2025年広島県知事選、激震の行方!4期湯崎知事「進退論争」と呉跡地問題の深層に迫る
はじめに
2025年、広島県政の未来を左右する大きな動きが注目を集めています。長きにわたり県政を牽引してきた湯崎英彦知事の去就を巡る「進退論争」が表面化し、来る11月の広島県知事選挙に向けて、すでに熱い議論が巻き起こっているのです。実は、この論争の背景には、呉市にある日本製鉄瀬戸内製鉄所呉地区跡地の活用を巡る新たな展開が深く関係しています。防衛省と日本製鉄の間で売買契約の基本合意がなされたことで、地域の経済活性化を願う知事の強い意向が改めて浮き彫りになり、県民の関心はまさに最高潮に達していると言えるでしょう。
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2025年広島県知事選挙、湯崎知事「4期16年の節目」が焦点に
2025年11月9日に投開票が予定されている広島県知事選挙は、早くも県政の大きなターニングポイントとして注目されています。現職の湯崎英彦知事は、2009年の初当選以来、4期16年にわたり県政のかじ取りを担ってきました。この長期政権が、今、大きな岐路に立たされているのです。
湯崎知事、4期16年の功績と「御勇退」を求める声
湯崎知事は、経済産業省出身で、アッカ・ネットワークス創業者の経験を持つ異色の経歴の持ち主です。 就任当初は、育児休暇の取得で「共育て」に一石を投じ、福山市の鞆の浦埋め立て架橋問題では市民との対話を通じて解決の道筋をつけるなど、県民に寄り添う姿勢が評価されました。 また、産業振興においては「ひろしまサンドボックス」の創設(2018年)など、スタートアップ支援にも力を入れてきました。 しかし、長期政権の影で、県政運営に対する様々な意見も噴出しています。
特に最近では、湯崎知事に対して「御勇退」を求めるオンライン署名活動が展開され、2025年8月21日にはこの署名についての記者会見が予定されるなど、活発な動きが見られます。 署名の呼びかけ人は、湯崎知事の4期16年の任期が2025年11月30日で満了することに触れ、三原本郷産廃処分場問題での住民の声を無視した対応や、県立広島病院の独立行政法人化と統合計画における財源確保の課題、周辺住民や職員、議会の懸念への「耳を傾けない」姿勢などを批判し、「民主主義の危機を象徴している」と訴えています。
このような「交代論」が強まる背景には、県民の間で、長期政権による停滞や、特定の政策決定プロセスにおける透明性への疑問が広がっていることが挙げられるでしょう。一方で、湯崎知事は2021年の前回選挙では新型コロナ対策などを掲げ、4選を果たしており、その手腕を評価する声も根強く存在します。
日鉄呉跡地問題が知事選の鍵に?
知事の進退論争と密接に絡み合っているのが、呉市にある日本製鉄瀬戸内製鉄所呉地区跡地の問題です。この広大な土地の活用方法は、呉市だけでなく、広島県全体の経済、さらには国の安全保障にも関わる極めて重要なテーマとなっています。
直近の動きとして、2025年7月31日には防衛省が日本製鉄との間で、この土地の売買契約締結に向けた基本合意に達したと発表しました。 防衛省は、この跡地を「多機能な複合防衛拠点」として整備する方針を示しており、2026年度予算の概算要求に関連費用を盛り込む計画です。
しかし、湯崎知事はこの合意を受けても、改めて民間企業の誘致や、地元経済への貢献について防衛省や呉市と「意見交換ができる場」を求める意向を強く示しています。知事は、防衛省が計画する複合防衛拠点案についても、隊員の雇用数や民間企業誘致に関して、その内容を具体化していくことが重要だとの認識を改めて強調しています。 過去にも、知事は防衛省案が「選択肢の一つ」であるとしつつ、地域経済への影響など詳細な説明を求めてきました。
呉市は2025年5月には、新原市長が市議会で防衛省の複合防衛拠点整備案を受け入れる方針を表明しており、この点において県と市のトップの間には温度差が見られます。 知事の「民間誘致」へのこだわりは、長期的な視点での地域経済活性化を目指す姿勢の表れと言えますが、これが来る知事選においてどのように評価されるのか、注目されるポイントです。
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湯崎県政16年の背景と経緯:変革と挑戦の歩み
湯崎英彦知事が広島県政のトップに就任したのは2009年。前任の藤田雄山知事の後を受け、無所属で県知事選に立候補し、自民党や民主党などの支援を得て初当選しました。 以来、4期16年にわたるその統治は、広島県に多大な影響を与えてきました。
人口減少・転出超過への挑戦
湯崎県政が直面してきた最大の課題の一つが、深刻な人口減少と若者の転出超過です。広島県は近年、大学進学や新卒時の就職を機に多くの若者が県外へ転出しており、2025年2月時点で4年連続で転出超過が全国最多となるなど、その傾向は顕著です。 知事はこれに対し、「若者減少・人手不足対策プロジェクト・チーム」を立ち上げ、県内企業への関心を高めるイベントの開催や就職活動の交通費補助、さらには動画やSNSを活用したプロモーションなど、多角的な対策に総額99億円を計上するなど、若者減少対策に力を入れています。 また、東京一極集中を「国の構造的な問題」と指摘し、国への働きかけも続けています。
医療体制改革:県立病院機構設立の賛否
県立病院の再編も、湯崎県政の主要な取り組みです。県は、救急医療や高度・専門医療の提供、医師派遣を通じた地域医療の充実を目指し、県立広島病院、県立安芸津病院、そして旧JR広島病院を統合した県立二葉の里病院を運営する「地方独立行政法人広島県立病院機構」を2025年4月1日に設立しました。 これは、より効率的で質の高い医療提供体制を構築するための施策とされています。しかし、この改革には、財源確保の問題や、周辺住民や職員からの反対の声も上がっており、今後の運営が注目されています。
平和への貢献:被爆80年のメッセージ
被爆地である広島にとって、平和への取り組みは県政の根幹をなすものです。特に2025年は原爆投下から80年という節目の年であり、湯崎知事も「被爆・終戦80年特設ウェブサイト」を設置するなど、平和へのメッセージ発信に尽力しています。 知事は、「核兵器廃絶は遠くに掲げる理想ではないのです。今、必死に取り組まなければならない、人類存続に関わる差し迫った現実の問題です」と訴え、ビジネスを通じた持続可能な平和構築を目指す「2025ひろしま宣言」を発表するなど、経済界も巻き込んだ新たなアプローチを提唱しています。 また、2025年8月13日には、平和への願いを発信する「ピースナイター2025」が開催され、湯崎知事からの平和メッセージも放映される予定です。
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知らないと損する関連情報・雑学
湯崎知事の意外な一面とキャリア
湯崎知事は、そのキャリアパスが非常にユニークです。通商産業省(現経済産業省)に入省後、米国スタンフォード大学でMBAを取得。その後、インターネットプロバイダー企業であるアッカ・ネットワークスの設立に携わり、代表取締役副社長を務めました。 行政、ビジネス、そしてスタートアップという多様な経験が、知事の政策立案に大きな影響を与えているのは意外と知られていない事実かもしれません。特に「ひろしまサンドボックス」のような新産業創出への取り組みは、彼の起業家としての視点が色濃く反映されています。
80周年を迎える平和記念式典と新たな取り組み
2025年8月6日に開催される平和記念式典は、被爆80周年という特別な意味を持つ年です。例年、湯崎知事も参列し、平和へのメッセージを発信しています。 この節目に合わせて、広島県は「ひろしま国際平和&ビジネスフォーラム」の開催や、若者が平和について考える「若者達が集い、未来に平和をつなぐプロジェクト」など、多様な平和貢献の取り組みを加速させています。 戦後80年を経て、核兵器廃絶への道のりが依然として険しい中、広島から発信されるメッセージの重みは増すばかりです。
県庁組織の変革:半導体産業課の新設
2025年度の広島県庁は、知事主導で大規模な組織改正が行われました。その目玉の一つが、商工労働局内に新設された「産業政策審議官組織」と、その中に設けられた「半導体産業課」です。 これは、今後の経済成長の鍵を握る半導体産業をはじめとする先端・成長産業の競争力強化を目指すもので、県内企業との連携を強化し、関連産業の集積を図る狙いがあります。この動きは、広島が新たな産業のハブとなる可能性を秘めており、県民にとっても見逃せない変化と言えるでしょう。
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今後の展望とまとめ
2025年秋に控える広島県知事選挙は、湯崎知事の進退論争と、日鉄呉跡地問題という二つの大きなテーマを軸に、今後さらにその熱を帯びていくことでしょう。湯崎知事が5期目の出馬を表明するのか、それとも「御勇退」の道を選ぶのか、その決断は広島県政の未来を大きく左右します。
もし湯崎知事が再選を目指す場合、16年にわたる県政運営の評価、特に人口減少対策や県立病院改革、そして日鉄呉跡地問題への対応が厳しく問われることになります。一方、新たな候補者が出馬するとなれば、彼らが提示するビジョンや政策が、停滞感を打破し、新たな広島を創造できるかどうかが県民の選択の大きな基準となるでしょう。
日鉄呉跡地問題も、防衛省との合意後も知事が民間誘致への意欲を示していることから、この大規模な土地が、国防拠点としてだけでなく、いかに地域経済に貢献できるのかという議論は継続される見込みです。この問題の行方は、呉市のみならず、広島県全体の産業構造や雇用に大きな影響を与えるため、選挙の争点の一つとなることは間違いありません。
県民にとっては、「変化」と「継続」の間で、どのような未来を選ぶのかが問われる選挙となるでしょう。被爆80周年を迎え、平和のメッセージを発信する広島が、政治・経済の両面でどのような舵取りをしていくのか。すべての県民が「知らないと損する」重要な局面であり、今後の動向から目が離せません。