2025年最新速報!熱中症警戒アラートと特別警戒アラートの全貌
はじめに
2025年の夏も、日本列島は熱中症の脅威に直面しています。近年、地球温暖化の影響により、国内の気温は上昇の一途をたどり、それに伴い熱中症による健康被害が深刻化しています。熱中症は、もはや夏場の単なる体調不良ではなく、年間千人を超える死亡者数を記録する自然災害をはるかに上回る重大な健康リスクとして認識されています。このような状況を受け、環境省と気象庁は国民の命を守るため、熱中症への「気づき」を促し、効果的な予防行動を促すべく、強力な情報発信ツールとして「熱中症警戒アラート」および「熱中症特別警戒アラート」の運用を強化しています。本記事では、2025年の最新の運用状況、記録的な猛暑の実態、そして進化する熱中症対策の最前線について、詳しく解説してまいります。私たち一人ひとりが熱中症のリスクを正しく理解し、適切な予防行動をとることが、この夏を安全に乗り切るための鍵となるでしょう。
2025年夏の熱中症警戒アラート運用開始と「特別警戒アラート」の本格化
2025年、熱中症対策は新たな段階へと移行し、国民への警戒呼びかけがより一層強化されています。環境省と気象庁は、令和7年4月23日(水)から10月22日(水)までの期間、全国を対象に「熱中症警戒アラート」および「熱中症特別警戒アラート」の運用を本格的に開始しました。
熱中症警戒アラートの基本的な役割
「熱中症警戒アラート」は、熱中症の危険性が極めて高い暑熱環境が予測される場合に、国民の皆様に暑さへの「気づき」を呼びかけ、熱中症予防行動を効果的に促すことを目的としています。 このアラートは、全国を58に分けた府県予報区等を単位として発表されます。例えば、東京都の情報については、東京地方、伊豆諸島、小笠原諸島のいずれか、または組み合わせを対象として警戒が呼びかけられます。 発表の基準は、「暑さ指数(WBGT)」が33以上と予測された場合です。 暑さ指数は、気温、湿度、輻射熱(日差しなど)の3つの要素を取り入れた、暑さの厳しさを示す国際的な指標であり、熱中症の発症リスクとの関連性が高いとされています。 アラートは通常、前日の17時頃と当日の5時頃の1日2回、最新の予測値に基づいて発表されます。 これにより、住民は前もって、あるいは当日の朝に、その日の熱中症リスクを把握し、適切な行動計画を立てることが可能になります。
熱中症特別警戒アラート:一段上の警戒レベル
2024年4月からは、熱中症対策がさらに強化され、新たに「熱中症特別警戒アラート」が創設され、運用が始まりました。 この特別警戒アラートは、2023年に改正された「気候変動適応法」において「熱中症特別警戒情報」として法律に位置づけられたものです。
「熱中症特別警戒アラート」は、気温が特に著しく高くなることにより、熱中症による重大な健康被害が生じるおそれのある場合に発表されます。 その基準は、都道府県内全ての地点で暑さ指数(WBGT)が35を超える場合に発表されるとされています。 これは、過去に例のない広域的な危険な暑さとなり、人の健康にかかわる重大な被害が生じる恐れがある状況を指します。 環境省と気象庁は、この特別警戒アラートが発表された地域では、自発的な熱中症予防行動を積極的に行うことに加え、家族や周囲の人々による見守りや声かけといった「共助」、そして行政による「公助」の行動をとることを強く促しています。
WBGT(暑さ指数)の詳細と行動の目安
熱中症警戒アラート、そして特別警戒アラートの発表基準となるWBGT(湿球黒球温度:Wet Bulb Globe Temperature)は、単なる気温だけでなく、湿度、日射・輻射熱といった、人体と外気との熱のやりとりに大きく影響する要素を複合的に評価する指標です。
具体的には、WBGTは以下のような目安で熱中症の危険性を示します。
* **35以上:熱中症特別警戒アラート発表基準**
* 都道府県内すべての地点で35を超える場合。極めて危険なレベルです。
* **33以上:熱中症警戒アラート発表基準**
* 府県予報区内どこかの地点で33を超える場合。高齢者にとっては安静状態でも熱中症発生の危険性が大きいレベルです。外出はなるべく避け、涼しい室内に移動し、運動は原則中止すべきです。
* **31以上33未満:「危険」**
* すべての生活活動で熱中症が起こる危険性があります。
* **28以上31未満:「厳重警戒」**
* 外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意が必要です。激しい運動は中止すべきです。
* **25以上28未満:「警戒」**
* 中等度以上の生活活動で熱中症の危険性があります。運動や激しい作業をする際は定期的に十分な休息を取り入れることが重要です。
職場での熱中症予防においては、WBGTの数値だけでなく、作業の強度や個人の暑さへの慣れ(暑熱順化)も考慮する必要があります。例えば、WBGTが低い数値であっても、激しい運動や作業を行う場合や、暑さに慣れていない新人の方などは、WBGT値が20程度でも熱中症のリスクが高まることが指摘されています。 このように、WBGTは熱中症対策の非常に有効な指標であり、その数値を意識した行動変容が強く求められています。環境省の「熱中症予防情報サイト」では、全国約840地点の暑さ指数(WBGT)の実況値や予測値が提供されており、日々の行動の目安として活用することが推奨されています。
記録的な猛暑と救急搬送状況:2024年・2025年の動向
近年の日本は、地球温暖化の影響を色濃く受けており、記録的な猛暑が常態化しつつあります。この猛烈な暑さは、熱中症による健康被害を一層深刻化させており、その実態は統計データにも明確に表れています。
2025年夏の猛暑、各地で記録を更新
2025年夏も、各地で危険な暑さが続いています。直近のニュースでは、7月23日には「熱中症警戒アラート」が全国で今年最多となる32都道府県に発表されるという異例の事態となりました。 特に、これまで比較的涼しいとされてきた北海道でも、観測史上初めてとなる40℃の最高気温が予想される地域(美幌町や中標津町)が出るなど、全国的な猛暑の傾向が顕著です。 同日には、北海道内で少なくとも56人が熱中症の疑いで病院に搬送されたと報じられており、地域を問わず熱中症リスクが高まっていることが浮き彫りになっています。
さらに、7月26日には強烈な日差しと暖気の影響で、東北地方でも記録的な暑さが観測されました。福島県伊達市梁川では全国で今年最も暑い39.9℃を記録し、福島市でも観測史上1位となる39.2℃に達しました。宮城県仙台市では、観測史上最長となる6日連続猛暑日を更新し、36.4℃を観測しています。 猛暑日(最高気温35℃以上)は全国で244地点となり、6日連続で200地点を超え、真夏日(最高気温30℃以上)は全国で641地点に達しています。
7月28日現在も、関東から九州の28都府県に対し「熱中症警戒アラート」が発表されており、東京都や京都府、埼玉県、長野県などで高いリスクが続いています。 埼玉県では、寄居、熊谷、久喜、秩父、鳩山、さいたま、越谷、所沢で暑さ指数(WBGT)が31〜33と予測され、特に久喜、鳩山、さいたま、越谷ではWBGT33とアラート基準に達しています。 各地の予想最高気温も熊谷38度、さいたま37度、秩父36度など、体温に迫る危険な暑さが見込まれています。 日本気象協会は、7月から8月にかけて北陸から沖縄で「厳重警戒」、所々で「危険」ランクとなる予測を発表しており、特に東海地方では8月に愛知県と岐阜県で「危険」ランクになる可能性を指摘しています。 8月に入っても、東海や西日本の内陸部を中心に40℃以上が予想される地点も複数あり、大分県日田市では3日連続で40℃以上となる見込みなど、過酷な暑さが続くことが予測されています。
過去の救急搬送と死亡者数の推移
熱中症による救急搬送者数および死亡者数は、近年、高い水準で推移しており、その増加傾向は深刻さを増しています。総務省消防庁のデータによると、2024年5月から9月における熱中症での救急搬送者数は全国で9万7578名に達し、これは2008年の調査開始以降で「最も多い搬送人員数」となりました。 このうち、死亡者は120名、3週間以上の入院が必要な重症者は2178名でした。 2024年7月29日~8月4日の一週間だけでも、全国で1万2272名が熱中症で救急搬送されており、これは夏の期間を通じて非常に高い水準で推移しています。
職場における熱中症の状況も看過できません。厚生労働省のまとめによると、職場における熱中症による死傷者数(休業4日以上の業務上疾病者数)は、2023年に1,106人となり、前年の827人から279人増加しました。 そして2024年には、死傷者数が1,257人と、統計を取り始めた2005年以降で最多を記録しています。 死亡者数も2023年は31人、2024年も31人と、高止まりの状況が続いています。
熱中症の発生時期は圧倒的に7月と8月に集中しており、2024年の職場での死傷者数の約8割がこの2ヶ月間に集中していました。 死亡者数も同様に、ほとんどが7月または8月に発生しています。
業種別に見ると、過去5年間(2019年以降)の合計では、「建設業」が死傷者数886人、死亡者数54人で最も多く、次いで「製造業」が死傷者数846人、死亡者数18人と続いています。 2024年単年で見ても、製造業が235人、建設業が228人と多く、死亡者数では建設業が10人、製造業が5人と、これら2業種で死傷者数の約4割、死亡者数の約5割から6割を占めています。
年齢別では、高齢者層のリスクが特に高く、2019年以降の5年間の合計で「65歳以上」が674人で最も多くの死傷者を出しています。 日最高気温が高くなるにつれて発生率は上昇しますが、特に35℃を超える日には高齢者での発生率が顕著であり、高齢者へのきめ細やかな熱中症予防対策が重要であると指摘されています。
気候変動と熱中症リスクの将来予測
国立環境研究所の分析によると、地球温暖化による気温上昇に伴い、熱中症患者は増加傾向にあります。将来予測に関する研究では、2031年から2050年の熱中症リスク(全国合計搬送者数)が、現在の期間(1981~2000年)と比較して約1.3~3.3倍に増加すると示されています。 また、熱ストレスによる超過死亡数は、将来のどのシナリオにおいても、すべての都道府県で2倍以上になると予測されています。 これらのデータは、熱中症が一時的な現象ではなく、気候変動が進行する中で、長期的に対策を強化していく必要があることを強く示唆しています。
熱中症予防の最前線:WBGTと最新テクノロジーの活用
熱中症のリスクが高まる中、予防策も日々進化しています。特に、WBGT(暑さ指数)の適切な理解と、最新のテクノロジーを活用した予防策が注目されています。
WBGT(暑さ指数)を日々の行動に活かす
WBGTは、熱中症予防のための国際的な指標であり、気温、湿度、そして日差しや地面からの輻射熱といった要素を総合的に評価します。 熱中症は、単に気温が高いだけでなく、湿度が高い環境や日差しの強い場所で発生しやすいという特性を考慮した指標であり、WBGTが高いほど熱中症のリスクは高まります。環境省の「熱中症予防情報サイト」では、全国のWBGTの予測値や実況値が提供されており、これを確認することで、その日の熱中症リスクを把握し、適切な行動をとることが可能です。
WBGTが31以上は「危険」、28以上31未満は「厳重警戒」、25以上28未満は「警戒」とされ、それぞれに応じた行動の目安が示されています。 例えば、「厳重警戒」レベルでは、外出時の炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意すること、また激しい運動は中止することが呼びかけられています。
熱中症予防における最新テクノロジーの導入
近年の技術革新は、熱中症予防にも大きな効果をもたらしています。従来の対策に加え、リアルタイムなデータ収集や自動解析、AIによる予測機能など、現場の安全管理を大幅に向上させるツールが注目されています。
1. **ウェアラブルデバイスの活用:**
スマートウォッチやフィットネストラッカーなどのウェアラブルデバイスは、熱中症対策において非常に有効なツールとして注目されています。 これらのデバイスは、体温、心拍数、汗の量などをリアルタイムで測定し、個人の体調変化を早期に察知することを可能にします。 異常が検知された際にはアラートを発する機能も搭載されており、緊急時に迅速な対応を促すことができます。 特に、高齢者や子供、または工場や建設現場などの作業者にとって、ウェアラブルデバイスは体調管理の大きな助けとなり、熱中症の予防だけでなく、発症時の早期対応にも貢献します。 東芝が開発した「暑さストレス推定」技術では、リストバンドで取得した生体情報に加え、運動習慣や既往歴などの発症リスク因子を考慮することで、高精度に暑さストレスを推定し、早期の予防対策を促すことが可能です。
2. **スマートホーム技術とIoTセンサー:**
スマートホーム技術の活用により、室内の温度や湿度を自動で調整し、快適な環境を維持することが可能になっています。スマートエアコンやサーモスタットは、外部の気温や湿度を感知して自動で室内環境を調整し、暑さによるストレスを軽減します。
また、局所的な熱中症リスクをより正確に把握するためのIoTセンサーの導入も進んでいます。例えば、建設現場や学校などで活用が広がる小型の気象IoTセンサー「ソラテナPro」は、都道府県単位で発表される熱中症警戒アラートだけでは把握しにくい、特定の場所の熱中症リスクをリアルタイムでモニタリングできます。 これにより、現場の状況に応じたきめ細やかな対策が可能となり、より精度の高い熱中症予防が期待されています。このシステムは、日本で初めて補完観測の予報業務利用の承認を取得しており、設置地点の暑さ指数予測も可能になる見込みです。
3. **デジタル技術によるデータ分析とAI予測:**
工場などの現場では、デジタル技術を活用した熱中症予防が進められています。工場内の換気状態や製造工程での熱源、さらには作業内容による作業者の動きなど、熱中症リスクを高める多様な要素をデジタルで管理・分析します。 過去の熱中症発生データや環境データを蓄積し分析することで、特定の時間帯や作業エリアにおけるリスク傾向を把握し、予防対策の強化に役立てることができます。 AIによる予測機能を活用することで、より効率的かつ的確な熱中症予防が可能となり、従業員の健康維持と生産性の向上に大きく寄与しています。
4. **専用アプリによる健康管理:**
スマートフォンアプリを活用することで、個々の健康状態や環境に応じた熱中症対策を簡単かつ効率的に実行できます。 アプリは、暑さ指数情報や個人の健康データに基づいて、水分補給のタイミングや休憩の必要性を通知するなど、日常的な熱中症予防行動をサポートします。
これらの最新テクノロジーは、熱中症予防の「見える化」を促進し、個人レベルから組織レベルまで、より積極的かつ効果的な対策の実施を可能にしています。
気候変動時代の熱中症対策:法改正と社会全体の取り組み
熱中症による健康被害が年々拡大する中で、日本は気候変動に適応するための法整備と、社会全体での多角的な取り組みを強化しています。これは、熱中症が単なる個人の問題ではなく、社会全体で取り組むべき喫緊の課題であるという認識の表れです。
改正気候変動適応法による対策強化
2023年4月に改正され、2024年4月に全面施行された「気候変動適応法」は、熱中症対策を一層推進するための重要な法的基盤となりました。 この改正法では、主に以下の点が強化されました。
1. **「熱中症対策実行計画」の法定化:**
これまで法律上の位置づけがなかった政府の熱中症に関する計画が、「熱中症対策実行計画」として法定の閣議決定計画に格上げされました。 これにより、関係府省庁間の連携が強化され、政府一体となった熱中症対策が推進されることになりました。
2. **「熱中症警戒情報」の法律上の位置づけと「熱中症特別警戒情報」の創設:**
従前から運用されてきた「熱中症警戒アラート」が「熱中症警戒情報」として法律に位置づけられました。 さらに、気温が特に著しく高くなり、熱中症による重大な健康被害が生じるおそれのある場合に発表される、一段上の警戒情報として「熱中症特別警戒情報」(通称:熱中症特別警戒アラート)が新たに創設されました。 これは、広域的に過去に例のない危険な暑さとなる状況に備え、国民の命を守るための強力なシグナルとなります。
3. **指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)の設置促進:**
公民館や図書館など、冷房設備を有する施設が「指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)」として市町村により指定できるようになりました。 これにより、自宅に冷房がない、または適切に使用できない人々が、安全に涼むことができる場所が確保されます。 2025年4月には、環境省が「熱中症予防強化キャンペーン」の一環として、これらの施設の利用を促す広報活動も展開しています。
4. **「熱中症対策普及団体」の指定:**
市町村長が熱中症対策の普及啓発に取り組む民間団体などを「熱中症対策普及団体」として指定できる制度も導入されました。 これにより、地域の実情に合わせた声かけ活動など、高齢者などの熱中症弱者への予防行動の徹底が期待されています。
社会全体で取り組む熱中症予防
熱中症対策は、行政や専門機関だけでなく、企業、学校、地域コミュニティ、そして私たち一人ひとりが連携して取り組むことが不可欠です。
1. **「熱中症予防強化キャンペーン」の展開:**
政府は、4月1日から9月30日までの期間を「熱中症予防強化キャンペーン」と位置づけ、政府一体となって時季に応じた適切な熱中症予防行動の呼びかけ、効果的な普及啓発、イベント開催などの広報活動を実施しています。 このキャンペーンでは、暑さ指数や熱中症警戒アラート、特別警戒アラートの活用を促し、エアコンの適切な利用、こまめな水分・塩分補給などの予防行動、そして高齢者や乳幼児といったリスクの高い人々への見守りや声かけの重要性を強調しています。
2. **個人・共助・公助の連携:**
熱中症特別警戒アラートが発表された地域では、自発的な熱中症予防行動はもちろんのこと、家族や周囲の人々による見守りや声かけといった「共助」、そして行政による「公助」の行動が求められています。 例えば、高齢者は体温調節機能が低下しやすく、暑さや喉の渇きを感じにくい傾向があるため、周囲が意識的に声かけを行い、水分補給や涼しい場所への移動を促すことが極めて重要です。
3. **職場・学校における対策の徹底:**
職場の管理者や学校の教員は、WBGTを確認し、施設の利用者やイベント参加者、児童生徒に対して熱中症予防に関する呼びかけを行う責任があります。 特に、エアコンが設置されていない屋内外での運動は、原則中止または延期するなどの判断が必要です。 2024年の職場における熱中症死傷者数が増加している現状を踏まえ、厚生労働省も発症時・緊急時の措置の確認や周知を徹底するよう呼びかけています。
4. **暑熱順化の重要性:**
暑熱順化とは、体が暑さに慣れることです。暑熱順化ができていないと、体の熱をうまく外に逃がすことができず、熱中症のリスクが高まります。 日頃から適度な運動を行い、徐々に体を暑さに慣らすことで、熱中症になりにくい体づくりをすることが重要です。 暑熱順化が進むと、汗をかきやすくなり、汗からのナトリウム喪失が抑えられ、体温上昇も抑制されるため、熱中症予防に繋がります。
アラート運用における課題と今後の展望
熱中症警戒アラートの運用開始以来、国民の認知度は向上し、予防行動への意識も高まっています。しかし、その効果を最大限に引き出すためには、いくつかの課題も指摘されています。
まず、情報の伝達方法や、それを国民の効果的な予防行動に繋げる方法について、さらなる改善が必要です。 自治体や教育委員会においては、アラートの活用方法に現場ごとの差異が見られるため、全国展開に際しては具体的な活用事例や指針を示すことで、よりスムーズな運用を促す必要があります。
また、アラートの効果を検証するためには、単年度だけでなく複数年にわたる継続的なデータ収集と分析が不可欠です。救急搬送者数は天候によって大きく変動するため、中長期的な視点での評価が求められます。
一方で、熱中症に関する知識が定着し、重症に至る前に早期に救急搬送される事例が増加すれば、救急搬送者数の総数に変化が現れない可能性も指摘されています。 これは、予防行動が功を奏している証拠とも言えるため、単なる搬送者数だけでなく、重症者数や死亡者数といったより深刻な指標に着目した評価も重要となります。
今後は、IoTセンサーのように、都道府県単位だけでなく、特定の地域や施設におけるより詳細なWBGT予測を提供し、それぞれの現場の状況に合わせたきめ細やかな対策を可能にする技術の普及が期待されます。 また、気候変動が進む中で、熱中症対策はますます複雑化するため、継続的な研究と情報発信、そして社会全体での意識と行動の変革が求められています。
まとめ
2025年の夏は、すでに記録的な猛暑に見舞われ、熱中症への厳重な警戒が呼びかけられています。環境省と気象庁が共同で運用する「熱中症警戒アラート」および「熱中症特別警戒アラート」は、危険な暑さから私たちを守るための重要な情報源です。特に、2024年から本格運用が始まった「熱中症特別警戒アラート」は、過去に例のない広域的な危険な暑さを示すものであり、その発表時には、最大限の警戒と予防行動が求められます。
WBGT(暑さ指数)を理解し、その数値に応じた行動をとることは、熱中症予防の基本中の基本です。外出を控える、エアコンを適切に使用する、こまめに水分と塩分を補給するといった基本的な対策に加え、ウェアラブルデバイスやスマートホーム技術、局所的なIoTセンサー、AIを活用した予測など、最新のテクノロジーが私たちの熱中症対策を強力にサポートしています。これらの技術は、個人の健康管理から職場や地域の安全確保まで、多岐にわたる場面での熱中症リスク低減に貢献しています。
気候変動が進行する中で、熱中症による健康被害は今後も増加する傾向にあります。 2023年に改正された「気候変動適応法」は、熱中症対策を国の重要課題として位置づけ、「熱中症対策実行計画」の法定化や「クーリングシェルター」の指定促進など、社会全体で熱中症に立ち向かうための法整備を進めています。政府が推進する「熱中症予防強化キャンペーン」や、個人・共助・公助の連携は、この難局を乗り越えるための重要な柱となります。
私たち一人ひとりが熱中症のリスクを正しく認識し、アラート情報を活用しながら、自らの健康を守るための行動を実践すること。そして、高齢者や子供など、熱中症にかかりやすい人々への「声かけ」や「見守り」といった共助の精神を忘れずにいること。これらを通じて、社会全体で熱中症による悲劇を防ぎ、安全で健康な夏を過ごせるよう、引き続き意識を高めていくことが何よりも大切です。2025年の夏も、最新の情報を常に確認し、油断することなく熱中症対策を徹底してまいりましょう。