PFASに関する最新情報:規制動向、検出状況、健康への影響、そして今後の課題
欧州化学品庁によるPFAS規制案の発表
欧州化学品庁(ECHA)は2023年2月7日、約1万種類のパーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)に関する規制案を発表しました。デンマーク、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデンの当局が作成したこの案は、環境へのPFAS排出量を削減し、人々にとって製品やプロセスをより安全にすることを目的としています。提案されている規制の対象となるすべてのPFASは、環境において非常に持続性が高いです。そのため、排出量が最小限に抑えられない場合、人、植物、動物への曝露が増加し、規制がないと、人々の健康と環境に悪影響を及ぼすレベルに達するとされています。当局は、対策が取られない限り、今後30年間で約440万トンのPFASが環境中に放出されると推定しています。ECHAのリスクアセスメント担当ディレクター、Peter van der Zandt氏は、この画期的な提案がEUの化学物質戦略とゼロ汚染行動計画の野心を支えていると述べています。今後、リスクアセスメント委員会(RAC)と社会経済分析委員会(SEAC)が、この提案がREACHの法的要件を満たしているかどうかを確認し、科学的評価を開始します。2023年3月22日からは6ヶ月間の協議が予定されています。
日本における水道水中のPFAS検出状況
NHKの報道によると、環境省と国土交通省は2024年度(~9月末)までの4年半にわたる全国の水道水のPFAS検出状況を調査し、その結果を初めて公表しました。最新の調査では、国の暫定目標値(1リットルあたり50ナノグラム)をすべての地域で下回っていましたが、2020年度から2023年度までの間に14か所で目標値を超える濃度が検出されていました。これらの地域では、水源の切り替えなどの対策が行われ、最新の検査ではすべて目標値を下回っています。NHKは、この調査結果をもとに水道水PFAS検出状況マップを作成し、公開しています。マップでは、各年度の最大検出値に基づいて色分けされており、赤色は暫定目標値超過、黄色は暫定目標値以下、水色は検出下限値未満、灰色は検査未実施を表しています。マップは自治体ごとにクリックでき、各自治体に給水する水道事業者の検査結果を確認できます。検査対象の水は、給水栓水、浄水場出口水、原水の3種類です。
岡山県吉備中央町におけるPFAS問題と健康への影響
岡山県吉備中央町では、水道水から高濃度のPFASが検出された問題を受け、2024年11月25日から全国で初めて公費による血液検査が行われました。検査を受けた709人中、87.4%から米国の血中濃度指標(7種類のPFAS合計で1ミリリットルあたり20ナノグラム以上)を超える濃度のPFASが検出されました。PFOAの最大値は718.8ナノグラム、7種平均値の合計は151.5ナノグラムと、いずれも米国の指標を大きく上回っていました。岡山大学の頼藤貴志教授は、住民に対し定期的な健康診断と症状出現時の医療機関受診を呼び掛けています。
3M社のPFAS製造からの撤退
3M社は2022年12月20日、2025年末までにPFASの製造から撤退し、製品ポートフォリオ全体からPFASの使用を段階的に廃止すると発表しました。この決定は、環境中のPFASの削減または排除に焦点を当てた規制動向の加速化や、ステークホルダーの期待の変化などの要因を考慮したものです。3M社は、2025年末までにすべてのPFAS製造を終了し、製品ポートフォリオ全体からPFASの使用を段階的に廃止する取り組みを進めています。PFAS製造からの撤退に伴い、約13億~23億ドルの税引前費用が発生すると予想されています。
米国環境保護庁によるPFASに関する取り組み
米国環境保護庁(EPA)は、2023年3月14日、6種類のPFASに関する初の全国的な飲料水基準を提案しました。これは、バイデン大統領によるPFAS汚染対策計画およびリーガン長官のPFAS戦略ロードマップに基づく措置です。提案では、PFOAとPFOSを個々の汚染物質として、PFNA、PFHxS、PFBS、GenX化学物質を混合物として規制することを提案しています。EPAは、この規則が完全に実施されれば、長期的には数千人の死亡を防ぎ、数万人のPFAS関連の重篤な病気の発生を減らす可能性があると予測しています。また、EPAは、PFASに関する様々な情報を公開しており、PFASに関する調査結果や規制案、そしてそれらへの対応について継続的に情報を発信しています。
日本におけるPFAS規制の現状と課題
日本においては、PFASに関する規制は、水道水については暫定目標値が設定されているものの、法的規制はされていません。そのため、水道事業者による検査や対応は努力義務であり、検査の徹底や情報公開が課題となっています。2024年11月には、環境省が全国の水道水のPFAS検出状況を調査した結果が公表され、過去4年間に14か所で暫定目標値を超える濃度が検出されていたことが明らかになりました。現在、暫定目標値を法的に検査や改善が義務付けられる水質基準に引き上げるかどうか検討されています。また、PFASの排出源の特定も大きな課題となっています。
まとめ
世界各国でPFASに関する規制強化や対策が進められていますが、その毒性や環境への影響、そして健康への影響については、未だ解明されていない部分も多く残されています。今後も継続的な調査研究と、関係各機関による連携強化が不可欠です。国民への正確な情報提供と、安心安全な生活環境の確保に向けた取り組みが求められています。