高校授業料無償化に関する報道と議論の現状
高校授業料無償化に向けた与党の提案
自民党と公明党は、日本維新の会に対し、高校授業料の無償化に向けて、就学支援金の所得制限を2025年4月から撤廃する方向で調整していることを伝えました。現在の就学支援金制度では、年収910万円未満の世帯の子を対象に年間11万8800円(私立高校は年収590万円未満の世帯の子を対象に年間39万6000円)を上限として学校設置者に支援金が支給されています。自民・公明両党は、この年間11万8800円については公立・私立を問わず一律で支援するとともに、無償化をさらに進めるため追加支援の協議を継続したいとしています。 また、教員の働き方改革の推進など、教育の質の充実に向けた予算措置も検討していることを伝えています。維新の会は、与党の提案を受けて対応を協議することとしています。この提案により、公立高校は実質無償化されますが、私立高校の完全無償化を目指す維新の会は「不十分だ」と反発しており、協議は継続されます。
関係者の意見と懸念
楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は、自身のX(旧Twitter)で「マジで私立高校まで無料化する意味がわからん」と投稿し、私立高校を含む所得制限のない高校授業料の無償化に疑問を呈しました。「なんでも無償化や補助金をばら撒けばよいというものではない」と述べ、無償化や補助金は将来国民が負担する税金であること、無責任なばら撒きによって日本の国際競争力が低下する懸念を表明しました。さらに、私立高校の無償化は私立高校の自律性や差別化をなくすと指摘し、維新の会にも批判的な見解を示しました。 一方、TBS NEWS DIGの2月JNN世論調査では、所得制限なしの高校授業料無償化に「賛成」が65%、「反対」が28%という結果が出ています。 この結果や三木谷氏の発言は、高校授業料無償化に対する世論の複雑な様相を示唆しています。
地方自治体の対応と財源問題
東京都は2024年度から所得制限を撤廃し、公立・私立高校を問わず実質無償化しました。 しかし、神奈川県、埼玉県、千葉県の知事は、東京都の施策について懸念を示しています。 神奈川県の黒岩知事や横浜市の中山市長は、教育格差の問題を指摘し、国による対応の必要性を訴えています。 埼玉県の大野知事は、無償化は国が全国一律で実施すべきであり、自治体間の不均衡を懸念、東京都との差を解消するためには国による税制の是正措置が必要だと主張しました。千葉県の熊谷知事も、財源の格差を指摘し、住む地域による教育格差解消のため、国の責任による全国一律の子育て支援策を求めています。東京都の小池知事は、高校授業料の実質無償化は国が責任を持つべきであり、地方交付税を含む地方税財源の充実を国に強く求めるべきだと述べています。 九都県市首脳会議では、子どもに関する施策の地域格差解消のため、国の責任と財源による無償化を要望することが決定しました。
大阪府における私立高校授業料無償化の現状
大阪府では、府在住の子供たちを対象とした「私立高等学校等授業料無償化制度」が進められており、開智中学校・高等学校など複数の学校が「就学支援推進校」として承認されています。この制度は、小学6年生(高校1年時から対象)や中学3年生(高校2年時から対象)にも適用されます。
自民党による高校授業料無償化の問題点指摘(2010年時点)
2010年の時点では、自由民主党は民主党による高校授業料無償化法案に反対の立場をとっていました。その理由として、理念なきバラマキ政策であること、所得制限のない無償化は過度の平等主義・均一主義であり、私立学校に通う生徒との不平等を拡大すること、支給対象の整合性(外国人学校への支給、朝鮮学校への支給)に問題があること、地方自治体に大きな負担がかかることなどを挙げています。自民党は、「自助」「共助」「公助」の精神に基づき、限られた財源で実質的な平等を確保することを主張していました。
大阪維新の改革と公立高校の現状
ダイヤモンド・オンラインの記事では、大阪維新の教育改革の副作用として、私立高校授業料無償化によって公立高校の定員割れが深刻化し、公立高校がセーフティネットとしての機能を失いつつある現状が指摘されています。2024年度の入試では、公立高校の約半数が定員割れに陥ったと報告されています。 これは、私立高校への生徒流入と、小規模公立高校の再編整備による閉校が原因として挙げられています。