トランプ政権下における日本製鉄のUSスチール買収計画に関する動向
トランプ大統領による買収計画への対応変化
2025年2月7日、ドナルド・トランプ大統領は訪米中の石破茂首相とのホワイトハウスでの会談後、記者会見において、日本製鉄によるUSスチールの買収計画について、「買収ではなく、多額の投資を行うことで合意した」と発表しました。 これは、バイデン前政権が国家安全保障上の理由から買収を阻止する命令を出していたこと、そしてトランプ大統領自身も以前から買収に反対の意向を示していたことを踏まえると、大きな転換を示しています。 トランプ大統領は、USスチールが重要な会社であり、買収という形ではなく、大規模な投資によって取引が成立すると述べました。具体的な合意内容は明かされませんでしたが、ウォール・ストリート・ジャーナルは、日本企業がアメリカの鉄鋼市場に参入する新たな道を開く可能性があると報じています。 さらにトランプ大統領は、来週にも日本製鉄のトップと会談し、「仲介と仲裁」を行うと発表しました。石破首相も、買収ではなく投資であること、そして一方的な関係にならないことを大統領と強く認識を共有したと述べています。 この発表は、バイデン前政権による買収阻止命令に対して、日本製鉄とUSスチールがアメリカ政府を提訴している状況下で行われたものです。
トランプ大統領のUSスチール買収計画に関するこれまでの発言
トランプ大統領は、2024年の大統領選期間中から、日本製鉄によるUSスチールの買収に繰り返し反対の姿勢を示していました。 自身のSNSでは、「かつて偉大で強力だったUSスチールが外国企業に買収されることに全面的に反対する」と表明し、「大統領として私はこの取引を阻止する」と警告していました。 また、関税導入によってUSスチールの企業価値を高められることから、売却に疑問を呈する発言も行っていました。 しかし、今回の発表では、以前の強い反対姿勢から一転して、投資という形での日本製鉄のUSスチールへの関与を容認する姿勢を示しました。
日本製鉄とUSスチールによる対応
日本製鉄は、2023年にUSスチールを149億ドルで買収する計画を発表していましたが、バイデン前政権による買収阻止命令を受け、アメリカ政府を提訴していました。 日本製鉄は、長らくUSスチールへの投資を表明しており、買収計画がトランプ大統領の製造業や雇用創出、アメリカへの投資促進という施策と一致していると主張していました。 今回のトランプ大統領の発表を受け、日本製鉄は買収計画ではなく投資計画へと方針転換したとみられます。 しかし、具体的な投資額や投資内容については、現時点では明らかになっていません。
アメリカ国内の反応
アメリカ国内では、USW(全米鉄鋼労働組合)が日本製鉄による買収計画に反対の立場をとってきました。 マッコール委員長は、トランプ大統領の発表後、声明の中で日本製鉄がUSスチールに引き続き関心を持っていることへの懸念を改めて表明し、日本製鉄を「貿易詐欺の常習犯」と批判しました。 さらに、トランプ大統領に対し、アメリカ企業による代替案を模索することで国内鉄鋼業界の長期的な未来を守り続けるよう要望しました。 これは、トランプ政権と日本製鉄、USスチール間の合意に、労働組合が警戒感を抱いていることを示しています。 政権や両社から連絡を受けていないと述べている点も、この警戒感を裏付けています。
日米首脳会談における合意内容
日米首脳会談では、日本製鉄のUSスチール買収計画に加え、対日貿易赤字の解消についても議論されました。 トランプ大統領は、日本に対する関税の可能性は依然としてあるものの、貿易赤字は解消できると述べました。 石破首相は、関税の可能性について詳細を明らかにせず、「仮定の質問にはお答えいたしかねます」と日本の定番の国会答弁を用いて笑いを誘いました。 トランプ大統領は、この返答を高く評価しました。 会談では、日本がアメリカにとって主要な経済パートナーであること、そして日本企業がアメリカで多くの雇用を創出していることも強調されました。 これらの発言は、日米間の良好な経済関係を維持する意向を示唆しています。