知らないと損する!バンダイナムコの海外売上50%目標を支える国際イベント戦略の7つの鉄則

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「あのお祭り、そんなに凄いの?」バンダイナムコのイベント戦略の裏側、知りたくないですか?

「またバンダイナムコが海外で大きなイベントやってるな。楽しそうだけど、あれってただのお祭り騒ぎじゃないの?」 「ガンダムやドラゴンボールが海外で人気なのは知ってるけど、その人気をどうやって維持・拡大してるんだろう?」 「企業の戦略って聞くと難しそうだけど、エンタメの裏側ならちょっと覗いてみたいかも…」

もしあなたが一度でもこんな風に感じたことがあるなら、この記事はまさにあなたのためのものです。

多くの人が、バンダイナムコが世界中で開催する華やかな国際イベントを、単なるファンサービスや新作発表の場だと考えています。しかし、その背後には、同社が掲げる「海外売上比率50%」という壮大な目標を達成するための、緻密に計算され尽くした企業戦略が隠されているのです。

この記事を読めば、あなたが得られることは3つあります。

  1. . エンタメニュースが10倍面白くなる視点: 次にイベントのニュースを見たとき、その裏にある戦略的な意図を読み解けるようになり、ただの消費者から一歩進んだ「事情通」になれます。
  2. . ビジネス思考が身につく: 一見、華やかに見えるエンタメ業界の裏側で、いかにしてファンを熱狂させ、ビジネスとして成立させているのか。その「仕組み」を知ることで、あなたの仕事にも活かせるヒントが見つかるはずです。
  3. . 「誰かに話したくなる」雑学が得られる: 「知ってた?バンダイナムコのイベントって、実は地域ごとに内容をガラッと変えてるんだよ」なんて、飲み会や友人との会話で披露したくなるような、面白い発見が満載です。
  4. さあ、あなたもバンダイナムコが仕掛ける壮大なグローバルエンターテインメントの舞台裏を、一緒に覗きに行きましょう!

    結論:バンダイナムコの国際イベントは「ファンとの絆を深める最強の装置」である

    いきなり結論からお伝えします。バンダイナムコにとって、国際イベントとは単なる販促活動ではありません。それは、同社の経営の根幹をなす「IP軸戦略」を世界中のファンに直接届け、熱狂的なコミュニティを形成し、ファン一人ひとりとの絆を深めるための「最強のコミュニケーション装置」なのです。

    この戦略の目的は、以下の3つに集約されます。

    • 接点の最大化: ゲーム、アニメ、ホビー、音楽といった様々な形でIPに触れる機会をリアルな場で提供し、新たなファンを獲得する。
    • 熱量の向上: 限定グッズの販売や体験型コンテンツを通じて、既存ファンの「好き」という気持ちをさらに燃え上がらせる。
    • LTV(顧客生涯価値)の最大化: イベントでの感動体験を通じて、長期的にIPを愛し、応援してくれる生涯のパートナーになってもらう。

    つまり、一つひとつのイベントは、壮大なバンダイナムコ経済圏へとファンをいざなう、極めて重要な入り口の役割を果たしているのです。

    鉄則1:すべては「IP軸戦略」のために!国際イベントが果たす究極の役割

    「そもそも、IP軸戦略って何?」という方も多いかもしれませんね。大丈夫です、全く難しくありません。

    IP軸戦略とは、バンダイナムコグループの強みそのものであり、「機動戦士ガンダム」や「ドラゴンボール」「ワンピース」といった強力なIP(キャラクターなどの知的財産)を軸に、ゲーム、玩具、映像、音楽、イベントなど、様々な事業を連携させて展開することで、IPの価値を最大化する戦略のことです。

    例えば、「ガンダム」という一つのIPをとっても、

    • デジタルユニット: 家庭用ゲームやスマホアプリを開発・販売する
    • トイホビーユニット: ガンプラやフィギュアを製造・販売する
    • 映像音楽ユニット: 新作アニメを制作・配信する
    • アミューズメントユニット: ゲームセンターやテーマパークを運営する

    といったように、グループ全体でファンとのあらゆる接点を創出し、収益機会を最大化しているのです。

    国際イベントは「IP軸戦略」のショーケース

    では、この戦略において国際イベントはどのような役割を担っているのでしょうか?

    答えは、「IP軸戦略の体験型ショーケース」です。

    国際イベントの会場に足を踏み入れると、そこにはバンダイナムコのIPが溢れています。最新ゲームの試遊台が並び、その横では限定ガンプラが販売され、奥のステージではアニメの声優がトークショーを行っている…といった光景が広がります。

    これは、ファンに「点」でしかなかった各事業(ゲーム、ホビー、アニメ)を、イベントという場で「線」や「面」として繋ぎ合わせ、「IPの世界に浸る」という最高の体験を提供しているのです。

    プロの視点:「サイロ化」を防ぐイベントの力

    多くの巨大企業が陥りがちなのが、事業部ごとの「サイロ化」です。つまり、ゲーム部門はゲームのことだけ、玩具部門は玩具のことだけを考えてしまい、連携がうまく取れない状態です。

    あるベテランマーケター(仮に鈴木さんとしましょう)は、以前こんな失敗を経験したそうです。 「昔、あるゲームの海外プロモーションで、現地のイベントにブースを出したんです。ゲームの試遊は盛況だったんですが、来場者の多くが『このキャラクターのTシャツはないの?』『フィギュアはどこで買えるの?』と聞いてきました。でも、当時はグッズ部門との連携が薄く、何も用意できていなかった。せっかくファンが熱狂してくれているのに、その熱を受け止める皿を用意できていなかったんです。ものすごい機会損失でした」

    バンダイナムコの国際イベント戦略が優れているのは、まさにこの逆を行っている点です。イベントを企画する段階から、ゲーム、ホビー、映像など、グループ内の関連部署が密に連携する「ALL BANDAI NAMCO」体制を構築しています。 これにより、ファンが「これが欲しい!」と思った瞬間に、最適な商品やサービスを提供できる体制を整えているのです。

    連携する事業部 イベントでの具体的な施策例 ファンが得られる体験価値
    デジタルユニット(ゲーム) 最新作の試遊、eスポーツ大会の開催 誰よりも早く新作に触れる興奮、競技としての楽しさ
    トイホビーユニット(玩具) イベント限定商品の販売、プロの作例展示 ここでしか手に入らないという所有欲、創作意欲の刺激
    映像音楽ユニット(アニメ) 声優や制作陣によるトークショー、新作映像の先行公開 作品の裏側を知る喜び、世界観への没入感
    アミューズメントユニット アーケードゲームの出展、プライズ景品の先行投入 リアルな場での対戦の楽しさ、景品獲得の達成感

    このように、国際イベントは単なる個別の製品のプロモーションの場ではなく、バンダイナムコが持つIPの魅力を多角的に伝え、ファンをより深く、広く繋ぎとめるための、極めて戦略的な「ハブ」として機能しているのです。

    鉄則2:熱狂を世界へ!ゲームイベントを制する者の世界戦略

    エンターテインメント業界、特にゲーム市場において、国際的な大型イベントでの発表は、その後のタイトルの成否を大きく左右する重要なマイルストーンです。バンダイナムコは、この舞台を最大限に活用し、世界中のゲームファンの期待感を最高潮に高める戦略に長けています。

    かつて業界の最重要イベントとされた「E3(Electronic Entertainment Expo)」や、ヨーロッパ最大のゲームショウ「Gamescom」、そして年末の「The Game Awards」など、世界が注目するイベントで、バンダイナムコは数々の伝説的な発表を行ってきました。

    「ELDEN RING」にみる期待感の醸成術

    近年の最大の成功例といえば、全世界で記録的な大ヒットとなった「ELDEN RING」でしょう。

    フロム・ソフトウェアとの共同開発というだけでもビッグニュースですが、バンダイナムコは情報を小出しにすることで、ファンの期待感を巧みにコントロールしました。最初の発表から発売まで、ファンはまさに焦らされ続けたのです。

    SNSではこんな声が飛び交っていました。

    > 「次のトレーラーはいつだ!?もう待ちきれない!」

    > 「断片的な情報から世界観を考察するのが楽しすぎる。

    EldenRing」

    > 「バンナムはファンの心を弄ぶ天才かよ…(褒め言葉)」

    これは、単に情報を隠していたわけではありません。どのイベントで、どのタイミングで、どのくらいの情報を公開すれば、ファンの熱狂が最大化するかを徹底的に計算した上での戦略的な情報コントロールなのです。

    そして、満を持して公開されるゲームプレイトレーラー。その圧倒的なクオリティと世界観に、ファンは熱狂し、その熱がさらに新たなファンを呼び込むという好循環を生み出しました。大型ダウンロードコンテンツ「SHADOW OF THE ERDTREE」のプロモーションでも、本編の好調な販売を維持しつつ、緻密に組み立てられた情報発信によって新規ファンの獲得に成功しています。

    プロの視点:発表イベントの選定と「リーク」の功罪

    「どのイベントで発表するか」は、マーケティング担当者が最も頭を悩ませる問題の一つです。

    「正直、どのイベントも一長一短なんです」と、あるゲーム会社の海外マーケティング担当、高橋さん(仮名)は語ります。

    「例えば、Gamescomは来場者数が圧倒的に多いので、多くの人に試遊してもらえるメリットがあります。一方で、The Game Awardsは年末の“お祭り”なので、そこで『GOTY(Game of the Year)』を受賞すれば、一気に箔が付きます。タイトルの特性や、その時点でどこまで情報を見せられるかによって、最適な発表の場は変わってくるんです」

    さらに、担当者を悩ませるのが、いわゆる「リーク情報」です。 「意図しない情報流出は、本来のサプライズ感を削いでしまう最悪の事態です。しかし、一方で、信憑性の高いリーク情報がSNSで拡散されることで、結果的にファンの期待感を高めるという側面も否定できません。このコントロールできない要素をどう扱うかが、プロモーションの腕の見せ所でもありますね」

    バンダイナムコは、こうした各イベントの特性を深く理解し、タイトルごとに最適なマーケティング戦略を描くことで、ワールドワイドでのヒット作を継続的に生み出しているのです。

    鉄則3:「モノ」から「コト」へ!ホビーイベントで育むファンコミュニティ

    バンダイナムコの強みは、ゲームだけではありません。ガンプラに代表されるトイホビー事業は、同社の屋台骨を支える非常に重要な柱です。 そして、このホビー事業における国際イベント戦略のキーワードは「コミュニティ」です。

    彼らは単に「モノ(製品)」を売るのではなく、製品を通じてファンが集い、交流し、創造する「コト(体験)」を提供することに注力しています。

    世界一のガンプラビルダーは誰だ?「GBWC」の熱狂

    その象徴的な存在が「GBWC(GUNPLA BUILDERS WORLD CUP)」です。これは、世界中のガンプラファンが自慢の作品を持ち寄り、その技術とアイデアを競い合う、まさにガンプラの世界大会。

    地域予選を勝ち抜いた猛者たちが、日本で開催される世界決勝大会に集結します。その作品レベルは年々向上し、もはや「プラモデル」という言葉では収まりきらない、芸術の域に達しています。

    このイベントの凄いところは、以下の2点です。

    1. . ファンの目標となる場を提供: 「いつかは自分もあの舞台に…」という憧れが、ファンの創作意欲を刺激し、技術向上へと繋がります。
    2. . グローバルなファンコミュニティを可視化: 国や言語の壁を越えて、「ガンプラが好き」という共通言語でファンが繋がる場を創出しています。
    3. SNSには、各国の代表を応援する声や、驚異的な作品への称賛が溢れます。

      > 「インドネシア代表の作品、塗装が神がかってる…!どうやったらこんな表現ができるんだ?」 > 「フランス代表のジオラマ、ストーリー性がすごい。泣ける。」

      > 「俺も来年こそはエントリーするぞ!

      GBWC」

      バンダイナムコは、コンテストという「ハレの舞台」を用意することで、ファンに明確な目標を与え、コミュニティ全体の熱量を底上げしているのです。

      現地ファンとの接点を生む「Gundam Base」と限定品戦略

      もう一つ重要な戦略が、公式ガンプラ総合施設「THE GUNDAM BASE」の海外展開です。 北米やアジアの主要都市に拠点を構え、豊富な品揃えはもちろん、プロの作例展示や塗装スペースなどを提供することで、ガンプラ文化の発信基地としての役割を担っています。

      そして、国際イベントやGundam Baseで巧妙に活用されているのが「限定品」の存在です。

      「Anime Expo限定」「New York Comic Con限定」といった商品は、ファンの収集欲を強く刺激します。 これは単なる販売促進ではありません。

      • イベントへの来場動機: 「あの限定品を手に入れるために、イベントに行かなくては!」という強い動機付けになります。
      • 優越感と特別感の提供: 手に入れたファンに「自分は特別なものを手に入れた」という満足感を与え、IPへの忠誠心を高めます。
      • SNSでの拡散: 購入報告がSNSに投稿されることで、「羨ましい」「自分も欲しかった」という声が広がり、次回のイベントへの期待感を醸成します。

      多くの人がやりがちな失敗談:「限定品」戦略の落とし穴

      ただし、この限定品戦略は諸刃の剣でもあります。ある玩具メーカーの企画担当者、田中さん(仮名)は、過去の苦い経験を語ってくれました。

      「海外のイベントで、初めて限定商品を企画した時のことです。どれくらい売れるか全く読めず、とりあえず控えめな数量で生産したんです。すると、イベント開始直後からファンが殺到し、あっという間に完売。買えなかったファンからはクレームの嵐で、SNSも大炎上してしまいました。挙句の果てには、高額で転売する人が続出し、本当に欲しいファンの手に行き渡らない最悪の状況に…。ファンのためを思った企画が、逆にブランドイメージを傷つける結果になってしまったんです」

      需要予測の難しさ、転売対策、そして何より「ファンの期待を裏切らない」というプレッシャー。バンダイナムコは、長年の経験から蓄積されたデータとノウハウを元に、この難しい舵取りを行い、限定品をファンとのエンゲージメントを高めるための強力なツールとして活用しているのです。

      鉄則4:リアルを超えろ!デジタルと融合する次世代のイベント戦略

      バンダイナムコの国際イベント戦略は、もはやリアルの場だけにとどまりません。彼らはデジタル技術を駆使し、時間や場所の制約を超えて世界中のファンと繋がるための、新たな挑戦を始めています。その最前線にあるのが「メタバース」です。

      ファンと共創する未来「ガンダムメタバースプロジェクト」

      バンダイナムコは、IPごとのメタバースを開発する計画を発表しており、その第一弾となるのが「ガンダムメタバースプロジェクト」です。

      これは、世界中のガンダムファンがアバターとなって集い、交流し、様々なコンテンツを体験できる仮想空間です。

      ガンダムメタバースでできること(構想含む)

      コロニー(空間) 内容
      ガンプラコロニー ファンが制作したガンプラのデータをスキャンし、仮想空間内に展示・鑑賞できる。
      eスポーツコロニー ガンダムゲームのeスポーツ大会を観戦・参加できる。
      ライブコロニー アーティストによる音楽ライブや、キャラクターとのコラボライブが楽しめる。
      ミュージアム ガンダムシリーズの歴史や設定を、メタバースならではの演出で体感できる。

      このプロジェクトの核心は、単にコンテンツを提供するだけでなく、ファンとの「共創」を目指している点にあります。 ファンが作ったガンプラがメタバースの世界を彩り、ファン同士の交流から新たなコミュニティが生まれる。バンダイナムコは、メタバースをファンが主役になれる場所として設計しているのです。

      意外な発見:メタバースは「地方ファン」の救世主?

      これまで、大規模な国際イベントに参加できるのは、開催地の近くに住んでいたり、旅行する経済的余裕があったりする一部のファンに限られていました。

      SNSでは、こんな切実な声も少なくありませんでした。

      > 「Anime Expo行きたかったけど、アメリカまではさすがに無理だ…」 > 「地方民だから、東京のイベントですらハードルが高い。グッズは通販で我慢。」

      ガンダムメタバースは、こうした物理的な制約を取り払い、「世界中の誰もが、いつでもガンダムの世界に参加できる」可能性を秘めています。これは、ファン層を飛躍的に拡大させる、まさに革命的なアプローチと言えるでしょう。

      もちろん、課題もあります。メタバースという概念自体がまだ新しく、誰もが気軽に楽しめる環境が整っているとは言えません。 しかし、バンダイナムコは「メタバースはあくまで手段。目的はファンコミュニティの活性化だ」と語っており、長期的な視点でファンと共にこの新しい世界を育てていこうとしています。 この挑戦は、リアルイベントとデジタルイベントが融合する、未来のファンエンゲージメントの形を予感させます。

      鉄則5:お国柄、出てます!ファンを虜にする地域別ローカライズ戦略

      バンダイナムコの国際イベント戦略が巧みなのは、全世界で画一的なイベントを展開するのではなく、各地域の文化やファンの特性に合わせて内容を細かく「ローカライズ(最適化)」している点です。 「Connect with Fans」という中長期ビジョンのもと、ファンと広く、深く、複雑につながることを目指しています。

      重点地域である北米、欧州、アジア(特に中国)では、それぞれ異なるアプローチでファンの心を掴んでいます。

      地域ごとのアプローチの違い

      地域 市場・ファンの特徴 イベント戦略のアプローチ例
      北米 ・家庭用ゲーム市場が巨大
      ・「ドラゴンボール」などアクション性の高いIPが絶大な人気
      ・自己表現やカスタマイズへの関心が高い
      ・「ドラゴンボール Sparking! ZERO」のような大型タイトルの試遊イベントツアーを実施
      ・コミコンなどで限定のアパレルやグッズを展開
      ・ファンアートのコンテストなどを積極的に開催
      ヨーロッパ ・PCゲームやボードゲーム文化が根強い
      ・「パックマン」など、クラシックなIPの知名度が高い
      ・アートやデザイン性へのこだわりが強い
      ・GamescomでPC版の新作を重点的にアピール
      ・IPをテーマにしたオーケストラコンサートなどを開催
      ・有名アーティストとのコラボ商品を企画
      アジア(中国など) ・スマホゲーム市場が急成長
      ・ガンダムなど、ロボット・メカ系IPの人気が非常に高い
      ・アイドル文化や「推し活」が盛ん
      ・現地のゲーム会社と共同でスマホゲームのイベントを実施
      ・上海に実物大フリーダムガンダム立像を設置し、観光名所化
      ・「アイドルマスター」シリーズのライブビューイングや限定グッズを展開

      このように、現地のファンの「ツボ」を的確に押さえた戦略を展開することで、バンダイナムコは世界中で強固なファンベースを築いているのです。この柔軟な戦略こそ、同社がグローバル市場で成功を収めている大きな要因と言えるでしょう。

      プロの視点:「本当にそれでいい?」ローカライズの難しさ

      「ローカライズは、単純に言語を翻訳すれば良いというものではありません」と、海外事業に長年携わる木村さん(仮名)は言います。

      「一番難しいのは、文化的な背景や“空気感”を理解することです。例えば、日本ではウケるジョークが、アメリカでは全く通じなかったり、場合によっては誰かを傷つけてしまったりすることもあります。イベントの司会者の選定一つとっても、その国で本当に人気があり、IPを理解してくれている人を起用しないと、ファンはすぐにソッポを向いてしまいます」

      ある時、木村さんのチームは、東南アジアのイベントで日本の人気声優を招いたトークショーを企画しました。日本では鉄板の企画ですが、現地のファンの反応はイマイチ。後で調査したところ、その国では吹き替え文化が主流で、日本の声優にはあまり馴染みがなかったことが判明したそうです。

      「現地のファンのことを理解しているつもりでも、まだまだ足りないと思い知らされた瞬間でした。それ以来、必ず現地のスタッフの意見を徹底的にヒアリングし、企画に反映させるようにしています」

      バンダイナムコが各国に現地法人を置き、現地のパートナー企業と密に連携しているのは、こうした失敗を避け、真にファンの心に響くローカライズを実現するためなのです。

      鉄則6:勘には頼らない!イベントの成否を分けるデータ活用術

      華やかな国際イベントの裏側で、バンダイナムコは非常に地道なデータ分析を行っています。ファンの熱狂という目に見えないものを、いかにしてデータとして捉え、次の戦略に活かしていくか。ここに、現代のマーケティングの神髄があります。

      イベントROIを最大化するデータドリブン・アプローチ

      イベントの企画段階から終了後まで、あらゆるデータが収集・分析されています。

      • イベント前:
      • SNSでの事前告知への反応(いいね、リポスト数、コメント内容)
      • 過去の類似イベントの参加者データ(属性、満足度)
      • チケットの販売ペース
      • イベント中:
      • 来場者数、滞在時間
      • 各ブースの混雑状況(どのコンテンツに関心が集まっているか)
      • グッズの販売データ(どの商品が人気か、購入者の属性)
      • イベント後:
      • 参加者アンケートによる満足度調査
      • SNS上での感想や写真の投稿数、その内容分析(ポジティブ/ネガティブ)
      • イベント後の関連商品の売上推移

      これらのデータを分析することで、「どの地域の、どんなファンが、何に興味を持っているのか」を高い精度で把握することができます。これは、次のイベント企画や、商品開発、プロモーション戦略を立てる上で、非常に貴重な羅針盤となります。

      意外な発見:グッズの売れ筋から次回作のヒントが?

      「イベントでのグッズ販売データは、宝の山ですよ」と語るのは、データアナリストの斎藤さん(仮名)です。

      「例えば、あるゲームのイベントで、メインキャラクターのグッズよりも、脇役である“キャラクターB”のアクリルスタンドが予想外に早く完売したことがありました。SNSでの反応を見ても、Bに関する言及が非常に多い。このデータはすぐに開発チームにフィードバックされました。結果、次のダウンロードコンテンツでは、そのキャラクターBを主役にしたシナリオが追加され、ファンから絶大な支持を得ることができたんです」

      これは、ファンの「声なき声」をデータから読み取り、製品開発に活かした好例です。勘や経験則だけに頼るのではなく、客観的なデータに基づいて意思決定を行う「データドリブン」な文化が、バンダイナムコの強さを支えています。

      鉄則7:究極の目標は「ファンのファン化」!従業員をも巻き込む熱狂の渦

      バンダイナムコの戦略の最終的な目標は、単にIPのファンを増やすことではありません。彼らが目指しているのは、「従業員のファン化」そして「ファンのファン化」です。

      「好き」を仕事にする情熱が最強の原動力

      バンダイナムコグループには、自社のIPや商品・サービスが心から好きで、情熱を持って仕事に取り組んでいる従業員が数多くいます。 彼ら自身が一番のファンであるからこそ、ファンの気持ちを深く理解し、心に響く企画を生み出すことができるのです。

      同社では、従業員のエンゲージメント(仕事への熱意や貢献意欲)を非常に重視しており、「従業員のファン化」を重点戦略の一つに掲げる部署もあるほどです。 従業員一人ひとりが「Fun for All into the Future」というパーパス(企業の存在意義)を自分事として捉え、実践することを目指しています。

      国際イベントの現場で、目を輝かせながら自社のゲームを来場者に説明するスタッフの姿は、何よりも雄弁にそのIPの魅力を伝えます。この内側から溢れ出る熱量こそが、AIには決して真似できない、人間味あふれるエンゲージメントを生み出すのです。

      ファンが新たなファンを創り出すエコシステム

      そして、熱狂的なファンは、最強のインフルエンサーになります。

      • イベントでの感動体験をSNSで発信する
      • 購入したガンプラを組み立て、その写真を投稿する
      • ゲームの攻略法や考察をブログや動画で共有する

      こうしたファンの自発的な活動が、新たなファンの興味を惹きつけ、「自分もその輪の中に入りたい」と思わせる。このファンがファンを創り出す好循環(エコシステム)こそ、バンダイナムコが目指す究極の姿です。

      国際イベントは、このエコシステムを加速させるための、最も強力な起爆剤なのです。会場で生まれた熱狂が、SNSを通じて世界中に伝播し、新たな熱狂を生んでいく。バンダイナムコは、この熱の連鎖をデザインすることに長けているのです。

      まとめ

      今回は、バンダイナムコの海外売上50%という壮大な目標を支える「国際イベント戦略」の裏側を、7つの鉄則から解き明かしてきました。最後に、この記事の要点を振り返ってみましょう。

      • IP軸戦略のショーケース: 国際イベントは、ゲーム、ホビー、アニメなど多岐にわたる事業を繋ぎ、IPの世界観を丸ごと体験させるための戦略的なハブである。
      • 熱狂のコントロール: ゲームイベントでは、戦略的な情報公開によってファンの期待感を最大化し、世界的なヒットを生み出す。
      • コミュニティの育成: ホビーイベントでは、コンテストや限定品を通じてファンが集う「コト」を提供し、強固なコミュニティを育んでいる。
      • デジタルとの融合: メタバースなどの新技術を活用し、時間や場所の制約を超えた次世代のファンとの繋がりを模索している。
      • 徹底したローカライズ: 各地域の文化やファン層に合わせてイベント内容を最適化することで、世界中のファンの心を掴んでいる。
      • データに基づく意思決定: ファンの行動データを収集・分析し、勘や経験則だけでなく、客観的な事実に基づいた戦略を立てている。
      • 熱狂のエコシステム: 従業員自身の熱意を原動力に、ファンが新たなファンを生み出す好循環を創り出すことを究極の目標としている。

      バンダイナムコの国際イベントは、単なるお祭り騒ぎではありません。それは、IPを愛する世界中のファンと深く、広く、そして末永く繋がるために、緻密に設計された壮大なコミュニケーション戦略の結晶なのです。

      次にあなたがエンターテインメントのニュースに触れる時、その華やかな舞台の裏で働く人々の情熱や、隠された戦略に思いを馳せてみてください。きっと、今までとは違った景色が見えてきて、エンタメの世界がもっと面白く、もっと好きになるはずです。

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