にデータをシンプルにすることで、その後の分析が驚くほどスムーズに進みます。Excelのピボットテーブル機能を使えば、大量のデータの中から必要な情報だけを瞬時に集計することも可能です。
まとめ
今回は、「公的統計の使い方」をテーマに、厚労省や自治体データの具体的な活用ステップから、プロが実践する分析のコツまで、網羅的に解説してきました。最後に、この記事の最も重要なポイントを3つにまとめておさらいしましょう。
「データは難しそう…」という最初の壁は、誰にでもあるものです。しかし、この記事で紹介したステップは、どれも特別なスキルを必要としない、今日から誰でも始められることばかりです。
まずは一つ、あなたの仕事や、あなたが関心を持っている地域のことについて、「こんなデータはないかな?」と探してみてください。その小さな一歩が、これまで見えなかった新しい発見や、思わぬビジネスチャンスに繋がるかもしれません。データという最強の武器を手に入れて、あなたの日常を、そしてビジネスを、もっと豊かにしていきましょう。