コンゴで流行する原因不明の病気とは?症状・原因・予防策を解説
2024年10月下旬、コンゴ民主共和国で原因不明の病気が発生し、多数の死者が出ているというニュースが報道されました。インフルエンザに似た症状を呈するものの、原因は特定されていませんでした。WHOも調査に乗り出しており、世界的な関心を集めています。この記事では、コンゴで流行している原因不明の病気について、現在までに分かっている情報に基づき、症状や原因、予防策などを詳しく解説します。
コンゴで流行する原因不明の病気の現状
病気の症状
報告されている主な症状は、発熱、頭痛、咳、呼吸困難などです。インフルエンザに似た症状ですが、コロナウイルスではないことが確認されています。
潜伏期間
潜伏期間は1~21日です。
感染経路
感染経路については、まだ解明されていません。しかし、コンゴのクワンゴ州ケンゲでは、エムポックスの性的感染の疑いのある最初のクラスターが確認されました。確定例は男性5例と女性1例の計6例で、死亡例はありませんでした。最初の確定例は、コンゴにゆかりのあるベルギー在住の男性で、2023年3月15日にキンシャサに到着し、同日から肛門のかゆみと不快感を感じ始めました。
発生地域
コンゴ民主共和国南西部のクワンゴ州パンジ保健区域で発生しています。首都キンシャサから400キロ離れた地域です。2023年には、キンシャサ、ルアラバ、南キヴなど、これまで症例報告がなかった地域で新たな症例が発生しています。
感染者数
WHOの発表によると、2024年10月24日から12月5日までに406件の疾患が報告されています。
死亡者数
WHOの発表によると、同期間に31人が死亡しています。しかし、医療施設で確認された死者は27人で、さらに44人の死亡が報告されていますが、これには他の原因が関係している可能性があります。
年齢層
この病気は特に若年層に広がっており、初期データによると、患者の40%が5歳未満です。
医療体制
パンジ保健区域では、医療資源が限られており、清潔な飲料水や医薬品へのアクセスも限られています。
社会経済状況
コンゴ民主共和国では、電気、上下水道などライフラインの恩恵を十分に受けられるのは富裕層居住区にほぼ限られています。電力はコンゴ川下流のインガダムの水力発電によって供給されているものの、設備の老朽化と整備不良から頻繁に停電を余儀なくされるため、住宅やホテルは発電機を備え付けている所を選択する必要があります。水道インフラも脆弱でしばしば断水し、時として変色した水しか出ない状態となることから、水の取り置き、ミネラルウォーターの備蓄が欠かせず、浄水器の使用が必要です。
治療法
現時点では、この病気に対する特別な治療法は見つかっていません。対症療法が行われています。
予防策
コンゴ民主共和国保健・衛生・社会福祉省は、以下の予防措置を呼びかけています。
- 大勢で集まることを避ける
- 疑わしい例や異常な死亡例を各地域保健当局に報告する
- 石鹸と水でこまめに手洗いをする
- 認可を受けた医療機関の介入なしに遺体を扱わない
原因究明に向けた取り組み
コンゴ民主共和国保健当局は、WHOの支援を受け、原因究明のための調査を行っています。専門家がサンプル調査を進めており、さらなる情報が待たれます。公開されているデータでは、この新しい変異が南キヴ州で発生したのか、コンゴ民主共和国の他の検体数の少ない地域で発生したのか、あるいはコンゴ盆地一帯で発生したのかは不明です。この新しい系統の起源をよりよく理解し、コンゴ民主共和国で流行しているすべてのウイルスをよりよく理解するためには、コンゴ民主共和国全土およびコンゴ盆地一帯からの更なる遺伝子情報が必要です。
国際機関の支援状況
WHOは現地にチームを派遣し、コンゴ政府と協力して原因の究明に当たっています。また、検査のためのサンプル収集を行っています。AAR Japan[難民を助ける会]は、ウガンダにおいて、コンゴからの難民の学習支援を行っています。
専門家の意見
専門家は、この病気が呼吸器系に影響を与えるものであると断定していましたが、コロナウイルスの可能性は排除していました。また、この地域に広がる栄養失調が、病気に対する抵抗力を低下させている可能性も指摘されています。
最新の情報や状況の変化
コンゴ民主共和国保健省は、原因不明の病気が重症のマラリアであると発表しました。2023年には、コンゴ民主共和国でクレードIによる過去最大の感染者数と死亡者数が報告されました。2024年7月以降、クレードIに属するウイルス(クレードIb)が、それまで感染の報告がなかった常在地域の東側の国々に広がり始めており、アフリカ大陸での人の往来によって、国境を越えた感染が広がることが危惧されています。
まとめ
コンゴ民主共和国で発生した原因不明の病気は、重症のマラリアであることが判明しました。しかし、感染経路や詳しい症状など、まだ不明な点が多く残されています。原因究明に向けた取り組みでは、この病気がエムポックスの新しい変異株である可能性も示唆されており、公衆衛生上の観点からも更なる研究と国際協力が重要となります。
また、今回の流行は、栄養失調や医療へのアクセス制限など、コンゴ民主共和国が抱える社会的な問題を浮き彫りにしました。これらの根本的な問題に対処するための包括的な公衆衛生対策が必要とされています。
WHOやコンゴ政府は引き続き調査を進めており、今後の情報に注意が必要です。