NAB最新動向2025:住宅ローン緩和からAI活用まで徹底解説
はじめに
オーストラリアを代表する金融機関であるNAB(ナショナル・オーストラリア銀行)は、2025年も目まぐるしく変化する経済環境の中で、顧客中心の戦略を推進し、多岐にわたる分野で重要な進展を見せています。直近のニュースでは、住宅ローン申請における学生債務の取り扱い緩和、長きにわたる金融犯罪対策に関する当局との合意の完了、そして堅調な上半期業績と配当発表など、多角的な動きが明らかになっています。また、オーストラリア経済全体の動向を見据えた経済見通しを発表し、サステナビリティ目標の達成に向けた進捗や、AIとデジタル技術を駆使した未来のバンキング体験の創出にも注力していることが伺えます。本記事では、NABが2025年にどのような戦略を展開し、それが顧客やオーストラリア経済にどのような影響を与えるのかを、最新のデータに基づいて詳しく解説していきます。NABの最新動向を深掘りし、その戦略的意義と今後の展望について、皆様に分かりやすくお届けいたします。
学生ローン緩和で住宅市場を後押しするNABの最新動向
2025年7月23日、NABは、住宅ローンを検討しているお客様にとって非常に朗報となる発表を行いました。それは、**2025年7月31日より、住宅ローン申請時の審査において、20,000豪ドル以下の高等教育ローンプログラム(HELP)債務を考慮しない**というものです。この画期的な変更は、特に初めて住宅を購入する方々にとって、住宅市場への参入障壁を大きく下げるものと期待されています。
HELP債務は、オーストラリアの多くの学生が大学教育を受けるために利用する政府融資プログラムです。卒業後、一定の所得水準を超えると返済義務が生じるため、これまでは住宅ローンの返済能力を測る上で考慮され、借入可能額に影響を与えていました。NABの住宅ローン担当役員であるマット・ドーソン氏は、「長らく、HELP債務は多くのオーストラリア人にとって住宅購入の足かせとなっていました」と述べ、この変更が「より多くの人々が住宅所有の夢をより早く実現できるようになる」と強調しています。
このNABの動きは、オーストラリアの規制当局であるオーストラリア証券投資委員会(ASIC)とオーストラリア健全性規制庁(APRA)が、学生債務の取り扱いに関するガイダンスを更新したことに続くものです。連邦財務長官ジム・チャルマーズ氏も、HELP債務を持つ人々が住宅を購入する際に公平に扱われるべきだと提言しており、銀行がより多くの資金を提供できるようになることで、住宅プロジェクトが迅速に進むことを期待していました。 ASICは3月までに学生債務に関するガイドラインを更新し、貸し手が他の消費者債務と比較して学生債務の評価をより柔軟に行えるようになったことを示しています。
NABは、この規制変更を歓迎し、住宅購入者の購入能力を高めるものとして評価しています。 しかし、ドーソン氏は同時に、住宅供給の不足が依然として最大の課題であるとも指摘しており、「より多くのオーストラリア人が住宅を購入できるよう、需要側と供給側の両方の対策を講じることが重要です」と述べています。
他の主要銀行の動きと比較すると、例えばコモンウェルス銀行(CBA)は4月に、学生債務を12ヶ月以内に返済できる借り手については、住宅ローンの返済能力計算からHELP債務を除外すると発表しています。 また、1年から5年以内にHELP債務を返済できる借り手に対しては、1%低い評価レートバッファで住宅ローンの返済能力を評価するパイロットプログラムも実施しています。 NABの今回の変更は、CBAのアプローチと並び、学生債務が住宅市場に与える影響を軽減しようとする業界全体の動きを反映していると言えるでしょう。
この新方針は、NABがお客様のニーズに耳を傾け、より良い金融サービスを提供しようとする姿勢の表れです。特に、若い世代の住宅購入を強力に後押しすることで、長期的な顧客基盤の強化にも繋がることが期待されます。7月31日以降、NABの住宅ローン審査は、HELP債務を持つ方々にとって、これまで以上にアクセスしやすくなるはずです。
金融犯罪対策の強化:AUSTRACとの合意完了と今後の展望
2025年7月25日、NABは、オーストラリアの金融情報機関であるAUSTRAC(オーストラリア金融情報機関)との間で締結されていた**「強制履行合意(Enforceable Undertaking: EU)」が最終的に完了した**と発表しました。これは、NABがアンチ・マネーロンダリング(AML)およびテロ資金供与対策(CTF)法に関する義務を遂行したことを意味します。
このEUは、2022年4月にNABとその他4つの関連会社が、オーストラリアのAML/CTF法の遵守における不備に対処するために締結したものでした。具体的には、顧客の本人確認手続き、継続的な顧客デューデリジェンス、およびAML/CTFプログラムの採用と維持における懸念事項が対象となっていました。
AUSTRACのCEOであるブレンダン・トーマス氏は、NABが継続的なコンプライアンスと、重大な組織犯罪がもたらすリスクと危害への対処にコミットしていることを示していると述べています。 「このEUの完了は、NABが達成した進歩を反映していますが、これだけでビジネスが完全に健全になったわけではありません」とトーマス氏は付け加えています。 また、彼は「EUはNABを正しい道に乗せましたが、コンプライアンスは一度きりの仕事ではありません。継続的かつ漸進的な変化が求められます。AUSTRACはNABがシステムとプロセスの改善を継続することを期待しています」と強調しています。
独立した外部監査人が、NABがEUの条項を満たしたことを確認しており、銀行の透明性、説明責任、そして持続可能な改善へのコミットメントを評価しています。 さらに、外部監査人は、EUの範囲外で、銀行のAML/CTFプログラムをさらに強化するための追加の提言を行っており、NABはこれらの提言をすべて受け入れています。これには、取引監視と保証フレームワークに関する改善が含まれています。
NABのCEOであるアンドリュー・アーバイン氏は、EUの完了を歓迎し、「AUSTRACおよび外部監査人との透明で建設的なプロセスを通じて、NABは金融犯罪管理へのアプローチを変革しました」とコメントしています。 彼はまた、銀行が追加の勧告を実行することにもコミットしており、「私たちは、金融犯罪がお客様と社会にもたらす課題に引き続き焦点を当てています。銀行は疑わしい、そして潜在的に犯罪的な活動を監視し報告する上で重要な役割を担っており、お客様、コミュニティ、そして銀行を安全に保つための投資を継続していきます」と述べています。
このEUの完了は、NABが過去のコンプライアンス問題から学び、より強固な内部統制とリスク管理体制を構築するための大きな一歩を示しています。金融犯罪対策は、グローバルな金融システムにおいて最も重要な課題の一つであり、NABがこの分野で継続的な改善と投資を行うことは、顧客の信頼を維持し、銀行の健全な運営を確保するために不可欠です。今回の合意完了は、NABが金融機関としての社会的責任を果たす上で、重要な節目となるでしょう。
2025年上半期業績と配当発表:堅調な財務基盤を維持
NABは2025年5月6日、2025年3月31日を期末とする上半期(Half Year)の業績を発表しました。 この発表によると、NABは依然として堅調な財務パフォーマンスを維持しており、株主への還元も継続しています。
具体的には、**2025年上半期の純利息収入(Net Interest Income)は84億5,000万豪ドル**となり、前年同期の83億9,800万豪ドルから微増となりました。 また、**純利益は34億700万豪ドル**を計上しましたが、前年同期の34億9,400万豪ドルからはわずかに減少しました。 基本的な一株当たり利益(Basic Earnings Per Share)は1.112豪ドルでした。
NABのCEOであるアンドリュー・アーバイン氏は、この上半期の業績について、「2025会計年度を順調にスタートさせました。第1四半期の業績は堅調であり、刷新された戦略の実行が進んでいます」とコメントしています。 特に、預金パフォーマンスの向上に注力した結果、預金残高が2%増加したことを強調しています。 オーストラリア国内の住宅ローン貸付も1%成長し、中小企業向けビジネス貸付も1%の成長を含む2%の増加を見せています。
そして、株主にとって最も注目すべき点の一つが、**2025年中間配当として普通株式1株あたり85セントの配当**が発表されたことです。 この配当は100%フランク(Franked)されており、30%の法人税率で源泉徴収された税金が完全に相殺されることを意味します。 配当の支払日は2025年7月2日でした。 この配当により、合計26億豪ドルが株主の皆様に還元される予定です。
さらに、NABは2025会計年度の第3四半期(Q3)の取引状況更新を、**2025年8月18日**に発表する予定です。 このアップデートでは、NABの直近の事業運営と財務状況に関するさらなる洞察が提供されることになります。投資家や市場関係者は、この発表を通じて、NABが設定した生産性向上目標(2025会計年度に4億豪ドル超の生産性向上)や、営業費用増加率を2024会計年度の4.5%よりも低く抑える目標に対する進捗を注視することでしょう。
上半期の堅調な業績と配当の維持は、NABが現在の経済状況において、慎重かつ効果的なバランスシート管理を行っていることを示唆しています。コスト・オブ・リビング(生活費)の上昇や金利変動といった課題が続く中でも、NABは顧客を支援しつつ、銀行の安全性を確保するための強固な財務基盤を維持しています。
最新経済見通し:財政政策とRBAの金利動向
NABグループエコノミクスは、2025年7月23日に発表した経済見通し「NAB Economic Update」において、オーストラリアの経済情勢に関する最新の分析と予測を共有しました。 この報告書は、特に財政政策の方向性と、オーストラリア準備銀行(RBA)の金融政策の今後の展開に焦点を当てています。
2025-26会計年度の連邦政府および州政府の財政政策設定は、概ね「中立的」であるとNABは見ています。 これは、2024-25会計年度に見られた財政刺激策から一歩後退した形となります。予算予測では、2026-27会計年度には財政政策が「収縮的」に転じる可能性が示唆されていますが、これは州政府の支出成長率がほぼゼロにまで減速するという「あり得ない」シナリオに基づいているとNABは分析しています。 したがって、今後の政策決定によって支出が追加され、財政赤字が増加する可能性が高いとNABは考えています。
このような財政政策の「中立的」な設定への移行は、NABの金融政策に関する見方を裏付けるものとなっています。NABは、RBAが今後、**さらに3回、それぞれ25ベーシスポイントの利下げを実施し、キャッシュレートを最終的に3.1%まで引き下げる**と予想しています。 これらの利下げは、2025年8月、11月、そして2026年2月に実施されると見込まれています。
経済活動、労働市場、インフレに関するNABの予測は、現時点では変わっていません。NABは、2025年後半にはインフレ率が約2.5%に落ち着くと予想しており、これはRBAの目標範囲内に収まる水準です。 また、国内総生産(GDP)成長率は、2026年にはトレンドレベルまで加速すると見ており、2025年後半には失業率が最大4.4%に達すると緩やかに上昇すると予測しています。
NABの2025年5月の月次ビジネス調査(NAB Monthly Business Survey)によると、ビジネス環境は再び悪化し、5月には0ポイントに低下しました。 2024年後半から2025年初頭にかけて、環境指数は着実に低下しており、現在のトレンドでは平均の+6ポイントから+2ポイントまで低下しています。 企業信頼感は5月に再び改善しましたが、トレンドとしては依然として長期平均を下回っています。 収益性は-4ポイントと依然として低迷しており、雇用指数も5月には3ポイント低下し、新たな循環的低水準を記録しました。
コスト面では、労働コストの成長は堅調(四半期換算で1.7%)である一方、購入コストの成長は緩和(1.1%)し、最終製品価格の成長も鈍化(0.5%)しました。 対照的に、小売価格の成長は4月時点で1.2%と横ばいでした。 この調査結果は、収益性のプレッシャーと需要の軟化が続く中で、ビジネス環境が依然として弱いことを示唆しており、労働需要のさらなる軟化の兆候も見られます。
全体として、NABの経済見通しは、オーストラリア経済が課題に直面しつつも、緩やかな回復経路をたどるという見方を示しています。RBAの金利政策が経済の安定化に寄与し、企業のAIやサイバーセキュリティへの投資が生産性向上を促すことが期待されます。
サステナビリティへの取り組み:NABの環境ファイナンス目標と再生可能エネルギー戦略
NABは、持続可能な未来へのコミットメントを明確にし、環境問題への積極的な取り組みを続けています。2025年においても、そのサステナビリティ戦略はNABの事業の中心に据えられています。
NABは、**2030年までに800億豪ドルの新規環境ファイナンス目標**を設定しています。 この目標は、お客様が持続可能な未来に向けて投資するのを支援することを目的としており、2023年10月1日から2030年9月30日までの期間が対象です。 2024年9月30日時点で、NABはこの目標に対して既に70億豪ドルを超える資金を提供しており、その内訳は40億豪ドルが融資活動、33億豪ドルが資本市場活動に充てられています。 注目すべきは、NABが以前設定していた2025年までに700億豪ドルの環境ファイナンス目標を、2022年には既に8億豪ドル上回って達成していたことです。
さらに、NABは自社の事業運営における排出量削減にも注力しています。**2025年6月30日までには、NABグループの事業運営における電力消費量の100%を再生可能エネルギー源から調達する**という目標を掲げています。 2024年の環境報告年度には、この目標に向けて大きな進捗を遂げており、再生可能エネルギー源から調達される電力の割合を約95%まで増加させました。 これは、RE100イニシアチブの一環としての取り組みであり、NABの持続可能性への強い意志を示すものです。
気候変動対策ロードマップの一環として、NABは**2040年までに排出量ネットゼロを達成し、2030年までに100%再生可能エネルギーを調達する**という野心的な目標も設定しています。 2023年には、世界の温暖化を1.5℃に抑えるという経路に沿うよう、スコープ1および2(市場ベース法)の運用排出量削減目標を科学的根拠に基づいて更新しました。 具体的には、2022年のベースラインに対して、2030年までに市場ベースのスコープ1および2排出量を72%削減することを目指しています。 2024年には、既に57%の削減を達成しており、順調に進捗していることが伺えます。
また、NABは、特定のセクターおよび特定の種類の金融における顧客に対して、**2025年10月1日から「顧客移行計画(Customer Transition Plan)」の策定を義務付ける**意向を表明しています。 これに対応するため、2024年には「顧客移行計画評価フレームワーク」を開発し、顧客の行動と進捗をレビューし、関与を深めるための支援を行っています。 これは、石油・ガス、冶金用石炭、および石炭火力発電に25%超依存する発電セクターの企業が対象となることが示唆されています。
NABのサステナビリティへの取り組みは、単なる環境保護に留まらず、持続可能な経済成長を支援し、気候変動関連のリスクを管理するための重要な戦略的柱となっています。これらの目標達成に向けたNABの努力は、金融業界全体の模範となることでしょう。
デジタル変革とAI戦略:未来のバンキング体験を創造
NABは、急速に進化するテクノロジー環境に対応するため、デジタル変革と人工知能(AI)の活用を戦略の中核に据えています。これは、顧客体験の向上、業務効率の改善、そして将来の成長機会の確保を目指すものです。
NABは、2022年11月に刷新されたテクノロジー戦略を発表しており、「デジタルファースト」を最初の柱に掲げています。 これは、顧客と従業員のための「適応性の高いデジタル体験」を創造することに重点を置いています。NABの技術・運用担当役員であるパトリック・ライト氏は、「デジタル体験を適切にし、それを顧客と同僚の選択肢として可能な限り頻繁に提供することに重点を置き続けること」が重要だと述べています。
AIの統合は、NABのデジタル戦略における重要な要素です。NABの最新の「ビジネスインサイト」によると、**2025年には企業におけるAIの導入が加速し、サイバーセキュリティへの投資も増加する**と予測されています。 具体的には、約3社に1社(32%)の企業が2025年にAIに投資すると予想しており、41%の企業がビジネス強化のためにテクノロジー全体の導入を増やすと予測しています。 NAB自身も、詐欺や詐欺行為から顧客を保護するため、BioCatch Trust Australiaへの参加を通じて、銀行間のリアルタイムでの情報共有ネットワークを構築しています。
NABのビジネス担当役員であるジュリー・リンスキー氏は、「2024年がAIの役割に関する見出しと誇大広告の年だったとすれば、**2025年はオーストラリアの企業がAIを真剣に活用し始める年になるでしょう**」と述べています。 企業はまた、新しいテクノロジーをワークフローに統合するにあたり、サイバーセキュリティ能力を強化しようとしており、2025年には30%の企業がサイバーセキュリティに投資を検討しています。 35%以上の企業が、今年、サイバーセキュリティと詐欺のリスクが増加すると予測しています。
NABは、AIを活用して銀行業務をより人間的にする方法についても研究を進めています。 これは、AIが単なる効率化ツールではなく、顧客サービスや体験の質を高めるための手段として捉えられていることを示唆しています。また、ジェネレーティブAIが生産性、顧客体験、そして産業界全体のデジタル変革に与える影響についても深く掘り下げています。
NABのテクノロジー戦略のもう一つの柱は、「プラットフォームマインドセット」と、それに伴う銀行全体のプラットフォームの構築です。 これは、複雑な環境を簡素化し、自動化を進めることで、より迅速なサービス提供を目指すものです。 NABは、ビジネスごとの特注ソリューションから、ビジネス全体で自動化できる簡素化された方法へと移行することに注力しています。
NABのデジタル変革とAI戦略は、単に最新技術を導入するだけでなく、それらを活用して顧客中心のサービスを再構築し、変化の激しい市場環境で競争優位性を確立しようとするNABの強い意志を反映しています。これにより、NABは未来のバンキングのあり方を積極的に創造していくことでしょう。
中小企業向けサポートとブローカーチャネルの強化
NABは、オーストラリア経済の基盤を支える中小企業(SME)セクターへの支援と、住宅ローン市場におけるブローカーチャネルの強化に引き続き注力しています。これは、お客様との関係深化と市場シェア拡大のための重要な戦略的要素となっています。
NABは、オーストラリア最大のビジネスバンクとして、事業を営むお客様への強力なコミットメントを掲げています。NAB Group Economicsの最新予測によると、オーストラリア経済は2025年も堅調に推移し、年間1.8%の成長が見込まれています。 この成長は、SME融資、医療サービス、地域産業を含む様々なビジネスセグメントで力強いものになるとNABは予想しています。
特に、**ブローカーチャネルはNABの住宅ローン事業において不可欠な存在**です。2025年上半期において、**住宅ローン実行額の61.1%がブローカーを介して行われた**とNABは報告しており、ブローカーがNABの成功においていかに重要な役割を担っているかを強調しています。 NABはブローカーとのパートナーシップ強化に重点を置いており、承認プロセスを合理化するためのデジタルプラットフォームへの投資を通じて、ブローカーが顧客に優れたサービスを提供できるよう支援しています。 「私たちは常にブローカーの声に耳を傾け、ブローカーが私たちと取引しやすくする方法を探しています」と、NABの関係者は述べています。
中小企業向けには、NABは引き続き様々な支援策を提供しています。例えば、**NABとオーストラリア政府のクリーンエネルギー金融公社(Clean Energy Finance Corporation)が支援する3億豪ドルの新規プログラムの一環として、排出量削減技術や実践に投資する企業や農家に対してグリーンローンが提供されています**。 これは、企業が持続可能な事業運営に移行するための財政的支援を提供するものです。
また、NABは、マルチオフセットアカウントの導入(2月)など、革新的な製品やサービスを提供し、顧客からの肯定的なフィードバックを得ています。 これらの取り組みは、顧客の多様なニーズに応え、より柔軟な金融ソリューションを提供しようとするNABの姿勢を反映しています。
NABは、ビジネス顧客が直面する重要な課題の一つとして、**事業継承計画と世代間の富の移転**を挙げています。NABの担当者は、「これらの分野は、ブローカーが資金調達ソリューションを提供し、顧客との長期的な関係を構築する機会を生み出します」と指摘しています。
現在のビジネス環境は、コスト圧力が上昇すると予測されているものの(76%の企業が予想)、33%の企業は収益の増加を予測しています。 NABは、機敏な運営戦略を持つ企業が、価格競争の激しい市場でも成長を達成できる可能性があると見ています。
NABの中小企業向けサポートとブローカーチャネルの強化は、同行が顧客との関係を深め、市場の変化に迅速に対応し、持続的な成長を実現するための基盤を構築していることを示しています。これらの戦略は、オーストラリア経済全体の活力向上にも貢献するでしょう。
まとめ
2025年、NAB(ナショナル・オーストラリア銀行)は、お客様中心の戦略をさらに深く追求し、多方面で目覚ましい進展を遂げています。特に注目すべきは、**2025年7月31日より施行される、住宅ローン申請における20,000豪ドル以下の学生債務(HELP債務)不考慮の新方針**です。 この画期的な変更は、特に若年層の住宅購入を強力に後押しし、オーストラリアの住宅市場に新たな活気をもたらすことが期待されています。NABは、この規制緩和を歓迎しつつも、住宅供給の課題解決に向けた需要と供給の両面からのアプローチの重要性を強調しています。
また、NABは、長年にわたる金融犯罪対策の強化に向けた重要な節目を迎えました。**2025年7月25日には、AUSTRACとの強制履行合意(EU)が完了した**と発表し、AML/CTF法遵守における改善へのコミットメントを示しました。 これは、銀行の内部統制とリスク管理体制が大きく前進した証であり、今後の金融システム全体の健全性向上にも寄与するでしょう。NABは、外部監査人からの追加勧告も受け入れ、継続的な改善に努める姿勢を明確にしています。
財務面では、2025年3月31日を期末とする**上半期において、純利息収入84億5,000万豪ドル、純利益34億700万豪ドルを計上し、堅調な業績を維持しました**。 そして、**普通株式1株あたり85セントの中間配当**を実施し、株主への安定した還元を継続しています。 次なる重要な財務情報は、2025年8月18日に予定されている第3四半期の取引状況更新で明らかにされる予定です。
経済全体を見据えたNABの見解としては、2025-26会計年度の財政政策は「中立的」に推移すると分析されており、オーストラリア準備銀行(RBA)は、**キャッシュレートを最終的に3.1%まで引き下げるために、さらに3回の25ベーシスポイントの利下げを実施する**と予測されています。 ビジネス環境は依然として課題を抱えているものの、NABは経済の緩やかな回復を予測しており、特に中小企業の成長に期待を寄せています。
サステナビリティへの取り組みもNABの重要な戦略的柱です。**2030年までに800億豪ドルの新規環境ファイナンス目標**を設定し、既に70億豪ドルを超える資金を提供しています。 また、**2025年6月30日までに事業運営における電力消費量の100%を再生可能エネルギーで賄う**という目標達成に向けて、2024年には約95%に達するなど、目覚ましい進捗を見せています。 さらに、特定の高排出セクターの顧客には、2025年10月1日から「顧客移行計画」の策定を義務付けるなど、具体的な行動を促しています。
デジタル変革とAIの活用は、未来のバンキング体験を創造するためのNABの主要な推進力です。**2025年には、オーストラリアの企業におけるAI導入が加速し、サイバーセキュリティへの投資も増加する**とNABは予測しており、自身も「デジタルファースト」のアプローチとAI技術を積極的に取り入れ、顧客サービスの向上と業務効率化を図っています。
中小企業向けサポートとブローカーチャネルの強化も、NABの成長戦略において不可欠です。住宅ローン実行額の61.1%がブローカーを介しており、NABはブローカーとの連携を深め、デジタルプラットフォームへの投資を通じて、中小企業を含むお客様への包括的な支援を提供しています。
NABは、変化の激しい現代において、お客様のニーズに応え、社会的な責任を果たしながら、持続可能な成長を目指しています。住宅ローン緩和から金融犯罪対策の完了、そして未来を見据えたデジタル戦略やサステナビリティへのコミットメントに至るまで、NABの2025年の動向は、金融業界の新たな標準を築き、オーストラリア経済の発展に貢献するものです。今後のNABのさらなる発展に注目していきましょう。