オルツ、上場廃止へ!2025年7月末に決定された衝撃の理由と今後の動向速報
はじめに
AI技術を駆使し、大きな注目を集めていた株式会社オルツが、2025年7月30日に日本取引所グループから上場廃止の決定を受けました。このニュースは、多くの投資家や関係者に衝撃を与えています。上場廃止の理由は、新規上場申請に係る宣誓書における重大な違反、具体的には売上高の過大計上が判明したためです。本記事では、このオルツの上場廃止に関する最新の動向を詳しく解説し、今後の展望についても考察していきます。
オルツ上場廃止の決定と整理銘柄指定
2025年7月30日、株式会社オルツは東京証券取引所グロース市場において、上場廃止が決定され、整理銘柄に指定されました。整理銘柄の指定期間は2025年7月30日から2025年8月30日までとなっており、上場廃止日は2025年8月31日と発表されています。
この決定は、同社が新規上場申請時に提出した宣誓書に記載された事項について、重大な違反があったと認められたことによるものです。具体的には、有価証券上場規程第601条第1項第10号aに該当すると判断されました。
上場廃止の直接的な引き金:売上高の過大計上
オルツの上場廃止を決定づけた最も大きな要因は、長期間にわたる売上高の過大計上です。同社が2025年7月28日に開示した第三者委員会の調査報告書によると、2021年12月期から2024年12月期にかけて、売上高の大半(約8割~9割)が過大に計上されていたことが明らかになりました。
この不正は、同社の経営幹部が関与し、2021年6月頃から2025年3月までの間に行われていたとされています。特に、主力のAI議事録作成サービス「AI GIJIROKU」のライセンス販売において、実際にはアカウント発行の実態を伴わない売上計上をしていたことが判明しました。
この過大計上額は累計で約119億8,531万円にも上り、2024年12月期だけでも、決算短信に計上された売上高60億5,700万円のうち約49億8,347万円が過大計上の影響額であったとされています。 この巨額な不正は、新規上場申請書類の財務諸表に虚偽の情報が記載され、それによって上場承認を得ていたと判断されたため、極めて重大な違反と見なされました。
監理銘柄(審査中)指定から上場廃止までの経緯
オルツは、2025年4月25日に売上過剰計上の可能性を開示し、第三者委員会を設置して調査を進めていました。 この不正会計の可能性が報じられたことを受け、東京証券取引所は2025年7月25日付けで、オルツ株式を監理銘柄(審査中)に指定しました。
監理銘柄(審査中)とは、上場廃止基準に抵触する恐れがある場合に指定されるもので、有価証券報告書の虚偽記載などが疑われる企業に対して適用されます。 その後、第三者委員会の調査報告書が提出され、不正会計の実態が明らかになったことで、わずか数日で上場廃止の決定へと至りました。 この一連の迅速な対応は、投資家保護の観点から市場の信頼性を維持するための措置といえるでしょう。
経営陣の責任と辞任
一連の不正会計問題を受けて、オルツの経営陣にも大きな動きがありました。報告書が公開された2025年7月28日には、代表取締役社長であった米倉千貴氏が辞任し、後任として日置CFOが代表取締役社長を兼任することが発表されています。
しかし、一部の報道では、新代表の日置CFOも不正会計に関与していた可能性が指摘されており、その責任の所在についても議論が巻き起こっています。 第三者委員会の報告書では、不正会計の中心にいたのは経営幹部であるとされており、今後のさらなる調査や法的措置の行方が注目されます。
不正会計の手口と「AI GIJIROKU」をめぐる循環取引
オルツの不正会計の手口は、主力サービスである「AI GIJIROKU」をめぐる循環取引でした。第三者委員会の報告書によると、オルツは外部の販売パートナーに対して、実態を伴わない「AI GIJIROKU」のライセンス売上を計上し、その後に同パートナーに対して広告宣伝費や研究開発費などの名目で資金を還流させていたことが明らかになっています。
これにより、実際のキャッシュフローを伴わない架空の取引によって売上が水増しされ、財務諸表が粉飾されていたのです。このスキームによって、2021年度の売上高の78%、2022年度と2023年度にはそれぞれ91%、そして2024年度には82%が過大に計上されていたとされています。
不正の予兆と監査法人の責任
わずか2024年10月に東証グロース市場に上場したばかりのオルツで、わずか半年後にこのような重大な不正が発覚したことは、市場関係者に大きな衝撃を与えました。 上場前から不正の予兆があったのではないか、という指摘も上がっています。
また、オルツの監査を担当していた監査法人シドーについても、その責任が問われています。上場実績が少ない中堅の監査法人であったことや、売上の大半を占める「AI GIJIROKU」の導入実態について十分な検証が行われた形跡が見当たらないことから、「審査コストを抑えた“格安監査”で不正を見落としたのでは」という声も聞かれます。 主幹事証券会社であるSBI証券の責任も問われる可能性があります。
オルツ上場廃止が市場に与える影響
オルツの上場廃止は、同社だけでなく、日本の株式市場全体、特に成長企業が集まるグロース市場に与える影響は大きいと考えられます。
投資家への影響と今後の株価動向
上場廃止が決定されたオルツの株式は、2025年7月30日から8月30日まで整理銘柄に指定されます。この期間中、株価は大きく変動し、実質的に売りが殺到する可能性があります。実際に、2025年7月28日には、上場廃止の発表を受けてオルツの株価はストップ安を記録しました。
投資家にとっては、保有株式の価値が大きく毀損される事態となります。上場廃止後は、証券取引所での売買ができなくなるため、市場外での取引や、会社がMBO(マネジメント・バイアウト)などで株式を買い取るケースなどを除けば、流動性が極めて低くなります。個人投資家の中には、わずかな望みをかけて56円でオルツ株を購入したという声も聞かれましたが、時価総額20億円に対してネットキャッシュ30億円という評価差に期待を抱いていたようです。しかし、現実は厳しい状況です。
AI関連銘柄への影響
オルツは、AI技術を強みとするスタートアップとして注目を集めていました。今回の不正会計による上場廃止は、AI関連銘柄全体に対する投資家の信頼感を一時的に揺るがす可能性があります。特に、新興のAIスタートアップ企業に対する審査の目が厳しくなることも予想されます。
しかし、AI技術そのものの成長性や重要性が変わるわけではありません。今回の件は、個社のガバナンス問題であり、業界全体の健全な発展のためには、不正を許さない市場環境がより一層求められるでしょう。
今後のオルツの対応と再発防止策
オルツは今後、第三者委員会の報告内容を踏まえ、該当する決算の訂正、有価証券報告書の再提出、そして再発防止策の策定を進める方針です。 また、社内では経営責任の所在についても検討が進められており、元代表取締役やCFOなどの処分も含めた対応が取られる可能性があると報じられています。
再発防止策としては、内部統制の強化、会計処理プロセスの透明化、従業員のコンプライアンス意識向上などが挙げられます。信頼を失った企業が再生するためには、徹底した原因究明と、それを市場に示せる具体的な改善策の実行が不可欠となります。
まとめ
2025年7月30日に決定された株式会社オルツの上場廃止は、新規上場申請時の虚偽記載、特に売上高の巨額な過大計上が原因でした。2021年12月期から2024年12月期にかけて、主力の「AI GIJIROKU」を巡る循環取引により、売上高の最大9割が不正に計上されていたという衝撃的な内容が、第三者委員会の調査報告書によって明らかになりました。
この不正は、わずか上場から半年という短期間で発覚し、市場に大きな動揺を与えました。東京証券取引所は、2025年7月25日に監理銘柄(審査中)に指定した後、速やかに上場廃止を決定し、2025年8月31日をもって上場廃止となることが決定しました。
オルツは今後、決算の訂正や再発防止策の策定に努めることになりますが、失われた信頼を取り戻す道のりは険しいでしょう。今回の件は、上場企業のガバナンスと内部統制の重要性を改めて浮き彫りにするとともに、投資家が企業情報をより慎重に評価することの重要性を示しています。AI関連市場の健全な発展のためにも、今回のオルツの事案から得られる教訓は非常に大きいと言えます。