「11月なのに台風？もう冬でしょ！」その油断が命取りに。この記事で秋台風の真実を知ってください

「え、11月に台風が発生？もうすっかり秋だし、なんなら冬の足音も聞こえてくる頃なのに…」

毎年11月頃になると、天気予報で台風のニュースを聞いて、こんな風に思ったことはありませんか？夏から初秋にかけてあれだけ猛威を振るった台風も、さすがにこの時期にはもう来ないだろう。多くの人がそう油断してしまいがちです。

ですが、その「思い込み」、実は非常に危険かもしれません。

この記事では、そんなあなたの「なぜ？」にプロの視点から徹底的にお答えします。「11月に台風が発生する理由と過去の記録」というテーマを深掘りし、あなたがこの記事を読み終える頃には、以下のことが明確にわかるようになっています。

• なぜ11月でも台風が発生するのか、その科学的なメカニズム
• 11月の台風が持つ、夏場の台風とは異なる「特有の危険性」
• 過去に日本を襲い、甚大な被害をもたらした「忘れてはならない11月の台風」の記録
• 「もう大丈夫」という油断が招く失敗談と、プロが実践する秋の台風対策

単なる情報の羅列ではありません。この記事は、あなたの、そしてあなたの大切な人の命と財産を守るための「実用的な知恵」を提供します。さあ、一緒に11月の台風の真実に迫っていきましょう。

【結論】11月の台風は「発生する」のが当たり前！海水温の高さがカギ。数は少なくても油断は禁物です

先にこの記事の結論からお伝えします。

11月に台風が発生する最大の理由は、日本の南の海上、特にフィリピン近海の海水温が、台風が発生・発達するのに十分な27℃以上をまだ保っているからです。

「台風シーズンは7月〜9月」というイメージが強いですが、これはあくまで日本に接近・上陸しやすい時期の話。気象庁のデータを見ても、11月の台風発生数の平年値（1991〜2020年の平均）は2.2個となっており、決して珍しい現象ではありません。

数は夏場に比べて少ないものの、過去には1990年の台風28号のように、11月末に和歌山県に上陸し、大きな被害をもたらした記録も存在します。 このように、11月の台風はその特有の進路やスピードから、夏場の台風とは違った危険性をはらんでいるため、「時期外れ」という油断こそが最も危険なのです。

それでは、なぜ11月の海はまだ温かいのか？そして、秋の台風には具体的にどのような危険が潜んでいるのか？過去の記録とともに、詳しく見ていきましょう。

【理由1】台風のエネルギー源は「海水温」！11月でも南の海はまだ夏だった

「11月といえば、もう肌寒いのに、なんで台風が生まれるの？」と不思議に思いますよね。その答えは、私たちの足元、ではなく、はるか南の海上にあります。

主役はやっぱり「海水温」！台風が生まれる仕組みをサクッと解説

台風の正体は、熱帯の海上で発生する巨大な空気の渦、つまり「熱帯低気圧」が発達したものです。 そして、そのエネルギー源となっているのが、何を隠そう「海から供給される水蒸気」なんです。

少し専門的な話になりますが、簡単に言うとこういうことです。

1. . 太陽の日差しで海水が温められる：熱帯の海は、一年中強い日差しに照らされています。
2. . 大量の水蒸気が発生する：温められた海水は、お風呂の湯気のようにどんどん蒸発し、水蒸気となって空気中にたまります。
3. . 上昇気流が発生し、積乱雲ができる：水蒸気をたっぷり含んだ湿った空気は軽いため、上昇気流となって上空へ昇っていきます。上空で冷やされると、水蒸気は水滴に変わり、モクモクとした巨大な「積乱雲」になります。
4. . 雲ができる時に熱を放出（潜熱）：水蒸気が水滴になるとき、「潜熱（せんねつ）」と呼ばれる熱を放出します。この熱が周りの空気をさらに温め、上昇気流をますます強力にします。
5. . 渦ができて台風に成長：地球の自転の力（コリオリの力）も加わって、この巨大な積乱雲の集まりが渦を巻き始めます。 そして、中心付近の最大風速が約17m/sを超えると、私たちはそれを「台風」と呼ぶのです。

つまり、台風は「温かい海」というガソリンがないと、生まれることも、大きくなることもできないのです。一般的に、台風が発生・発達するには、海面水温が26.5℃〜27℃以上必要だと言われています。

11月でもフィリピン沖は「常夏」状態

では、なぜ11月でも台風が発生するのでしょうか？ 答えはシンプルで、日本の南の海上、特にフィリピンの東の海上などでは、11月でも海水温が27℃以上を保っているからです。

「え、でも日本はもう寒いよ？」と思いますよね。ここがポイントです。 水は空気と比べて「温まりにくく、冷めにくい」という性質を持っています。 夏の間にたっぷりと太陽の熱を蓄えた海水は、気温が下がり始める秋になっても、すぐには冷めません。そのため、陸地では秋が深まっていても、南の海上では台風が生まれるための条件がまだ十分に整っているのです。

気象庁の統計データを見ても、11月の台風発生数は平年で2.2個。 決してゼロではないことがわかります。

月	発生数（平年値：1991-2020年平均）
1月	0.3
2月	0.3
3月	0.3
4月	0.6
5月	1.0
6月	1.7
7月	3.7
8月	5.7
9月	5.0
10月	3.4
11月	2.2
12月	1.0
年間合計	25.1

*出典：気象庁「台風の平年値」のデータをもとに作成*

この表からもわかるように、台風は一年中発生する可能性があり、11月も例外ではないのです。

> 【プロならこう見る！意外な発見】

> 実は、気象予報のプロの間では「11月に台風が発生すること」自体は、もはや常識です。驚くべきは、その「場所」と「数」の年ごとの変化です。例えば、2025年11月には、統計史上初めて4つの台風が同時に存在する珍事が発生しました。 このような異例の事態の背景には、その年の海水温の分布パターンや、上空の風の流れが複雑に関係しています。私たちは単に「台風が来た」と見るのではなく、「なぜ今年はここで、これだけの数が？」という視点で分析し、気候変動との関連性なども探っているんですよ。

【理由2】秋の台風はスピードが命！ジェット気流に乗って急接近する恐怖

11月の台風が持つ危険性、その一つが「移動スピードの速さ」です。夏の台風が「のろのろ」と迷走することがあるのに対し、秋の台風はまるでスポーツカーのように加速して日本に迫ってくることがあります。

犯人は上空の「偏西風（ジェット気流）」

なぜ秋の台風は足早になるのでしょうか？そのカギを握っているのが、上空を吹く非常に強い西風「偏西風（ジェット気流）」です。

• 夏の場合：夏の間、日本列島は「太平洋高気圧」にどっぷりと覆われています。この高気圧は、台風にとっては巨大な壁のようなもの。行く手を阻まれて、動きが遅くなったり、迷走したりすることが多いのです。
• 秋の場合：秋になると、夏の主役だった太平洋高気圧が日本の東海上へと後退し、勢力を弱めます。 それと入れ替わるように、日本の上空まで南下してくるのが偏西風です。 南の海上で発生した台風が北上してくると、この偏西風の強い流れにグッと捕まり、一気に東へ、つまり日本列島方面へと加速させられるのです。

このスピードアップが、私たちにとってはやっかいな問題を引き起こします。

> 【多くの人がやりがちな失敗談】

> 「昨日、天気予報で見たときはまだフィリピンの東だったから、まあ大丈夫だろう」 > この油断が、秋の台風では命取りになりかねません。これは私の友人、佐藤さん（仮名）の失敗談です。彼は週末のキャンプを計画していましたが、金曜の夜の予報では台風はまだ遠い南の海上。「このペースなら日曜の夜くらいかな」と高をくくってキャンプに出かけてしまいました。しかし、台風はジェット気流に乗って急加速。土曜の午後には急に天候が悪化し、暴風雨に。慌てて撤収しようにも川が増水して道が寸断され、危うく孤立するところだったそうです。「夏の台風の感覚でいたら、全然違った。あのスピードは本当に怖かった」と彼は語っていました。秋の台風は、予報円が大きくても、その中心付近を猛スピードで駆け抜ける可能性があることを忘れてはいけません。

スピードが速いとなぜ危険？

台風の移動スピードが速いと、主に2つの危険性が増します。

1. . 備える時間が短い：台風の接近に気づいてから、実際に暴風域に入るまでの時間が非常に短くなります。家の周りの片付けや、食料の備蓄など、防災対策が間に合わなくなる可能性があります。
2. . 進行方向の右側で風が強まる：台風は反時計回りに風が吹き込んでいます。台風自体が速いスピードで移動すると、進行方向の右側では「台風自身の風」と「台風を移動させる風」が足し算され、風が非常に強くなります。これを「危険半円」と呼びます。日本列島は、この危険半円に入ることが多く、暴風による被害が拡大しやすくなるのです。

SNS上でも、この時期の台風の不気味な速さに対する声が見られます。

> 【SNSの声】

> * 「11月の台風って、なんか知らんけど足が速いイメージ。気づいたらすぐそこにいる感じがして怖い。」 > * 「夏の台風は『来るぞ、来るぞ…』って感じだけど、秋の台風は『来た！』って感じ。心の準備が追いつかない。」 > * 「偏西風に乗った台風、マジで新幹線並みのスピードの時あるから笑えない。油断してると一瞬で窓ガラス割られるレベル。」

このように、11月に発生する台風は、その発生自体は珍しくないものの、偏西風の影響で急加速し、私たちに備える時間を与えてくれない危険な存在となりうるのです。

【理由3】合わせ技で大災害に？「秋雨前線」を刺激して豪雨を降らせる

11月の台風がもたらすもう一つの大きな脅威は、単独での襲来ではなく、「秋雨前線」とのコンボで大雨を降らせる可能性があることです。

「秋雨前線」ってなんだっけ？

秋雨前線とは、秋に日本の南岸沿いに停滞する前線のことです。夏の暖かい空気と、北からやってきた冷たい空気がぶつかり合う場所にできます。この前線が停滞すると、しとしとと長い雨が続くのが特徴です。

台風は、南から大量の暖かく湿った空気を運び込んできます。この空気が、まるで薪をくべるように秋雨前線の活動を活発化させてしまうのです。

台風と秋雨前線の合わせ技による大雨のメカニズム

1. . 台風が日本の南から北上してくる。
2. . 台風が、自身の周りにある大量の暖かく湿った空気を、秋雨前線に向かって送り込む。
3. . 大量の水蒸気の供給を受けた秋雨前線の活動が、一気に活発化する。
4. . 結果として、台風が直接接近・上陸する前から、広範囲で長期間にわたって大雨が降り続き、甚大な被害を引き起こす。

この現象の恐ろしいところは、台風の中心から離れた場所でも記録的な豪雨になる可能性がある点です。台風情報だけをチェックしていて、「自分の住んでいる地域は予報円から外れているから大丈夫」と思い込んでいると、前線による大雨で思わぬ災害に巻き込まれる危険性があります。

2019年の台風19号は10月の上陸でしたが、その影響は11月まで続きました。この台風は、広範囲に停滞していた前線を刺激し、東日本の各地で河川の氾濫や土砂災害を引き起こし、歴史的な大災害となったのは記憶に新しいところです。

寒さとのダブルパンチで避難生活も過酷に

さらに、11月という時期が、災害をより深刻にします。もし大雨によって浸水被害や停電が発生した場合、夏の暑さとは違う「寒さ」が被災者を襲います。

• 低体温症のリスク：濡れた衣服のまま過ごしたり、暖房が使えなくなったりすると、低体温症に陥る危険性が高まります。
• 避難所の環境：避難所生活でも、床からの冷えや暖房器具の不足など、寒さ対策が大きな課題となります。
• 感染症の流行：空気が乾燥し、気温が下がる季節は、インフルエンザなどの感染症が流行しやすくなります。避難所での集団生活は、そのリスクをさらに高める可能性があります。

このように、11月の台風は「暴風雨」だけでなく、「前線の活発化による広範囲の豪雨」と「寒さ」という、夏場とは質の異なる複合的なリスクを伴うのです。

> 【プロならこう見る！意外な発見】

> 気象予報士として台風を分析する際、私たちは台風の雲の動きだけでなく、その周囲にある「湿舌（しつぜつ）」と呼ばれる湿った空気の流れを非常に重視します。特に秋は、この湿舌がどこに流れ込むかで、雨の降る場所や強さが劇的に変わります。台風本体よりも、この湿舌が秋雨前線に流れ込むライン上の地域で、線状降水帯が発生し、局地的に猛烈な雨が降ることがあります。天気図を見るときは、ぜひ低気圧や前線だけでなく、そこに向かって流れ込む空気の道筋もイメージしてみてください。それができるようになると、ニュースの解説がより深く理解できるようになりますよ。

【理由4】地球温暖化で台風は「少数精鋭化」？将来のリスクはどうなる

「最近、毎年『観測史上最大級』って聞く気がするけど、これって地球温暖化のせい？」

多くの人が抱くこの疑問。11月の台風を考える上でも、地球温暖化との関係は避けて通れないテーマです。結論から言うと、専門家の間では「温暖化によって台風の発生数自体は減るかもしれないが、一度発生するとより強力になる（少数精鋭化する）可能性が高い」と考えられています。

温暖化が台風に与える影響とは

地球温暖化が台風の性質をどう変えるのか、主なポイントを整理してみましょう。

影響	内容	なぜそうなるのか
発生数	全体的には減少する傾向	温暖化すると、海面だけでなく上空の温度も上昇します。大気全体が温まると、上下の温度差が小さくなり、空気が安定します。これにより、台風の卵である積乱雲が発生しにくくなると考えられています。
強度	より強く、猛烈な台風の割合が増加する可能性	台風のエネルギー源は水蒸気です。海水温が上昇すると、海から供給される水蒸気の量が格段に増えます。 より多くのエネルギーを得ることで、台風はより強い勢力にまで発達しやすくなります。
降水量	1つの台風がもたらす雨の量は増加する傾向	気温が1℃上昇すると、空気中に含むことができる水蒸気の量は約7%増加すると言われています。台風周辺の空気により多くの水蒸気が含まれるため、結果として降る雨の量も多くなります。
発生時期	台風シーズンが長期化する可能性	海水温が高い期間が長くなることで、春先の早い時期や、11月以降の遅い時期でも、台風が発生・発達しやすい条件が整う期間が延びる可能性があります。

*出典：複数の気象研究機関の報告を基に作成*

つまり、将来的には「台風の当たり年・外れ年」の差が大きくなり、一度来れば甚大な被害をもたらす「スーパー台風」のような存在が、11月を含めたシーズン終盤でも発生するリスクが高まるかもしれない、ということです。

「まだ結論は出ていない」という事実も知っておく

ただし、地球温暖化と台風の関係については、まだ研究途上の部分も多く、全ての専門家が同じ見解を持っているわけではありません。

• 観測期間の短さ：信頼できる台風のデータは、気象衛星による観測が本格化した1970年代後半以降のものであり、数十年のデータだけでは長期的な変化の傾向を断定するのは難しい、という意見もあります。
• 他の要因の複雑さ：台風の発達には、海水温だけでなく、上空の風の強さ（鉛直シア）や大気中のチリの量など、様々な要因が複雑に絡み合っています。 温暖化がこれらの要因にどう影響を与えるかについては、まだ完全には解明されていません。
• シミュレーションの限界：将来の台風を予測するコンピュータシミュレーション（気候モデル）の精度も、まだ発展途上です。

とはいえ、近年の台風が激甚化しているという「体感」や、多くの研究が示す「将来のリスク」を考えれば、私たちが温暖化対策を進めると同時に、これまで以上に強力な台風への備えを強化していく必要があることは間違いありません。

【理由5】忘れてはいけない過去の記録！統計史上唯一、11月に上陸した台風

「11月に台風が発生するのはわかったけど、実際に日本まで来たことなんてあるの？」

はい、あります。そして、それは気象庁が統計を取り始めた1951年以降、ただ一度だけという、非常に稀な記録として歴史に刻まれています。

1990年 台風28号（ペイジ）- 最も遅い上陸記録

その台風の名は、1990年（平成2年）の台風28号（国際名：ペイジ）です。

この台風が、いかに異例の存在だったかを見ていきましょう。

項目	詳細
発生	1990年11月22日、マリアナ諸島の南で発生
最盛期	11月27日、フィリピンの東海上で中心気圧910hPaの猛烈な勢力に
日本への影響	11月29日に沖縄の大東島地方を暴風域に巻き込む
上陸	1990年11月30日 14時ごろ、和歌山県白浜町の南に上陸
上陸時の勢力	中心気圧975hPa、最大風速30m/sの「大型」の勢力
その後	同日21時に東海地方で温帯低気圧に変わる

*出典：Wikipedia「平成2年台風第28号」などの情報を基に作成*

11月30日という、あと数時間で12月になろうかというタイミングでの上陸。 これは、それまでの最晩記録だった1967年台風34号（10月28日上陸）を1ヶ月以上も更新する、まさに前代未聞の出来事でした。

どんな被害があったのか？

「時期外れ」とはいえ、その爪痕は決して小さくありませんでした。

• 人的被害：死者・行方不明者4名、負傷者12名
• 住家被害：家屋の全半壊162棟など
• 記録的な風雨：
• 沖縄県南大東島で最大瞬間風速48.4m/s
• 高知県室戸岬で最大瞬間風速47.0m/s
• 三重県尾鷲市で総雨量409.5mmを記録

「もう台風は来ない」という油断があったところに、真冬のような寒さの中での台風襲来。当時の人々がいかに混乱し、大変な思いをしたか、想像に難くありません。この台風は、私たちに「台風シーズンに終わりはない」という強烈な教訓を残したのです。

統計開始以前にもあった？11月の上陸台風

公式な記録では1990年の台風28号が唯一ですが、統計が始まる1951年より前には、11月や、さらには12月に上陸したとされる台風の記録も存在します。

• 1892年11月24日：東海地方に上陸したとされる台風
• 1932年11月15日：房総半島に上陸したとされる台風（通称：七五三台風）
• 1894年12月10日：九州南部か房総半島に上陸したとされる台風（記録上最も遅い）

ただし、これらの古い記録は、現在の台風の定義とは基準が異なっていたり、上陸時には温帯低気圧に変わっていた可能性も指摘されたりしているため、公式な記録とはされていません。

それでも、これらの過去の記録は、「11月の台風は油断できない」という事実を裏付ける貴重な証拠と言えるでしょう。私たちは歴史から学び、たとえ確率が低くても「起こりうること」として備えを怠らない姿勢が重要です。

【実践編】「まさか」に備える！プロが教える秋の台風対策の新常識

ここまで、11月に台風が発生する理由と、その危険性について解説してきました。最後に、これらの知識を具体的な行動に移すための「実践的な防災対策」をご紹介します。秋の台風対策は、夏場とは少し異なるポイントがあります。

やりがちな失敗談：「もう寒いから大丈夫」という最大の油断

対策を学ぶ前に、最も多くの人が陥りがちな失敗、それは「季節感による油断」です。

• 「ベランダの植木鉢や物干し竿、夏の間は気をつけていたけど、もう飛ばされるような風は吹かないだろう」
• 「非常食の備蓄、夏に揃えたけど賞味期限はまだ先だし、わざわざ中身を見直さなくてもいいか」
• 「ハザードマップ？夏前に一度見たから大丈夫」

こうした小さな油断が、いざという時に「まさか」の結果を招きます。1990年の台風28号が教えてくれたように、台風はカレンダー通りにはやってきません。まずは「11月でも台風は来る可能性がある」という意識を、今日から持つことが全ての対策の第一歩です。

プロが実践する！秋の台風対策3つのポイント

夏の対策に加えて、秋ならではの視点を含めた3つのポイントを意識してください。

ポイント1：情報収集は「台風＋前線」でワンセット！

秋の台風では、台風本体の進路だけでなく、秋雨前線の位置を常に意識することが重要です。

• 気象庁のウェブサイトを活用：天気図を見て、台風だけでなく、日本列島に停滞する前線の有無を確認する癖をつけましょう。
• 危険度分布（キキクル）をチェック：気象庁の「キキクル」は、土砂災害や浸水害、洪水害の危険度を地図上で色分けして示してくれます。自分の住む地域が紫色や黒色になっていないか、こまめに確認しましょう。
• 自治体のハザードマップを再確認：台風が来る前に、自宅や職場が浸水想定区域や土砂災害警戒区域に入っていないか、避難場所はどこか、改めて確認しておきましょう。

ポイント2：家の外回りは「固定 or 収納」を徹底！＋「排水溝」の掃除

暴風対策の基本は夏と同じですが、秋は油断しがちな時期だからこそ、改めて徹底しましょう。

• 飛ばされやすいもの：植木鉢、物干し竿、ゴミ箱、自転車、子どものおもちゃなどは、家の中にしまうのが最も安全です。
• しまうのが難しいもの：プロパンガスボンベやエアコンの室外機などは、しっかりと固定されているか確認しましょう。
• 見落としがちなポイント「排水溝」：秋は落ち葉で排水溝や側溝が詰まりやすい季節です。 大雨が降った際に水が溢れ、思わぬ浸水被害につながることがあります。台風が接近する前に、必ず掃除をして水はけを良くしておきましょう。

ポイント3：備蓄品に「寒さ対策グッズ」をプラス！

万が一、停電や断水で避難生活を送ることになった場合、「寒さ」が大きな敵になります。夏場の備蓄品に、以下のアイテムを追加しておきましょう。

• 防寒具：フリース、ダウンジャケット、厚手の靴下、ニット帽、手袋など。電気を使わないものが基本です。
• 保温グッズ：カイロ（貼るタイプ、貼らないタイプ両方）、アルミ製の保温シート（エマージェンシーシート）。これらは軽量でかさばらないので、防災リュックに必ず入れておきましょう。
• 温かい食事：カセットコンロとガスボンベがあれば、温かい飲み物や食事がとれ、心も体も温まります。レトルトのおかゆやスープ、フリーズドライ食品なども便利です。
• 情報収集機器の電源確保：スマートフォンは重要な情報源です。大容量のモバイルバッテリーを複数用意し、常にフル充電しておくことを心がけましょう。

これらの対策は、決して特別なことではありません。しかし、この一手間をかけるかどうかが、あなたと家族の安全を大きく左右するのです。

まとめ：11月の台風を正しく知り、一年中「備え」のある暮らしを

この記事では、「11月に台風が発生する理由と過去の記録」について、多角的に深掘りしてきました。最後に、重要なポイントをもう一度確認しましょう。

• 11月に台風が発生する主な理由は、日本の南の海上の海水温がまだ高く、台風のエネルギー源となる水蒸気が十分に供給されるためです。決して異常気象ではありません。
• 秋の台風は、上空の偏西風に乗ってスピードを上げ、急接近する危険性があります。夏の台風と同じ感覚でいると、備えが間に合わない可能性があります。
• 秋雨前線を刺激し、台風の中心から離れた場所でも記録的な大雨を降らせることがあります。「台風＋前線」の複合災害に注意が必要です。
• 地球温暖化の影響で、将来的には台風がより強力になる（少数精鋭化する）可能性が指摘されています。
• 1990年には、統計史上唯一、11月30日に台風28号が和歌山県に上陸し、被害をもたらしたという紛れもない記録があります。

「台風は夏のもの」という思い込みを捨て、正しい知識を持つこと。それが、季節外れの災害から身を守るための最強の武器になります。

この記事を読んで「なるほど！」と感じた知識を、ぜひ今日からあなたの防災意識に加えてください。そして、ご家族や友人にも「11月の台風って、実はね…」と話してみてください。その小さな行動が、周りの大切な人の安全を守るきっかけになるかもしれません。

自然の力は、私たちのカレンダー通りには動いてくれません。一年を通して防災意識を高く持ち、変化に対応できる「備え」を整えておくこと。それが、これからの時代を安心して生き抜くための新しい常識です。

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