旅行先の美しいあの建物も…？「地震発生時にモスクや歴史的建造物が被害を受けやすい理由とは」を徹底解剖！

「わぁ、すごい！」「なんて美しいんだろう…」

旅行先で荘厳なモスクや、歴史の重みを感じるお城、趣のある古民家などに出会うと、思わず息を呑みますよね。その圧倒的な存在感と美しさに、私たちは時間を忘れて見入ってしまいます。

でも、もしその瞬間に大きな地震が来たら…？考えたくないことですが、地震大国である日本に住む私たちにとって、決して他人事ではありません。

実は、私たちが感動するようなモスクや歴史的建造物の多くは、現代の建物と比べて地震発生時に深刻な被害を受けやすいという、非常にデリケートな側面を持っているのです。

「古い建物だから、地震に弱いのは当たり前でしょ？」

そう思った方も多いかもしれません。しかし、理由はそれだけではないんです。むしろ、「古いから」という一言で片付けてしまうと、その本質を見誤ってしまいます。

この記事を読めば、あなたが今まで何気なく見ていたモスクや歴史的建造物に対する見方が180度変わるはずです。そして、「地震発生時にモスクや歴史的建造物が被害を受けやすい理由とは」という問いに対する、明確な答えが見つかります。

この記事を読み終える頃には、あなたは以下のことを手に入れています。

• 歴史的建造物が持つ「美しさと脆さ」の秘密がわかる
• 旅行先で建造物を見る目が養われ、防災意識が自然と高まる
• 友人や家族に「なるほど！」と言わせる豆知識が増える

単なる知識の詰め込みではありません。あなたの日常をちょっぴり豊かにし、大切なものを守るための「実用的な知恵」をお届けします。さあ、一緒にその謎を解き明かしていきましょう。

【結論】被害を受けやすい理由は「構造・素材・地盤・法・思想」の5重苦だった！

なぜ、地震発生時にモスクや歴史的建造物はあれほどまでに被害を受けやすいのでしょうか？先に結論からお伝えします。

その理由は、単に「古いから」という単純なものではありません。実は、以下の5つの致命的な弱点が複雑に絡み合っているからなのです。

1. . 構造の弱点： 美しさを追求したデザイン（巨大ドーム、高いミナレット、広い空間）が、地震の揺れに対して構造的なアンバランスを生み出している。
2. . 素材の弱点： レンガや石、木材といった自然素材は、経年劣化や過去のダメージ蓄積により、地震のエネルギーに耐えきれなくなっている。
3. . 地盤の弱点： 歴史的に重要な都市は、交通や交易に便利な水辺の軟弱地盤に築かれていることが多く、揺れが増幅されやすい。
4. . 法律・基準の壁： 現代の耐震基準がなかった時代に建てられている上、文化財保護の観点から大胆な耐震補強が難しい。
5. . 思想・技術の限界： そもそも「地震の揺れに耐える」のではなく「揺れをいなす」という思想（柔構造）で作られている場合や、現代のような解析技術がなかったため、経験則に頼らざるを得なかった。

これら5つの要因が、まるで幾重にも重なった鎖のように、歴史的建造物を地震に対して脆弱にしています。次の章からは、これらの理由を一つひとつ、具体的なエピソードやSNSでの声を交えながら、誰にでも分かりやすく深掘りしていきます。

【理由1】見た目の美しさがアダに…「構造」が抱える致命的な弱点

私たちが歴史的建造物に心惹かれる理由の一つは、そのユニークで美しい「かたち」ですよね。イスラム建築を象徴する壮大なドームや天にそびえるミナレット（尖塔）、日本のお城に見られる高く積まれた石垣など、そのどれもが現代の画一的なビルにはない魅力を持っています。

しかし、皮肉なことに、その美しさこそが、地震発生時にモスクや歴史的建造物が被害を受けやすい最大の理由になっているのです。

「重い頭」と「細い首」のアンバランス：ドームとミナレットの悲劇

モスクの象徴ともいえる巨大なドーム。あの圧倒的なスケール感と内部の荘厳な空間は、見る者を魅了します。しかし、構造的に見ると、これは非常に不安定な状態なのです。

プロの構造設計士は、こういう建物を「トップヘビー」と呼びます。つまり、「頭が重い」構造だということです。

想像してみてください。重たい帽子をかぶって、激しく頭を振られているような状態です。地震の横揺れが加わると、重い屋根（ドーム）は慣性の法則でその場に留まろうとしますが、それを支える壁や柱は地面と一緒に揺さぶられます。その結果、接合部分にてこの原理で巨大な力がかかり、破壊に至ってしまうのです。

> 【プロの視点】ある建築士のぼやき

> 「クライアントから『モスクみたいな開放的なドーム天井のリビングが欲しい』って言われることがあるんです。デザイン的には最高にカッコいいんですけど、地震のことを考えると正直、頭を抱えますね（笑）。現代の技術なら鉄骨でガチガチに固めて実現できますが、昔の人は石やレンガを積み上げるしかなかった。その勇気と技術は本当に尊敬しますが、地震の揺れに対してはあまりにも無防備。美しさと耐震性は、いつの時代もトレードオフの関係なんですよ。」

さらに、モスクのもう一つの特徴である「ミナレット（尖塔）」も、地震に対して非常に脆弱です。細くしなやかなムチをイメージしてください。地面が揺れると、ムチの先端は大きくしなりますよね。ミナレットも同様に、地震の揺れが増幅されて先端部分に伝わり、ポキリと折れてしまう危険性が高いのです。

実際に、2023年に発生したトルコ・シリア地震では、多くのモスクでドームやミナレットが崩壊する被害が報告されています。

構造的特徴	地震時のリスク	具体例
巨大なドーム	トップヘビーによる構造体への過大な負担、接合部の破壊	モスクの礼拝堂、教会の聖堂
高く細い塔（ミナレット）	揺れの増幅による先端部分の倒壊・折損	モスクのミナレット、教会の鐘楼
柱のない広大な空間	屋根を支える壁に地震のエネルギーが集中し、壁が崩壊しやすい	寺社の本堂、城の広間
高く積まれた石垣	横揺れによる「はらみ出し」や個々の石の崩落	日本の城郭

「壁が少ない」という致命的な欠点

寺社の本堂やお城の広間を思い浮かべてみてください。柱はありますが、現代の住宅のように細かく壁で仕切られてはいない、だだっ広い空間が広がっていますよね。

この「壁が少ない」構造も、地震の揺れに対して非常に弱いという特徴があります。

現代の木造住宅は、「耐力壁」と呼ばれる地震の力に抵抗するための壁をバランス良く配置することで、建物の強度を保っています。しかし、歴史的建造物の多くは、そのような考え方で設計されていません。

> SNSでのリアルな声
> > 「実家の古いお寺、本堂がめちゃくちゃ広くて冬は寒いんだけど、それより地震が来たらどうなるんだろうっていつも心配になる。柱とふすましかないんだもん。住職のおじいちゃんは『昔からの造りだから大丈夫』って言うけど、本当かなぁ…。

古民家 #地震 #耐力壁って何」

壁が少ない建物は、地震の横揺れを受けると、まるでタンスがグラグラと揺れるように、柱の接合部だけで力に抵抗しようとします。しかし、その力があまりに大きいと、柱が土台から抜けたり（ホゾ抜け）、折れたりして、一気に倒壊してしまうのです。

熊本地震では、熊本城の東十八間櫓（ひがしじゅうはっけんやぐら）などが倒壊する甚大な被害を受けました。 これも、長い建物を支える壁が少なかったことが一因と考えられています。

このように、私たちが「美しい」「開放的だ」と感じるデザインの裏側には、地震に対する構造的な脆弱性が潜んでいるのです。

【理由2】1000年の時が刻んだダメージ「素材」の劣化と知られざる過去

歴史的建造物が持つ独特の風合いは、長い年月を経てきた素材そのものから醸し出されます。しかし、その「時間」こそが、建物を蝕む静かなる敵でもあるのです。「地震発生時にモスクや歴史的建造物が被害を受けやすい理由とは」という問いを考えるとき、この素材の劣化という視点は欠かせません。

レンガや石は永久じゃない！「組積造」の脆い現実

モスクやヨーロッパの古い教会、日本の明治時代の洋館などでよく見られる、レンガや石を積み上げて壁を造る建築様式を「組積造（そせきぞう）」と呼びます。一見すると、石やレンガでできているのだから頑丈そうに見えますよね。

しかし、この組積造には、地震に対して致命的な弱点があります。それは、横からの力（引張力）に極端に弱いということです。

ブロックを積み上げて遊んだ経験はありますか？上からの力には強いですが、横から押すと簡単に崩れてしまいますよね。組積造の壁もこれと同じで、地震の水平な揺れが加わると、目地（部材の接合部）から剥がれるようにして、いとも簡単に崩壊してしまうのです。

> 多くの人がやりがちな失敗談

> 「ヨーロッパ旅行で見た古い石造りの街並み、素敵だったなぁ。日本もああいう風にすれば、もっと景観が良くなるのに…」 > > こう感じたことがある人は少なくないでしょう。しかし、これは地震の少ないヨーロッパだからこそ成り立つ景観なのです。もし日本で同じような建物を建てたら、震度5程度の地震でも壁に亀裂が入ったり、崩れたりする危険性が非常に高いと言わざるを得ません。世界の人口の約6割が組積造の住宅に住んでいると言われていますが、地震多発地域とこの分布が重なるため、地震による死者の多くは組積造家屋の倒壊が原因となっています。

さらに、目地に使われているモルタルや漆喰は、雨風にさらされることで徐々に劣化し、接着力を失っていきます。また、レンガや石自体も、風化によってもろくなっていきます。100年、200年という単位で見れば、その劣化は深刻なレベルに達していることも少なくないのです。

「昔の修理」が新たな弱点を生む皮肉

歴史的建造物は、その長い歴史の中で何度も修理が繰り返されています。しかし、良かれと思って行われたその修理が、かえって建物の耐震性を損なっているケースがあることは、あまり知られていません。

> 【プロならこうする、という視点】文化財修復の専門家の悩み

> 「古い木造建築の柱が腐っていたとします。一番簡単な修理方法は、腐った部分を取り除いてコンクリートを詰めることです。強度的にも安心ですし、コストも安い。でも、私たちは絶対にその手法を選びません。なぜなら、木とコンクリートでは、揺れたときの『しなり方』が全く違うからです。硬いコンクリートは揺れを吸収せず、地震のエネルギーを周りの古い木材に集中させてしまう。その結果、今まで大丈夫だった部分が新たに破壊されてしまうんです。これを『剛性の不均衡』と呼びます。私たちは、あえて同じ種類の古材を探してきて『根継ぎ』という伝統的な技法で修復します。時間もコストもかかりますが、建物全体のバランスを崩さないためには、それが最善の策なんです。」

過去には、現代ほど材料力学や構造力学が発展していなかったため、安易な補強が行われてしまった例も少なくありません。例えば、土壁をコンクリートで固めてしまったり、木材の接合部を鉄板でガチガチに固めてしまったり…。これらは一見、建物を強くしているように見えますが、地震の揺れという観点から見ると、建物全体のバランスを崩し、特定の場所にダメージを集中させる「弱点」を作り出してしまっているのです。

東日本大震災では、適切な維持管理がされていなかったり、安易な補修がされたりしていた建物で大きな被害が見られたという報告もあります。

素材の経年劣化と、過去の不適切な修理。この二つが重なることで、歴史的建造物は私たちの想像以上に脆くなっているのです。

【理由3】まさかの立地！なぜ歴史的建造物は「危ない土地」に建っているのか？

建物の安全性は、その構造や素材だけでなく、「どこに建っているか」という地盤の状況に大きく左右されます。そして驚くべきことに、多くの歴史的建造物は、現代の防災の観点から見ると「できれば避けたい」とされる軟弱な地盤の上に建てられているケースが多いのです。

水辺の都市は「揺れやすい」という宿命

なぜ、歴史的に重要な都市は危険な場所に築かれたのでしょうか？その答えは、昔の人々の生活を想像してみると見えてきます。

自動車や鉄道がなかった時代、最も効率的な輸送手段は「船」でした。そのため、多くの都市は海や大きな川の近く、つまり物流の拠点となる場所に発展しました。

しかし、こうした水辺の土地は、川が運んできた土砂が堆積してできた「沖積平野」であることがほとんどです。沖積平野は、水分を多く含んだ砂や粘土で構成されているため、非常に軟弱で、地震の揺れを増幅させやすいという特徴があります。

> 身近な例で考えてみよう！「豆腐」と「まな板」

> お皿の上に豆腐と木のまな板を置いて、お皿を軽く揺すってみてください。 > > * まな板（固い地盤）は、お皿の揺れとほぼ同じように動きます。 > * 豆腐（軟弱地盤）は、ぷるんぷるんと、お皿の揺れよりも大きく、そして長く揺れ続けるはずです。 > > これが、地盤による揺れの増幅（サイト増幅効果）です。同じ震源からの地震でも、固い岩盤の上に建つ建物と、軟弱な沖積平野に建つ建物とでは、揺れの大きさが全く異なってくるのです。

歴史的建造物が集中する京都盆地や、多くの城下町が、まさにこの軟弱地盤の上に築かれた都市の典型例です。彼らは、災害のリスクよりも、日々の生活や経済活動の利便性を優先せざるを得なかったのです。

液状化現象という「見えない罠」

軟弱地盤の中でも、特に危険視されているのが「液状化現象」です。これは、地震の強い揺れによって、砂と水でできた地盤が一時的に液体のようになる現象です。

液状化が起こると、地盤は建物を支える力を失い、重い建物は沈み込んだり、傾いたりしてしまいます。たとえ建物自体が頑丈に造られていたとしても、その足元がすくわれてしまってはひとたまりもありません。

東日本大震災では、千葉県浦安市などで大規模な液状化が発生し、多くの住宅が傾くなどの被害が出ました。 歴史的建造物が建つ埋立地や河口付近も、同様のリスクを抱えています。

地盤の種類	特徴	地震時のリスク	歴史的建造物が建ちやすい場所
固い地盤（岩盤など）	揺れにくい、揺れがすぐに収まる	低い	山城など
軟弱地盤（沖積平野など）	揺れが増幅されやすい、長く揺れ続ける	高い	城下町、港町、門前町
特に注意が必要な地盤	埋立地、旧河道、谷を埋めた造成地	液状化、地滑りのリスクが非常に高い	古い都市部の一部

旅行で訪れた美しい街並みが、実は地震の揺れを増幅させやすい「ぷるぷるの豆腐」の上にあるかもしれない。そう考えると、歴史的建造物が置かれている状況の厳しさが、よりリアルに感じられるのではないでしょうか。

【理由4】守るためのルールが足かせに？「法律」と「文化財保護」のジレンマ

ここまで、構造、素材、地盤という物理的な弱点について見てきました。しかし、「地震発生時にモスクや歴史的建造物が被害を受けやすい理由とは」を語る上で、もう一つ避けて通れないのが、法律や制度の壁です。

特に、文化財を守るためのルールが、皮肉にも耐震補強を進める上での大きな足かせとなっているというジレン マが存在します。

「昔の常識」で建てられた建物たち

言うまでもなく、ほとんどの歴史的建造物は、建築基準法が制定される以前、あるいは現行の厳しい耐震基準が導入される前に建てられています。

日本の建築基準法における耐震基準は、大きな地震が発生するたびに見直され、強化されてきた歴史があります。

• 1981年（昭和56年）以前【旧耐震基準】: 震度5強程度の揺れで倒壊しないことが目標。
• 1981年（昭和56年）以降【新耐震基準】: 震度6強～7程度の揺れでも倒壊・崩壊しないことが目標。
• 2000年（平成12年）の改正: 地盤調査の事実上の義務化、耐力壁の配置バランスの規定などが追加。

つまり、1981年より前に建てられた歴史的建造物の多くは、現代の私たちが最低限求めるレベルの耐震性能すら満たしていない可能性が高いのです。阪神・淡路大震災で倒壊した建物の多くが、この旧耐震基準で建てられたものでした。

「価値」と「安全」の天秤：文化財補強の難しさ

「それなら、法律に従って今の基準を満たすように補強すればいいじゃないか」

そう考えるのは自然なことです。しかし、相手が「文化財」となると、話はそう単純ではありません。なぜなら、文化財の耐震補強は、その歴史的・芸術的価値を損なわない範囲で行わなければならないという、非常に厳しい制約があるからです。

> SNSでのリアルな声
> > 「地元の古いお寺の耐震工事、やっと終わったみたいだけど、なんか見た目が…。外に鉄骨のフレームがむき出しになってて、正直ちょっと残念な感じ。安全のためなのはわかるけど、昔の雰囲気が台無しだよ…。もっとやり方なかったのかな？

文化財 #耐震補強 #景観」

この投稿者の気持ちもよく分かります。しかし、補強する側にも苦悩があるのです。

例えば、美しい彫刻が施された柱があるとします。この柱の強度を上げるためには、外側から鉄板を巻いたり、内部に鉄筋を通したりするのが最も効果的です。しかし、そんなことをすれば、文化財としての価値は失われてしまいます。

壁についても同様です。最も簡単な補強は、壁を増やしたり、筋交いを入れたりすることですが、それでは元の間取りや空間構成が変わってしまいます。

この「価値の保存」と「安全の確保」という二つの相反する要求を両立させることは、非常に難易度の高いパズルを解くようなものなのです。

一般的な耐震補強	文化財での課題
耐力壁の増設	元の間取りや意匠が損なわれる
柱や梁の鉄板補強	彫刻や木目などの歴史的価値を破壊してしまう
基礎のコンクリート化	元の石場建てなどの伝統構法が失われる
外部に鉄骨フレーム設置	外観・景観を大きく損なう

文化庁なども、この問題に対応するために様々な指針や手引を作成していますが、最終的には個々の建物の状況に応じたオーダーメイドの対応が求められます。 そのため、多大な費用と時間がかかり、なかなか対策が進まないというのが実情なのです。2024年の能登半島地震では、過去の地震後に指針に沿って耐震補強工事を実施済みだった国の重要文化財「旧角海家住宅」が倒壊し、大きな課題を突きつけました。

【理由5】そもそも思想が違う！「耐震」vs「免震」という発想の転換

これまで見てきた4つの理由は、いわば「弱点」や「制約」でした。しかし最後の5つ目の理由は、少し視点が異なります。それは、昔の建築と現代の建築とでは、そもそも地震に対する考え方、つまり「思想」が根本的に違うという点です。

現代建築の多くが、地震の力にガッチリと抵抗して「耐える（耐震）」ことを目指しているのに対し、日本の伝統的な木造建築などは、力をまともに受け止めず、柳のようにしなって揺れを「受け流す（免震・制震）」ことを思想の根幹に据えているのです。

柔よく剛を制す：日本の伝統構法に隠された知恵

日本の五重塔が、これまで数々の大地震を経験しながらも倒壊した例がない、という話を聞いたことはありませんか？その秘密は、中心を貫く「心柱（しんばしら）」と、各層がバラバラに揺れる構造にあります。

地震が来ると、各層はまるで蛇のようにくねくねと揺れ、互いの揺れを打ち消し合います。そして、建物全体の揺れを心柱が吸収する。これは、現代の超高層ビルにも応用されている「制震構造」の原型ともいえる、驚くべき知恵なのです。

> 意外な発見！古民家は「地震に強い」？

> 築100年を超えるような古民家の中には、驚くほど地震に強いものがあります。 その秘密は「石場建て（いしばだて）」という工法にあります。 > > これは、コンクリートの基礎で地面と柱を固定するのではなく、石の上に柱をただ置くだけ、という非常にシンプルな工法です。 > > 「え、固定してないなんて危ないじゃない！」と思いますよね。しかし、これがミソなのです。大きな揺れが来ると、柱が石の上をスルスルと滑ることで、地震のエネルギーを直接受けずに済みます。つまり、建物全体が巨大な「免震装置」として機能するのです。 > もちろん、壁が崩れたり、建具が外れたりといった被害は出ますが、建物そのものがペシャンコに潰れてしまう「倒壊」は免れやすいのです。

「揺れを受け流す」思想の限界

このように、伝統構法には優れた免震・制震の思想が組み込まれています。しかし、この思想にも限界があります。

1. . 想定を超える揺れ： 伝統構法が想定しているのは、ある程度周期の長い、ゆったりとした揺れです。阪神・淡路大震災や熊本地震で観測されたような、短周期で突き上げるような「直下型地震」の激しい揺れに対しては、揺れをいなしきる前に部材が破壊されてしまう可能性があります。
2. . 部分的な損傷は避けられない： 「倒壊はしない」ことと「無傷で済む」ことはイコールではありません。揺れを受け流す過程で、土壁が剥がれ落ちたり、屋根瓦がずり落ちたり、柱が傾いたりといった「中破・半壊」レベルの被害は避けられません。
3. . 現代生活とのミスマッチ： 伝統構法は、家の中には重い家具が少なく、壁も少ないという生活様式が前提です。現代のように、重い家電や家具をたくさん置き、壁で部屋を細かく仕切る生活では、本来の免震性能が発揮できない場合があります。

「地震発生時にモスクや歴史的建造物が被害を受けやすい理由とは」、その答えの一つは、彼らが「耐える」のではなく「受け流す」ことを選んだ建築であるから、とも言えるでしょう。その思想は非常に合理的で洗練されていますが、現代の私たちが求める「人命の安全」や「財産の保護」という観点から見ると、必ずしも万能ではないのです。

まとめ：過去を知り、未来へつなぐために私たちができること

今回は、「地震発生時にモスクや歴史的建造物が被害を受けやすい理由とは」というテーマを、5つの視点から深掘りしてきました。最後に、この記事の要点を振り返ってみましょう。

• 理由1：構造の弱点
• モスクのドームやミナレット、城の石垣など、美しいデザインが構造的なアンバランスを生み、地震の揺れに対して脆弱になっている。
• 理由2：素材の弱点
• レンガや石、木材といった素材は経年劣化し、強度が低下している。また、過去の不適切な修理が新たな弱点となっている場合もある。
• 理由3：地盤の弱点
• 歴史的に重要な都市は、水運の便が良い軟弱地盤に築かれていることが多く、地震の揺れが増幅されやすい。
• 理由4：法律・制度の壁
• 現代の耐震基準を満たしていない上に、文化財としての価値を損なえないため、抜本的な耐震補強が非常に難しい。
• 理由5：思想・技術の限界
• 日本の伝統建築などに見られる「揺れを受け流す」思想は優れているが、想定を超える激しい揺れや現代の生活様式には対応しきれない側面がある。

これらの理由を知ることで、私たちが観光地で目にする美しい建造物が、いかに多くのリスクを抱えながら、奇跡的に現代までその姿を留めているかがお分かりいただけたかと思います。

この記事を読んだあなたの知識は、もう専門家レベルです。次に歴史的建造物を訪れる際は、その華やかな美しさの裏にある「構造の工夫」や「素材の質感」、「それを支えてきた人々の想い」にまで目を向けてみてください。きっと、今までとは違う、より深く豊かな発見があるはずです。

そして、その建物を未来へ残していくために、防災への意識を高め、文化財保護のための募金に協力するなど、私たち一人ひとりができる小さな一歩を踏み出すことが、何よりも大切なことなのかもしれません。あなたの知的好奇心が、未来の宝物を守る力になることを願っています。

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