2025年夏、引退力士の新たな舞台と相撲界の深層に迫る最新動向

はじめに

相撲界は、その厳しさから多くの力士が引退の決断を下す場所です。しかし、引退は終わりではなく、新たな人生の始まりを意味します。近年、引退力士たちのセカンドキャリアはますます多様化し、伝統的な親方への道だけでなく、意外な分野での活躍も目立つようになりました。2025年、特にこの夏は、複数の力士の引退発表や、元大関・元横綱といった大物力士たちの引退後の動向が大きな注目を集めています。伝統と変化が交錯する相撲界において、彼らがどのような未来を切り開こうとしているのか、そしてその背景にはどのような課題が横たわっているのか、最新のニュースを交えながら深掘りしていきましょう。本記事では、直近数日内に発表された引退力士の情報から、来たる引退相撲、さらには親方としての苦悩や、力士の枠を超えた挑戦まで、多岐にわたる引退力士たちの最新動向を網羅的に解説していきます。相撲ファンの方々はもちろん、新たなキャリアを模索するすべての方にとって、示唆に富む内容となることでしょう。

直近の衝撃：2025年7月、8名の引退力士が発表される

2025年7月30日、日本相撲協会は、名古屋場所後の番付編成会議に先立ち、現役を引退する力士8名を発表しました。これは、相撲界に新たな世代交代の波が訪れていることを示唆するもので、多くの相撲ファンに驚きと惜別の念をもたらしています。引退が発表されたのは、八角部屋の藤の谷、大嶽部屋の銀星山、佐渡ヶ嶽部屋の琴太成、西岩部屋の若箭原、武蔵川部屋の内海、山響部屋の中家、出羽海部屋の橋本、そして時津風部屋の藤原の各力士です。

特に注目を集めたのは、武蔵川部屋の内海関（22歳）でした。彼は2025年1月に初土俵を踏んだばかりで、わずか半年あまりという異例の短期間での引退となりました。 内海関は身長180センチ、体重121キロという恵まれた体格の持ち主で、入門前は派遣社員として一般企業に勤務していたという異色の経歴が話題を呼んでいました。 武蔵川親方（元横綱・武蔵丸）の知人であった上司の紹介がきっかけで角界入りを決意したとされ、1月場所の際には一部メディアでその経緯が報じられたほどです。 その彼が、最高位序ノ口三枚目まで番付を上げたものの、半年足らずで土俵を去る決断を下したことは、相撲界の厳しさを改めて浮き彫りにしています。協会の公式な引退理由は明らかにされていませんが、一般的には成績不振や体調面、あるいは自身の進路選択による自主的な判断が推察されています。 短期間での引退は、力士が直面する心身の負担や、厳しい稽古、そして将来への不安といった多様な要因が絡み合っている可能性を示唆しており、若年層の力士育成や待遇の課題にもつながる動きとして注目されています。

この8名の引退発表は、新十両昇進者の決定と同時に行われました。新十両には旭海雄、朝白龍、朝翠龍、西ノ龍の4名が決定し、さらに元大関の朝乃山関の再十両復帰も発表されるなど、相撲界の番付人事における大きな節目となりました。 新陳代謝が活発に行われる相撲界の厳しさと、その中で新たなチャンスを掴む力士たちの姿が同時に示された形です。引退した力士たちが、それぞれの新たな人生でどのような道を歩むのか、相撲ファンとしては温かく見守りたいものですね。

元大関・貴景勝関、2025年10月に引退相撲を開催！激ヤセぶりに驚きの声も

昨年9月の大相撲秋場所限りで現役を引退した元大関・貴景勝関（現：湊川親方）の引退湊川襲名披露大相撲（断髪式）が、2025年10月4日（土）に東京・両国国技館で開催されることが正式に発表されました。 貴景勝関は、首の怪我などが影響し28歳1ヶ月という若さで現役引退を決断しました。 平成以降に昇進した横綱・大関の中では最年少での引退となり、その決断は多くのファンに衝撃を与えました。

引退発表以来、貴景勝関の動向は常に注目を集めていますが、特に彼の身体的な変化には驚きの声が上がっています。引退後、彼は20キロから25キロもの減量を果たしたことを、今年3月に放送されたテレビ番組で明かしました。 現役時代の鍛え抜かれた丸々とした体格から一転、スーツ姿が似合うスマートな姿に変貌した写真が公開されると、「姿が変わりすぎて本当に頑張って肉体を作り上げたんだと胸が熱くなりました」「なんか若返った親方スマートになりましたね」「本当に努力してあの肉体を維持されていたんですね」「新弟子みたい」といった驚きと激励の声がSNS上を賑わせました。

力士は現役時代、激しいぶつかり合いに耐えるため、多くの食事と稽古によって巨体を維持しています。特に貴景勝関は、その突き押し相撲で見る者を魅了し、土俵を活気付かせました。その肉体を維持するためにどれほどの努力を重ねていたか、引退後の劇的な体型の変化は、改めて現役力士の過酷さを物語っていると言えるでしょう。

湊川親方としての新たな道を歩む貴景勝関は、2025年1月には両国国技館で行われたトークイベントに登場し、現役時代に幕内優勝を4度、十両優勝を1度、幕下優勝を1度、序ノ口優勝を1度経験した輝かしい実績を振り返るとともに、今後の相撲界への貢献に意欲を示しました。 また、現役大関である琴櫻関へエールを送る場面も見られ、大関経験者としての重みを感じさせました。 貴景勝関の引退相撲は、彼の相撲人生を締めくくるだけでなく、湊川親方としての新たなスタートを祝う場として、多くの相撲ファンが詰めかけることでしょう。彼が今後、相撲界にどのような新たな風を吹き込むのか、その動向から目が離せません。

伝統への挑戦：元横綱・白鵬（宮城野親方）、日本相撲協会を退職し国際相撲へ

2025年6月、大相撲界に衝撃が走るニュースが報じられました。史上最多45回の幕内優勝を誇る元横綱・白鵬こと宮城野親方が、日本相撲協会を退職し、相撲の国際的な普及を目指す団体を立ち上げる準備に入っていることが明らかになったのです。

このニュースは、相撲界の伝統と、グローバル化の波の衝突を象徴する出来事として、大きな議論を巻き起こしました。日本相撲協会は、引退した力士が親方として後進を指導する「年寄名跡」の前提条件として、「日本国籍を有すること」という規定を設けています。 これまでにも、元小錦関や元白鵬関自身（当時は白鵬）が、親方となるために日本国籍を取得した歴史があります。

しかし、宮城野親方（元白鵬）の今回の決断は、この国籍規定の是非を含め、外国出身力士のセカンドキャリアのあり方に一石を投じるものです。ジャーナリストの森田浩之氏は、国籍を理由に親方への道を閉ざす方針について、「多様性重視の時代に即しているとは到底思えない」と警鐘を鳴らしています。 実際に、モンゴル出身の元大関・琴欧洲関（現：鳴戸親方）も、引退直前に日本国籍を取得した際、「パスポートで人は変わらない」と語っており、その言葉は、国籍だけで個人の資質や相撲への情熱を測るべきではないという問題提起を含んでいます。

宮城野親方は、退職後は日米を拠点として国際的な相撲競技の組織発足を目指すとしており、相撲の世界的普及という長年の夢の実現に向けて本格的に動き出すと見られています。 大相撲は日本の国技であり、その伝統を守り、継承していくことは非常に重要です。しかし同時に、柔道や空手のように、相撲もまた世界に開かれたスポーツとして、さらなる発展を遂げる可能性を秘めています。宮城野親方の挑戦は、日本相撲協会が今後、外国出身力士の指導者としての道をどのように拓いていくか、そして相撲が国際的なスポーツとしてどのような進化を遂げるのか、その方向性を占う試金石となるでしょう。彼の新たな舞台での活躍は、相撲界に新たな価値観をもたらし、未来の相撲の姿を大きく変えるかもしれません。

セカンドキャリアの多様化：ハリウッド進出からちゃんこ料理店まで

力士を引退した後のセカンドキャリアは、長らく相撲界の課題の一つとされてきました。現役時代に培った身体能力や精神力は計り知れないものがありますが、一般社会での再就職や新たなキャリアパスの構築は容易ではありません。しかし近年、その状況は大きく変化し、引退力士たちは多岐にわたる分野で独自の才能を発揮しています。

伝統的なセカンドキャリアとしてまず挙げられるのは、やはり「ちゃんこ料理店」の経営でしょう。力士時代に慣れ親しんだちゃんこ鍋の調理技術や、親しみやすい人柄を活かし、多くの元力士が成功を収めています。 また、その巨体や体力、精神力を活かして、警備員や整体師として活躍する元力士も少なくありません。

しかし、2025年に入って特に注目されているのは、これまでの常識を打ち破るような異色のキャリアパスです。2025年5月30日には、元力士である田代良徳氏の挑戦を描いた書籍『SUMOOOO!! 流れ流れてハリウッド』が発売されました。 田代氏は、現役引退後にスーパーマーケット勤務を経て、ウェブサイト制作・運営会社を設立。さらに、自身の元力士としての経歴を活かし、ファッションモデルとしてVOGUE誌に登場したり、インド映画で主役級に大抜擢されたり、ついにはハリウッド映画に出演するといった、まさに“常識を打ち破る”ようなキャリアを築いているのです。 彼は「SUMOエージェンシー」という、元力士たちのセカンドキャリア支援と相撲の魅力を世界に広めることを目的とした会社も立ち上げており、その活動は相撲ファンのみならず、キャリアチェンジを考えるビジネスパーソンにも大きな勇気と希望を与えています。

このように、引退力士のセカンドキャリアは、ちゃんこ料理店や親方といった伝統的な枠を超え、エンターテイメント業界や国際的なビジネス分野へと広がりを見せています。これは、力士たちが現役時代に培った強靭な肉体と精神力、そして特異な「お相撲さん」というアイデンティティが、現代社会において多様な価値を生み出す可能性を秘めていることを示していると言えるでしょう。相撲は単なるスポーツではなく、日本の文化そのものであり、その担い手であった引退力士たちが、それぞれの個性を活かし、新たな「SUMOの輪」を世界に広げていくことは、相撲界全体の発展にも大きく寄与するに違いありません。

親方としての道のりと課題：二所ノ関部屋の動向と国籍規定の波紋

引退力士にとって、最も伝統的で、そして重責を伴うセカンドキャリアの一つが「親方」として相撲部屋を構え、後進の指導にあたることです。元横綱・稀勢の里こと二所ノ関親方は、その代表格として大きな期待を背負っています。彼は2019年1月場所に現役を引退した後、部屋付き親方を経て、2021年5月に二所ノ関部屋を新設し、師匠としての道を歩み始めました。

二所ノ関親方の部屋からは、2025年5月場所後に大の里関が史上最速となる所要13場所で第75代横綱に昇進するという快挙が生まれました。 これは、二所ノ関親方の指導力と、大の里関の才能が結実した結果と言えるでしょう。師匠として新たな横綱を育て上げたことは、二所ノ関親方にとって大きな喜びと自信になったに違いありません。

しかし、その一方で、親方としての道のりには厳しい試練も伴います。2025年2月には、二所ノ関部屋で未成年力士による飲酒や、悪ふざけが行き過ぎた乱痴気騒ぎがあったことが報じられました。 日本相撲協会は、「ふざけてやったとしても度を越している」とコメントしており、この問題は親方としての部屋のガバナンス、力士への指導体制について議論を呼ぶことになりました。 親方には、力士を強くするだけでなく、社会人として育成し、規律を重んじることも求められます。特に、元横綱という大物力士の部屋での不祥事は、社会的な注目度も高く、その責任はより一層重いものとなります。

また、親方となるための「日本国籍を有すること」という規定は、依然として相撲界の大きな議論の的となっています。 横綱・豊昇龍関が、将来的に親方になることを視野に入れ、日本国籍取得の準備を進めているというニュースは、この規定が現代の相撲界に与える影響を改めて浮き彫りにしています。 豊昇龍関はモンゴル出身であり、彼の決断は、外国出身力士が相撲界で指導者となるためには、国籍変更という大きな壁を越える必要があることを示しています。 「パスポートで人は変わらない」という元琴欧洲関の言葉が示すように、国籍規定の是非については、多様性を尊重する現代社会において、相撲協会が今後どのように対応していくかが問われています。

親方という立場は、力士の育成だけでなく、部屋の運営、弟子の生活指導、さらには相撲界の伝統継承という多岐にわたる責任を担っています。二所ノ関親方の例は、その厳しさと、社会からの期待の大きさを同時に示しています。外国出身力士の親方問題も含め、親方のあり方、そして相撲部屋の運営体制は、2025年以降も相撲界の重要な課題として議論されていくことでしょう。

まとめ

2025年の相撲界は、引退力士たちの動向から目が離せない一年となっています。直近の7月30日に発表された8名の引退力士、特に短期間で土俵を去った内海関の例は、力士の道がどれほど厳しく、そして新たなキャリアを模索することの難しさを改めて示しています。しかし、その一方で、元大関・貴景勝関が10月の引退相撲に向けて劇的な肉体改造を遂げ、親方として新たな一歩を踏み出す姿は、力士引退後の可能性を大いに感じさせてくれます。

さらに、元横綱・白鵬こと宮城野親方が日本相撲協会を退職し、国際的な相撲普及という壮大な夢を追いかける決断は、相撲界の伝統とグローバル化の衝突、そして外国出身力士のセカンドキャリア問題に新たな一石を投じました。また、元力士・田代良徳氏のハリウッド進出という異色の成功事例は、力士たちが持つ潜在能力と、引退後のキャリアパスの多様化がどこまでも広がっていることを証明しています。

親方という伝統的なセカンドキャリアにおいても、二所ノ関親方（元稀勢の里）の部屋での不祥事と、愛弟子・大の里関の横綱昇進という光と影の両面が浮き彫りになりました。親方業の厳しさと、社会からの高い期待、そして外国出身力士の親方就任に関わる国籍規定の問題は、今後も相撲界が向き合うべき重要なテーマです。

引退力士たちは、土俵の上で培った不屈の精神と強靭な肉体を胸に、それぞれの新たな人生を力強く歩み始めています。彼らの挑戦は、相撲界の未来を形作るだけでなく、私たち自身のキャリアや生き方にも多くの示唆を与えてくれることでしょう。伝統を守りつつ、変化の波に柔軟に対応していく相撲界の動向、そして引退力士たちの今後の活躍に、引き続き注目していきたいですね。

雑談力向上委員会

編集部