UBE株式会社:構造改革とDX推進による事業変革
化学品生産停止と減損損失の計上
UBE株式会社は、販売数量や価格の低迷により不振となっている化学品の生産を従来計画より前倒しで停止すると発表しました。宇部ケミカル工場(山口県宇部市)では、2027年3月までにカプロラクタム、ナイロンポリマー、シクロヘキサノンの生産を、2028年3月までにアンモニアの生産を停止します。タイの生産拠点でも、2027年3月までにシクロヘキサノン、カプロラクタム、硫安の生産を停止し、ナイロンポリマーの生産設備を縮小します。これらの生産停止に伴い、約350億円の減損損失を2025年3月期に一括計上する見込みです。この減損損失の内訳は、宇部ケミカル工場で約100億円、タイで約250億円です。さらに、各拠点での設備の解体撤去費用として、現時点で約300億円を見込んでおり、2028年3月期以降、数年間にわたり計上する予定です。これらの構造改革により、2030年度までに温室効果ガス(GHG)を2013年度比50%削減する目標を、2028年度に達成する見込みです。
宇部ケミカル工場の転換
宇部ケミカル工場は、生産停止となる化学品に加え、ポリイミド、分離膜、セラミックス(窒化ケイ素)、医薬、高純度化学薬品などの生産・開発拠点へと転換していきます。既存設備の活用と新たな投資によって、高付加価値製品の生産体制を強化することで、将来的な収益性向上を目指します。
中期経営計画と事業構造改革
UBEは2022年5月に中期経営計画を発表し、ベーシック事業の縮小、撤退、再構築を掲げていました。今回の化学品生産停止の前倒しは、中国企業による過剰供給などによるアジア市場の悪化を受け、計画を前倒しで実行するものです。市況変動が大きく収益性も低下していたベーシック事業の再編により、業績の安定化と収益性の改善が期待されています。スペイン拠点ではシクロヘキサノンの生産を停止する一方、環境貢献型のナイロンポリマー生産を継続します。タイ拠点ではスペシャリティー事業のポリカーボネートジオールなどの生産を強化します。
DX推進とSAP導入
UBEは、技術力と革新力を機軸にデータやデジタル技術を最大限に活用し、ビジネス変革を進めています。DX推進室は、Smart Factory、Digital Marketingなど10領域でDXを推進しており、リアルタイムデータに基づいた意思決定の高度化を目指しています。その取り組みの一環として、2024年4月から基幹システムを全面刷新し、SAP S/4HANA Cloud Private Editionの本稼働を開始しました。これは、計画よりも約4年前倒しでの運用開始となります。
その他
UBEは2024年2月期に減収増益となりました。これは、主力のナイロン原料の販売が不調だった一方で、風力発電に用いられるセラミックス素材など高機能な化学製品の販売が好調だったことが主な要因です。2025年3月期の業績は、当初の295億円の黒字から175億円の赤字に修正されました。2024年度は、高機能製品の転換に力を入れることで、売り上げ5100億円、営業利益270億円と増収増益を見込んでいます。大日本印刷とUBEは、素材分析における新たな価値創出を目指し、合弁会社を設立し協業を開始しました。